暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

言霊

2009-02-27 | 錯乱
存在するはずのない肉塊のまぼろしに
ぼくはいっさいの夢をゆだねよう
病巣がぼくではない本体の筋肉を食む
痛みの声は決してぼくには響かない
届くことがあったとしても

知覚されて生きながらえる
知覚するだけの生存を確認する?
決して収束もしないが拡散もしない
永遠に平行をたもった捻れの直線上で
次元のちがうことをおもうのは
ぼく以外に無い
他人を想ったところで結局は
この知覚体を憂える以外に道があるはずもなく

痛みの声をおぼえながら
選択肢もなく
(あるいはそう知覚するのみで)
ぼくは肉に入り込みながらその他人の肉をおもう
病巣と名付けられたぼく自身を取り除くために
あれはどれほどの痛みに耐えているのだろう
知覚しかないからだはそれ以外を知らず
ただ夢をえがいてぼくとぼくの肉を慰めている
世界などは閉鎖のグラフ内だけで十分だ

2009-02-23 | 狂おしい
内臓が
ちぎれるくらいに
抱き締めて
ください。

空気孔の無い
ふた
少しずつ上がる熱に
なかの
堆積は増えるのです。

包容が愛だというのなら、
このやわらかな骨を砕き割り、
有機物の塊へと変えてください、
泥と毒を生み出すことが、
熱とともにあふれるなんらかが、
わたしをたもったままわたしの、
組成を置換させていく、

あふれる、

包容が愛だと
いうのなら
わたしのからだを
抱き締めて
肺のつぶれる音を
聞かせてください。

内罰は、
何にもなりやしない、
あふれる、
くろずんだ、
肉、
欲、

暗い日

2009-02-20 | -2009
叱責を受け
あたまのなかで反響する言い訳の山
反論を食らうまえに
こちらが食らえばいいと願う

ゆがんだ顔は椰子に似て
なぜだかひどくおかしく思う
わたしはゆるく笑う椰子
あなたはへの字に怒る椰子

ことばの槍は面を割らない
だからとても心地が悪い
椰子の木からは何色の
樹液が幹を伝い流れる?

食らうつもりの言い訳を並べ
その実怒りの歯はわたしの木の実に突き立てられ
流れない痛みのかわりに黄色赤黒の汁が迸る
空の殻はゆがんで笑う

しにゆくもの

2009-02-19 | -2009

お腹の中に詰まった綿から
痛みはゆうるり広がっていて
呼吸もできない繭糸の中では
鼻水だって出せやしない
蛹になって今日が百月
(いちもなくにもなくれいとして)
見守る見守る見守る見守る、
頭にあふれることばたちは
みいんな繭にして出して
破れることのない厚い壁は
時間界を切断していく
聞こえないならば聞く耳はいらず
見えないのならば見る目もいらない
癒着した肉の塊はただ
ぢるぢると鼓動を滴らせ変化を続ける
成虫になるまで
うつくしい羽をひろげる姿を水面に映すまで
みずからを見守る見守る、
(きょうかいのちからはれいをいちにするから)
盲いた眼をうわむかせ
頭の中に詰まった子宮を揺らし
羽化の日を数えることなく待っている
(まゆいとのあつさはじかんのまくをはずれそんざいをれいにかえる)

Dont be Afraid

2009-02-09 | あたたかい
燃え逝く草を踏み荒らす
ならばものはものである
命があるとはものに非ず
鼓動が止まれば肉になる
土と屍肉の違いと言えば
Cを含むかそうでないか
燃え食い他者の糧となる
燃え逝く草を踏み荒らし
命なき屍をくだいて往け
魂の価値など空気と同義
土とお前は何も変わらず
ただ累積し風化するもの

2009-02-08 | 錯乱
だれかがだれかを殺すとき
ぼくはさようならのあいさつを
忘れずに言う

(喉をすりおろしたかのような声が聞こえる)?

土に生えた雑草
ぼくはゆらゆら揺れている
燃えることのない細胞がしみていく
ぼくはゆらゆら揺れている
積み上がる、積み上がる、積み上げる
主動的なものなど無いにひとしいと
わめいているひとびと
ぼくはゆらゆら揺れている

(別れを言わなければあなたは別れることができない).

生きとし生けるすべてのものたち
ぼくはゆらゆら揺れながら
それらの殺戮を眺めている
ぼくの口はいつだって乾いている
喋ることのできないまま喋り続ける
ぼくはさようならを言う
ゆらゆら揺れて
積み上がる死の山から
別れることなどできたためしはない

生き物

2009-02-05 | あたたかい
両腕を広げる
背中に手を回す
腕に力を込める
あなたの鼓動を聞く

歩幅を合わせてみる
後ろ頭を見つめる
小走りで追いかける
わたしの距離を知る

他愛なく笑う
こころとあたまを分ける
暖かみを確認する
あなたの肉体に触る

生産は無いと知っている
指を指に絡める
ものとものの距離を否認する
融合の儀式を望む