暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

呪う詛

2008-05-31 | つめたい
私は私からの怨嗟を受け取り
ぬくもりのない鎌を持つ
誰かを仕留めようとしているのではない
単に己が愚かなだけだ

足りなくなれば他人にすがる
どうしようもない痴れ者が
売女ならば鎌でも刺せ
自分のぬくもりに安堵しろ
自慰その程度がお似合いだ

確定されたものを求めているわけではないのだろう
欲しているのは誰かにすぎず
甘えを持て余して自滅するだけ
死ぬのも怖ければ弱さもおそれ
同時に人をバカだとでも思っているのか

だが人はバカではない
いつかを知る前に思い知れ
凶器は自分で用意した
他人の狂気それそのもの
わかっていると嘘をつき
結局自慰にふけるのだろう
殺されることを望んでいるのか
自分で死ねやしないから

否定をしてつらもはがさず
ただ狂って泣けばいい
売女にやる愛などないのだ
わかっていて享受するのか
居心地のいいぬるま湯地獄を
抜け出せずにいるのだろう

口先だけはさんざんに聞き飽きた
鎌の先は錆びるばかりだ
厄介にも口が上手いのは自分自身
さあその鎌はどこからの借り物で
今まさに持っているのは誰なのか
教えてもらおう その後に
どこをはねるか指してくれ

ぼくはプラスチック

2008-05-30 | -2008
火気厳禁
溶けちゃう・よ!
うぃーうぃうぃーん
工場直通
ぼくの直腸
プラスチック ぼく
プラスチック
量産できるよ
望みのままに
ダイソーにおいで
ぼくはいる
ワンコイン? ツーコイン
うぃうぃーうぃーうぃん
量産量産
シリアルコード ぼく
一番!

ぼくの夢が熔けていく
マネキンじみたぼくたちの群れ
燃えろ、燃えろ、熔けていく
だってぼくはプラスチック
個性もなくて同じものたち
ぼくをどうかぼくを見ないで
陳列されたら買いに来て
うぃぃうぃぃぃうぃうぃぃぃぃん
消防車が近付いて
ぼくを生かそうと躍起になる

思い出おしまい!
真っ白工場
売られたプラスチック
ぼくはここだよ
おくすりタンク
ぼくはプラスチック
重症患者
ぼくはプラスチック
毛も焼け潰れた
ぼくはプラスチック
燃えずに熔けた
ぼくはプラスチック
ぼく、ケロイド、ぼく
ぼくはプラスチック
飛び込み台は?
ぼくはプラスチック
うぃうぃーうぃーうぃーん
ぼくはプラスチック
もう聞こえないよ
ぼくはプラスチックになった

自虐性マゾヒズム

2008-05-28 | -2008
誰か私を罵って
思い付くだけ罵って
良心もなく罵って
心なくても罵って
殺せるほどに罵って
まだまだ全然足りないから
思い付くだけの罵詈雑言を
どうか私を罵って
子が泣くほどに罵って
人だと思わず罵って
靴で踏みつつ罵って
蹴り上げながら罵って
ボロ雑巾よりひどい扱い
生ゴミよりもひどくていい
私を死ぬまで罵って
死んでからも罵って

Tear

2008-05-27 | かなしい
体がいうことをきかないわ
このまま深く沈んでいきそう
けれどはまる前にさらりとかわして
ただ疲れていくばかり

足が重くて歩いてられない
ヒールなんて脱ぎ捨てたい
もう何も喋りたくはないのよ
声をあげるようなセックスでさえ

キスをちょうだい
死にたくなるようなキスを
憂鬱な雨に濡れるくらいなら
死にたくなってしまいたいわ
床に転がる酒瓶くらい
無様な時を生きてきたの
けれどやっぱり私は私で
無様でもどうでもよくなんかない

一人の部屋が広くなって
なんだかひどく落ち着かない
ものに埋もれて私もろとも
モノになれた気がしてた

仮面とヒールを脱いだなら
私のことは見えないでしょう?
だから私は脱いだりしない
それが無様な私の生き方
仮面越しのキスをちょうだい
荒れるように鳴いてみせるわ

自由ちゅうちゅう芋虫

2008-05-26 | -2008
別れの挨拶
まだ誰も来ない
脱皮したあとのわたし
まだ殻も乾かない
よわくやわい四肢
まだ羽は生えない

ありもしない空想を
思いえがいて進化した
羽化したわたしの虫かごに
餌はごろごろ転がって
無関心に共食い食われ
それ以外には誰もいない

まだ羽が生えない
乾いた膚をひとつ撫ぜて
誰かの返事が来るまで鳴こう
疎外されてかごの中
阻害したのはこちらの方
孤独 いいえ
餌がいるこんなにも

鳴き声が響く
ああ、うるさいうるさい
あと何度脱皮すれば、
いいえ足りないのはきっと遺伝子
誰かの子を孕ませて
わたしと同じ虫けらを

数度目の脱皮をしたならば
その時羽が生えないならば
その時誰もいないのならば
わたしは増えきった餌にありつかれよう
無駄な進化は淘汰され
わたしの脱け殻が残るだけ
虫かごは案外快適だった
だから別れるには惜しい
どうか別れを告げてほしい
外に捨てれば死ねるから
惜別のことばが理想の返事
怒られるまで鳴き続け
それで駄目ならさようなら
成虫になれないさなぎの子
羽の無い虫になりたかったわけじゃない

ドライバー

2008-05-25 | つめたい
漠然と私は私のことを思う
なぜなら具体的に考えたくはないからだ
容姿、機能、内面性
すべてをとっても特筆すべきはなく
あるいは単にのぞまない
自己顕示欲は一人前で
だからこそ茫漠と考える
肉体にあるべき精神が置き去りにされ
倦怠感がつきまとう

(空腹、頭痛、悪心、
 ひとは ひとりでは いきてゆけない
 感覚が感覚であることが厭わしい
 人がそこにいる当然性
 他人が必要でなければならない感覚
 肌は肌をかんじている)

単語の意味すらすでになくし
存在さえ希薄ならば人間である必要はない
偏っている偏っていない
どっちつかずの議論も飽きた
そろそろ刃は鈍りはじめ
ただ錆びゆくのを待つばかり

名前を呼んで返事をし
それなら他にもあるだろう
漠然としない理由もなく
おそらくやはり具体性をおそれている
成長したいとおもうかたわら
成長できないと貶める、
それでさえも凡例にすぎない
そう、私は私のことを思う
不本意ながら大多数の本意として
くだらないことを率先する
疲労は人間を阻害するなら
(害悪、メリット、それはどこだ
 ひとは ひとりでは いきてゆけない)
漠然と消える、人間では
ないのだから

それは不特定多数

2008-05-24 | -2008
泣きたいと駄々をこねる子供はすでに泣いている
無音の悲鳴が脳のなかをかけずりめぐり
神経は悲鳴をあげている
爆ぜた腕は皮膚もめくれ
かわりに金属の筋肉がのぞくだけ
まるで加工された後の無残な山のようだと
泣きたくても泣けない子供はやはり泣いている
ひとりで生きていくことができないから
せいぜい擁護してもらう
心臓まで加工されることにおびえながら
唇の皮まで裂けようというほど口は慟哭をかたちづくる

靴の葬式

2008-05-21 | -2008
使い古した革靴を
近所の河川敷へ放り投げた
絶対に入るはずのない水の中へ
それは弔いのようなもの
もう使わない使えない決別の証
靴は沈み最後の息を吐き出す
それからはただ染みていく
足になじむ彼はいない
さんざん連れ回した彼女は去り
喪服に裸足を着込んで家まで帰る
彼、彼女の生きた土の上は
今日も熱くて固かった

生、明、没

2008-05-20 | 錯乱
声がこだまする
だれかいませんか
霧中に立ち消え骨が残る
すべてを知る前に彼は死ぬ

混在した意識に眼球は裏返りながら
事実 自我は融解され
一定の電子音を彼岸のどこかから聞くばかり
だれかいませんか
だれもいないのですか
幽体ともつかない曖昧な境界線の上でもごもごと呟く

隣とは三次元の有効語だが
隣にいる誰かというには偽だ
物体があるという事実
自我の存在の可否により
消える、具体性のかたまり、
そこにあるものは変化する
世界に存在するものたち

確認することのできない
自意識という電気信号の応答を待ちながら
だれもいないのですか
だれがいるのですか
問いかける
向こう側ではずっと
脈拍を確認し電子音が響く

ばいた

2008-05-19 | つめたい
本当は必要ともしていないような
きみがぼくの何になる?
何にもならないような世迷言を

きみは、平気で嘘をつき
それに、真実らしく泣く

聞き飽きた言い訳の数々を
ぼくはせいぜい燃やしていこう