末期の水
2007-03-27 | 暗い
私の母は優しいひとでした
暑いと言えば手で笠をつくり
寒いと言えば服を脱いで着せ
優しく諭し 夜には
祈りのことばを歌うように教えてくれる
愛した母はたった一人
私の大切な人でした
母であるともなくとも
優しいあのひとは母でした
母でなければならなかったのです
飢えた時には自分の糧を分け与え
そうして自らを削りとり
私や兄弟にあらゆるものを捧げた母
与えるものが己しかないとは
なんと悔しく憐れなことでしょう
いくら要らない、と遠ざけても
最後には掴まざるを得ない私も子供だったのかもしれませんが
熱と渇きに苦しんだ時には
母はちっぽけな手のひらにひとすくいの水を携え、
「どうか、この末期の水で
喉の渇きを潤しなさい。」
私の断る術を消して
そうして干されていったのです
どのようにすれば
あなたのように自らを糧とし
健気に笑っていられるのですか
母の水を受けても私には
何もひとつもわからないのです
暑いと言えば手で笠をつくり
寒いと言えば服を脱いで着せ
優しく諭し 夜には
祈りのことばを歌うように教えてくれる
愛した母はたった一人
私の大切な人でした
母であるともなくとも
優しいあのひとは母でした
母でなければならなかったのです
飢えた時には自分の糧を分け与え
そうして自らを削りとり
私や兄弟にあらゆるものを捧げた母
与えるものが己しかないとは
なんと悔しく憐れなことでしょう
いくら要らない、と遠ざけても
最後には掴まざるを得ない私も子供だったのかもしれませんが
熱と渇きに苦しんだ時には
母はちっぽけな手のひらにひとすくいの水を携え、
「どうか、この末期の水で
喉の渇きを潤しなさい。」
私の断る術を消して
そうして干されていったのです
どのようにすれば
あなたのように自らを糧とし
健気に笑っていられるのですか
母の水を受けても私には
何もひとつもわからないのです