暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

アイ

2008-10-30 | 暗い
ひとりぼっちになりたくないなら
なぜ嫌いなひとをつくるのですか
なぜじぶんを偽るなんて
うそをついてまでだまそうとするのですか

結局はひとりぼっちになりたくないだけで
それも幼い子のわがままと同じ
自分のほんとうをいつわると思い込んで
嫌いなひとをつくり標的にし
醜い部分が目立たないようにしているのでしょう

拡妄

2008-10-28 | -2008
あなたはわたしの
手をとって
そのままちぎって
投げ捨てる

わたしはあなたの
指をくわえ
そのままくだいて
排泄した

わたしはひとつ
あなたとひとつ
あなたとつながる
だれかとひとつ
ひとをつくった
つちともひとつ
わたしはせかい
わたしはすべて

あなたの細胞は拒絶され
死骸は茶色の塊となり
わたしから遊離するけれど
あなたの含有した元素は
わたしの細胞を育み
そしてまた排泄され
表皮や血流ごと
あなたがちぎって
土に吸われる

わたしはあなた
あなたはせかい
わたしはせかい
すべてはあなた

わたしたちはすべての細胞
元素を交換し
道をながれ
なんどもなんども
入れ替わる
わたしはすべて
ならばあなたとわたし
差違のないひとつの細胞ね
あなたの指は茶色く濁り
わたしの腕も茶色く腐り
みんな死の色にくだけては
元素だけが遊離してまた
細胞と細胞を行き来する
大から小へ フラクタル
同一平面上の平行宇宙
ただなんてことのない日常ですら
パターン化された配列のひとつ
わたしは一点
あなたと一線
みんなで一面
けれど進数しだいですべて1

あなたはわたし
わたしはあなた
あなたはせかい
わたしはミクロ

可能不可能も当然のことだ

2008-10-13 | -2008
すべてを平等と無理やりにみなす人間の眼球は
どのような叡智も技術も平行線を刻んだようにうつる
信号により印刷された線でできた面は
ただいくつもの軸をさまよう
一個と一個に差異はなく
どれも大まかな分類にわけられる
こまかな指摘を良しとせず
また見つけるための視線をもたず
固定されない軸は固定されることを知らない
知っていたところで経験と知識は雲泥の差がある
人間はその差もまた差異はなく
人間は人間以外の何物でもないと済ませる
超然的な怠惰は人を救わない
だがシニカルな眼球もよしとしない
つまりは何もうつさない
つまりはすべてをうつしだす
享受するのは当然とするなら
分岐点はいくつも伸びてまた分かれ
それらすべてを仮運転し体験する
眼球はひとりですべてを旅し
そしてちいさなちいさな脳に記憶したことを人間に話す
おぼろげな体験は風化し信号へと変わり
計算機がきちきちと論理を始める
合点がいこうがいくまいが
計算機とは絶対なのだから
人間は答案 回答にしたがい
あらたな軸をつくり回答を飾り付ける
大仰な過程を経てもなお最終的に
出来上がるのは同一の直線ばかり
なぜならば絶対のしゃべくる答えはいつも
なにもかもすべておなじである
ためだ
軸ばかりが刻まれていき
肝心の要素すら見出すことはない
印刷機よりも出来の悪い
それは人間の一種であるが
どれも何もかも同じである

脳には同一の複数住人が住んでおり
同じと感じるかたわらでは
まったく違うと考える
すくなくとも同種はよく見えるもので
眼球も少し慣れてきたらしい
計算機を扱う手順は
それぞれ少し異なっている
線に線が刻まれる
本質的には差異がない

健やかなる休日

2008-10-13 | あたたかい
土曜日の朝に
起き出した彼女は憂鬱だと呟いた。
唐突な科白に私がなぜだと尋ねると、
休みの始まりは、終わりの決定だからよ
そう言いながらまたベッドに沈んだ。
後ろ姿の彼女はほどなくして、
安らかな寝息をたてた。

太陽が土を焼き上げる頃、
彼女は私を買い物へ連れ出した。
休日などなくなればいいのに
数歩先を歩く長い黒髪が嘆息した。
こうやって買い物をするのは休日くらいのものだろう、と私が宥め、
彼女の夕闇を宿す髪をもてあそんでいると、
急に私の手を掴み手近な店へ導いた。

月も登らぬ闇が訪れ、
彼女はまたも憂鬱だと呟いた。
休みなければ休息を乞い、
休みがあれば無休を望む、
人はなんて身勝手なのかしら
私は彼女に一杯のスープを作ってやり、
最後の休日を優雅な憂鬱に彩るため、
彼女の濡れた髪にタオルをあて
優しくおやすみを囁いた。

無言

2008-10-06 | 錯乱
まず最初に、連絡先を確認するとまず彼の名前が飛び込んでくる。
毎回のことで気にも留めていなかったものが、最近はひどく目障りになってきた。
たったの四文字、名前がある、それだけで
わらわれているような気さえするのだ。



目の洞はふかく、
無言でたたずんでおり眼球は知れない。
痴れ者のように血をしぼる馬鹿をわらう口元、
たしかにわたしをながめている。

黙れ、黙れ、愛する者は、
黙って肴になりさえすれば
良いというのに。
わたしのせりふは聞き飽きた、
今度はお前を演じよう。
無言の名前が非難すると感ずるほどに
わたしは暗さをいだいているのか。
ああ許しは
いらないのだよ。

振動

2008-10-04 | -2008
グラインド。

ぼくの目の前をいま、飛行機が
通り過ぎていった。
音が少しずつ下がりながら遠ざかると、しばらくして
つよい風が地面とぼくを押さえつけた。

ぼくは人にはなれないのだ、
あの飛行機をあやつるもの、
ぼくは決して人になることはできない、
なぜならぼくの細胞が
そうわめきたてているからだ。

ぼくは成長につれそれが偽りであると知った、
誰もが人たる責任を少しずつ荷解きしていった、つまりは
ぼくは社会的には人である。

振動は初期微動から始まり、
本震ののち余震を残しおさまる、
余震は幾度も、幾度も
ぼくというなにかを揺らす。

飛行機は飛んでいる。

ぼくに石を投げる権利はない、しかし
時折どうしても憎らしいほどうらやましくなる。
ぼくは振動を続け風になぎ払われ
人に飛行機から荷物を落とされる。
彼らは人なのになぜ幸せな顔で
笑うこともなくぼくを見るのか。
ぼくは決して人になれないという幻想は
決してゆめまぼろしではなかった。
ぼくはただ生きていて答えを探している、
ぼくはまだ答えを知らない。

そら、また振動がやってくる。
何度目かの風を受けながら、いつもぼくは
飛行機を眺めている。

2008-10-03 | 狂おしい
わたしによくにたおかしらが
ゆっくりおくまでつらぬくの
なきさけぶのもけいさんずく
おしりをたたかせよろこばす

私によく似たお頭が、
ゆっくり奥まで貫くの、
泣き叫ぶのも計算ずく、
お尻を叩かせ悦ばす

消えない
汚い
許さない
ほんとは思っていないこと
もっとちょうだいと繰り返したなら
卑しい歯を見せつけ笑う
お前はなんて、なんて

可哀想な子どもたちは
みんな私によく似たお頭を持っている
私が抱きしめてあげるから
貫くことで確かめなさい
可哀想に、可哀想に、
私だけは泣き叫んであげるから

ひとりじゃないよ

2008-10-02 | -2008
世界には何憶というひとが
きみのことを知らないまま生活している
わたしだってきみのことを知らないし
きみもまたわたしのことを知らない

だからきみは簡単に自殺ができて
わたしも何の躊躇もなくひとを殺すことができる
それでもきみは死なずに今日まで生きており
わたしもまた何の罪を問われることもなく
のうのうと暮らしている

だから世界は何の支障もなく
まわりつづけることができるんだ
誰に何が起きようと
それらは誰にも影響されることがないのだから
きみが死のうとわたしは悲しまない
わたしが誰を殺そうときみは死なない
わたしは生きていてわたしの世界を謳歌し
きみもまたわたしとは異なる世界のなかで
なんとなく同一次元のうえをあるいているだけだ

だからきみは存分に死んだふりをするといい
わたしもひとを殺す遊びをしているから
目を閉じるまでは誰もが起きているとは考えないことだ
なぜなら知覚できているのは自分以外にいないのだから
同じ次元に存在していることは
同じ世界に生息していることと同義ではない
すべてのものにつながっているという糸は物体でも実体でもない
すくなくとも私の世界では
たとえ肉親が肉の塊になったところで糸はそのままだ
切れもしなければつながりもしない
あってもなくても変わらない
すくなくとも私の世界では

だから好きに死に好きに生きるといい
わたしは自分の生死にしか興味がない
あしたの死体を踏みつぶして歩くだけだ
なぜならここはわたしの世界だから

わたしはひとつの消しゴムにすぎない

2008-10-01 | 心から
何度も何度も同じところを刺されて
少しずつ擦り減っていくのがわかる
傷痕はぶくぶくと醜く膨らんでいくのに
みずからをかたちづくるものは削れていく
何度も限界だと思ったところで
ひとといういのちはとても頑丈にできている
(これくらいで死ぬのなら何が生きられるというのだろう)
けれどゆりかごのようにやってくる波しぶきは
いつまでたっても皮膚にべったりといやなものを残す

嘘をつくのがうまいねと
自分にそうささやかれた時から
嘘をつく時うろたえるようになった
嘘をつくのが下手だ
だってすぐに顔に出るからと言われて
そうかな、と照れ笑いをこぼす
嘘をつくのがやっぱりうまいんだ
耳元でささやく声は幻聴ですらない

手をつなぐひとなど必要がない
なぜならきっと摩擦熱で
そうかもしれなかった不特定のあなたもまた削れていくかも
しれないからだ
自己満足の自己憐憫にひたっていると笑うがいい
そう笑うのであればこの手をとろうなどとは考えないだろう
ぬくもりのこもった手をどうか差し伸べないようにと
願うことはせずただただ馬鹿なロバの踊りに興ずる
このからだは真っ裸のまま晒され劣化していく消しゴムにすぎない
そして不特定で未知のあなたたちは
プラスチック製の定規のようなものだ
みずからを溶かしてまで相手に取り込もうとする
それを止めるのは自分以外に何がいるだろう
それを止められないと自覚しているのであれば
最大限に予防線を張るしかない

まったく異常のふりなど想像を超えるほど疲れていく
ただでさえ疲労してもうだんだんと分母が減っているというのに
それでもまっとうに生きるために自分から分母を削っていくしかない
誰かに頼り相手のたましいを吸い取って生きるくらいならば
その数秒から数年までを殺すほうがまだましだ