暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

はぐれた抱擁

2012-06-29 | -2012
安寧を与えられる
最後通牒

(誰もわたしを責めてはくれない)

優しい真綿で
絞め殺して

益虫もたやすく
殺すように

(残酷なままなら憎むだけでいられる)

罪のない笑顔
あまりに深い慈愛の懐

ポケットの奥に
死骸が転がっているよ

「あきらめなさい」

見捨てて逃げろというの
その優しい地獄の道へ

脳がかゆくて
おかしくなりそう

むし、むし、ぴょんぴょんわあきゃあぐしゃり

安寧を与えられる
最後通牒

いずれあのつめたいまなざしを
うけながらちぎれじぬならそれでいい

(だけれど真綿はない
虫は死んだ
わたしは死なない
虫は死んだ
あなたがこわい
だから足をもいで
いたずらになぶりながら
血のなまぐささに顔をしかめ
ずたぼろになった屍肉を見下ろし
つめたい唾を吐きかけ
そうして野ざらしにしてしまえばいい)

(わたしもまた益虫を殺した害虫も殺した)

かなしく羽ばたく
虫のおと

わずらわしげな
あなたの唸り

あたたかく腐る
最後通牒

あきらめ

2012-06-14 | 心から
泣いても誰も慰めない
そう思えば存分に泣くことができた
どうしたのどうしたのと降る声に
ごめんなさいと謝り続けて
私は誰かが慰めてくれる現実を呪った

失敗すれば誰もが疎んじる
恐れて飛び降りることのできない姿に
皆同じ道を辿ることはないと
優しい言葉が添えられる
どうして彼らは寛容でいられるのだろう

誉められることに恐れをなして
けれど叱られることを何より恐れ
私は飛び降りもせず、諦めもせず
ただ断崖の先を見下ろしている
未だに声援を遠くに感じながら、

泣いている、存分に泣くことができる
だらだらと惰性で流し続けている
毒はいつまで経っても抜くことができず
ただ一人断崖で、飛び降りた彼らを思い
罪はいつまで経っても消えることはない

彼らは私を慰めて
私を心から励まして
先に行ってしまった、顔を輝かせ
飛び降りていってしまった
声はとても遠く、とても幸せそうだ

引き返すこともできるんだよと
無理をしなくてもいいんだよと
勇気を胸に抱いた彼らの言葉が突き刺さる
居場所などない
彼らさえ恐れる私に居場所などあるはずもない

泣いても誰も慰めない
それが実現する日を待っている
何もなく誰もおらず
ただ泣くばかりの停止した日々を
恐れながら待っている
断崖から飛び降りることはできない
引き返すこともできない
私はただ泣いている
すでに停止しかけた緩やかな時
それでも膨れ上がった罪悪感に
何もかも奪われるよりはずっといい
泣き続けるだけで孤独になれるのなら
次第に遠くなっていく声がなくなっていくのなら

枯れ芝の道程

2012-06-05 | つめたい
声がなくなってしまえばいいのにと願い
その通りになって
五感満足を呪い

家族が嫌いと吐き捨て
遠くの地で暮らし
また一緒に暮らせたらと言って

誰も愛せないと嘆き
添う人ができれば
今が幸せとうそぶき

また時がたてば
帰りたい帰りたいと
誰も愛せないと喚き

そんなものね
きっとそんなものなのよ
醜くても仕方のないこと
どこでだって満足なんてできやしない
期待も絶望も無駄なものね