暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

末期の水

2007-03-27 | 暗い
私の母は優しいひとでした
暑いと言えば手で笠をつくり
寒いと言えば服を脱いで着せ
優しく諭し 夜には
祈りのことばを歌うように教えてくれる
愛した母はたった一人
私の大切な人でした

母であるともなくとも
優しいあのひとは母でした
母でなければならなかったのです

飢えた時には自分の糧を分け与え
そうして自らを削りとり
私や兄弟にあらゆるものを捧げた母
与えるものが己しかないとは
なんと悔しく憐れなことでしょう

いくら要らない、と遠ざけても
最後には掴まざるを得ない私も子供だったのかもしれませんが

熱と渇きに苦しんだ時には
母はちっぽけな手のひらにひとすくいの水を携え、
「どうか、この末期の水で
喉の渇きを潤しなさい。」
私の断る術を消して
そうして干されていったのです

どのようにすれば
あなたのように自らを糧とし
健気に笑っていられるのですか
母の水を受けても私には
何もひとつもわからないのです


楽しいあまり

2007-03-26 | 
どこかへ飛んで
両親の姿もなく
友達と滑走する
ただ笑いながら

夢見事と理解し
それでも抗わず
見慣れたはずの
皆を思い出した

身を横たえつつ
こうして夢を見
動かない私を見
目を覚ませば忘れているとわかっていても
なお
忘れないでなどと身勝手にのたまう
忘れなければいいのに

成長の兆し

2007-03-24 | 錯乱
たった一つのことがらを
まるで夢の中のように
固執するわたし

わかっている
今はどうにもならないのだから
夢から覚めなければ何にもならないと
「わかっている。」
わかっている
「だから何?」

時間は進む
並列し交錯し
歪んだベクトルを直線に直し
評価されゆくわたしのリバティ

(不合格.)

もうこの骨も体も
成長などしないのに
新皮質は鼓動を刻む
そんなことをして何の意味があるのか
問うことにすら意味はない

固執するべきことがらは
緩やかに急転直下
忘れられ、新たな点が刻まれる
夢の中のように

卑屈の極み

2007-03-23 | つめたい
在り方を考えた

大層なこと言っても
どーせ女でただのガキ
わざとらしく飾ったら
本音が見えなくなる

って?

別に本音を書きたいわけじゃないし
それが詩になるかは疑問だ
(like this.)
隠すのがお嫌だってんなら

本音:
トイレ行きたい。

紳士と愉快に不健康

2007-03-23 | 狂おしい

こんばんは、不健康な子女諸君!
私の名前は紳士、どうぞ紳士と呼んでくれたまえ。

さて、唐突だが、
この世には不条理が多いと思いはしないかね?
それはそうだろう、不健康な諸君であれば
誰しもが抱く疑問なのだからね。全く
ひがんでいるにもほどがある
いやはや、全く、身勝手な人間の多いことと言ったら!
人は空を飛びたいと言うが、これこそ不条理の象徴だと言えば
諸君は胸に手を当ててドキリとするのではないだろうか?
事実人が自力で空を飛ぶなどということは有り得ない。

要するにそれを無いものねだりだと一般に言われているね。
無いものはねだる。それならば私は問おう、
もしもそれを得ることができたならば、諸君はどうする?
満足するだろう。そしてどうする?

人が得られるものは人によって違う。
渇望していたものが或いは手に入り、或いは手に入らない。
手に入らなかった者は無いものをねだればいいのだが、
手に入った者は二度と無くしてしまわぬよう必死に守ろうとするだろう。
それどころか有るという状態に辟易した者は、欲しがっていたはずのものを
まったくあたまがおかしいとしかおもえないがね
無い状態にすることを望む、つまり新たな無いものねだりをすることもある!
当然のようで全く不条理な、
そう、
万物は限られているがゆえに、均等でない不条理な社会ができていくのだよ。

悪いとは言わないさ、なにしろ私ですら無いものをねだる人間なのだからね。
社会主義あるいは共産主義をすすめるわけでもない。
たかが紳士の戯言だと思いたまえ、或いは
くだらないおまえたちの
幻聴だと思ってくれても構わないのだよ!

要するにだね。
もしも諸君が自分の不健康さに辟易しているのなら、
無いものを望み続ければいいだけの話なのだよ。
手に入れ、満足せず、手に入れ続ければいいのだよ。

おや?
そこにいるのはウサギさんかね?
ウサギさんはいいだろう、なにしろ諸君と違ってウサギなのだからね。
無いものをねだろう、さあ、
グシャリと!



シグナル

2007-03-23 | 錯乱
なんだかとても
優れないわ
気分が
(機嫌が?)
駄々をこねて
当たり散らしてしまいたいの

それとも一切を
諦めたいのかもしれない
完成への道程は楽しいけれど
完成していくことが怖いから
そう 幼いのよ

朝に目覚めるのって
なんだか落ち着かないの
日光がまるで
灰燼のようだから

わかっているの
だから少し休んで
幸いなことに
誰もいない

死化粧

2007-03-21 | かなしい
あんなに長くて綺麗な髪を
貴女はどうして切り落としてしまったのだろう
西日を受けて輝く黒い艶を
捨ててまで何を求めているのか
私には教えてくれない、
まま

あまりに無造作に鋏を入れていたね
美容室は苦手だと言って
それなら私が切っても良かった
きっと貴女一人で切るよりは
少しはましになっていた

出来るなら、その髪を
少し持って帰りたかったのに

貴女の線は
そんなに細かったのか、
ざっくばらんに襟足を散らばる
黒い線がまるで輪郭のようで

きっと苦しんでしまったんだね
けれど貴女は安らかな面をしているから
救われなくても救いになる
きっとあの長い髪は
貴女が一人で切ったんだろう?

西日に手をかざして
何となく貴女が見えた

私に貴女の存在証明を
誰か、
ください


弾ける

2007-03-20 | 狂おしい
貴方の見せた爆弾が
私の目の前で火を吹いた
鼻血を吹き出した私よりも
貴方は体を吹き上げ

遠くへ、

冷たいベッドの中で流す涙は
どうしてかひどく温かい
優しくも冷たいみんなの言葉が
理解できないままに

遠くとは、

死んだ魚が
跳ねる はぜた
火の粉に触れて膨れる首筋
包帯の裏側に張り付いて
私を生かす血を憎む

遠くても、

火薬の臭いがして
振り返れば貴方が笑っていた
ありがとう
ありがとう 神様
私の中の爆弾が
静かに火種を食い潰す

遠くない、

火遊びはいけないと
誰かに教わらなかったの?

私を、

からめとり

2007-03-20 | つめたい
こうしている間に
撒いた種が成長していく

行きたくない
そこへ辿り着いて
道があることを思い知る

自由から逃げ出すのは
自由を手にしているから

五体満足でいても
何かが足りないと彷徨う
わたしの心は
きっとわたしにしかないけれど
種の成長を喜ぶには
まだ 早い

芽吹いた双葉を
切り取ってしまいたい
わたしを追い越さないよう
乾いた綿に飾りたい

けれど、ああ、
どうして水もないのに、
あなたは、
蔓をのばすの

双頭夢想

2007-03-18 | -2007:わりとマシなもの
額と額を重ねて
ぼくらは夢を見る
見つめ合う
ささやいて笑って
ぼくらの夢を見つめ合う

髪の毛から足の爪まで
ぼくとぼくは同じ
それなら心だって同じ
どうして一人じゃなくて
二人にならないといけなかったのかな

それはきっと
ぼくにはぼくが要ったから

ぼくとぼくは同じ存在
なら一つでかまわない
ぼくはぼくと同じ存在
なら二つでかまわない
だって同じ人間だもの

二人だけはずっと
わかりあったままでいようね
離れても。
離れても、
ぼくらは夢を共有する
一人の夜には鏡に額をあてて
ぼくらはお互いを更新する
ぼくらはお互いに交信する
二つにならないよう
二つであり続けるよう
一つになり続けるように