暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

中国毛皮養殖場の裏側

2007-02-28 | -2007:わりとマシなもの
根から
神経を抜くことができるなら
わたしはしあわせに
痙攣していただろうか

惨めな姿を晒しているけれど
わたしは唯一この毛並みが
美しいと誇っていた
手足のない達磨など
誰が美しいと思うものか

誰かあそこでぐるぐる回っている奴を止めてくれ眠れやしないんだ水が足りない食べ物が足りない運動が足りない義務が足りない退屈で退屈で足が痛いほんとうは眠くない場所が足りない毛皮が足りないそうだろうだから檻のはしから消えていく毛皮ってなんだなあ体臭がきついから洗ってくれないか毛並みに隠れているけれど肉もついていないんだ

ぐるぐると回るあいつは
いつの間にかいなくなった

生きてはいけないのだ
あなたは手に鉈を持ちわたしをただの達磨にし
尾から鼻までわたしを真っ白な筋にし
生きようと痙攣するわたしに死ねと言った
生きてはいけないのだ
死なない苦しみを味わう義務を果たすまで
生きてはならない

ああ、こんなところであんたに会えたね
もう死んでいるのか
うらやましい

痛い
けれどまだ死なない
生きたい
けれどまだ死なない









資料:ウェブサイト『中国毛皮養殖場の裏側』(PC専用)
このサイトにあるものを閲覧することにおいて私は一切の責任を負いません。
負えません。

私は生きながら暴行する行為に非を感じるのであり
あえて毛皮をとる行為を否定しません。
よってこの創作は
すべての毛皮養殖場を非難するものではなく
すべての人間にケチをつけているものです。

この場を借りて、当ブログを閲覧してくださる皆様に
多大な感謝を申し上げます。
ありがとうございます。


明滅

2007-02-28 | 錯乱
浮いて
沈んで
浮いて
沈んで
血の臭いで目が覚める
知らない声に起こされる
心の中にわたしを隠す
わたしはとりあえず笑っている
浮いて
沈んで
浮いて
約束を守る決意をする
前を見ながら道をいく
悩み黙って問題を解く
わたしはえらんで笑っている
沈んで
浮いて
沈んで
沈んで
浮いて
あなたがすきよ
ずっとずっと
わたしがあなたを
しらなくても
だってあなたは
いきものだから
沈んで
血の臭いで目が覚める
静脈血には尿素が含まれていることを知る
死んだ顔をしている
未来がないことに気付く
上ばかり向いて歩く
笑顔のパターンが限界に近付く
杞憂だと知っている
沈んで
沈んで
沈んで
沈んで
沈んで
沈んで
沈んで
沈んで
死んで。

密室とパン

2007-02-28 | 
御遣いの残された言葉たちを
静かに読み耽っていた彼女は、
ふと
家の隅が気になった。

同居人は聞く、
どこへ行くのかと
少しね。
彼女は聖書を伏せて置き
扉を開け部屋を出た。

膝を折って入るような
小さな浴槽に目を向けて
気付く、
十字架の前に置いてある一つのパンは
見慣れないものだった。
その隣にある、
首もまた 見慣れない。

何気なく彼女を探した男は
後ろの見慣れない男に気付かない。
彼女が視認し叫ぶと
ふたりの男は組み合った。
早く早く早く早く早く早く逃げろ早く
逃げろと男は唱える、
うさぎのように震える彼女は
彼 の背中を見ながら
黙っていた。
やがてその背中に刺が生え
蜜のかわりに血が滲む、
刺は彼の背中に消え、
頬に受けるのは生暖かい
血液だった。

暴れる雌の手足を縛り
見慣れぬ男は風呂場へ下る、
ぬめる手で獣を抱き上げ
小さな小さな浴槽に落とした。
膝を折り浴槽の中身となった女は、
引きつる喉を震わせ
聖書のことばを口にする。

神の許しを請う者にパンを与えなさい
そのパンは主があなたに遣わした唯一の糧だと言いなさい
罪人ならば密室で
パンに手をつけるだろう

繰り返し繰り返し、
彼女は呟き続けた。
そんなに密室がお好きなら、いいぜ と
男はパンを取り彼女の腹に乗せ、
手を彼女の額に乗せ、
蛇口を捻る。
水の音、
空気のもれる音、
肺の密室にかわる音。








(注:聖書にこのような言葉はありません)

嫌日常

2007-02-27 | 明るい
私はいつか
懐かしい私を振り返るようになるのだろうか
あの頃は若かったねと
そうして日々に愛しさを感じ
落ち着きを見せて
静かに笑い
部屋にいるよりは散歩することを選び
花を育て
死者に涙を流し
生きている間を少しでも
人間として振る舞っていくのだろうか

息子に娘に
精一杯の愛情を注いだと
胸を張って言うのだろうか

この不安定な主張も
揺れる主軸も
いつしか地面に突き刺さるのだろうか

少なくとも、今はそうでない
だからこそ
そんな日が来るぐらいなら死んでやる


めまい

2007-02-26 | -2007:わりとマシなもの
これはなんという

ぶったいですか

みみのそばで

繰り返される疑問

おねがい

言う事をきいて



これはね、感情の

ごみくずだよ。

汚く干からびたくずだよ。

乾いた爪だってこんなに醜くないだろう。

そうしてその場に
とどまるだけかい?


ねえ

頭が痛いの

戦地の拷問

2007-02-26 | 

弓に長けた彼らは、
幾度となく矢を放つ
馬に乗るわたしたちに薙払われても
怯むことなく首を狙う

おびえていたのは
わたしの方なのだ

「弓を操る、この者たちの
両腕を伐れ」
歩兵となったわたしは
生き残った彼らをめぐる
女の子どもは何も言わず、
腕を差し出した

外周に、ただ
沿うだけの刃は皮も切れない

彼らは口々に問う
「これしきの傷で矢を放つことなど容易い」と
わたしはただ笑うしかない
傷からは血さえ流れず
白い皮と滲むだけの赤を
何度もみおくる

あんたは優しい子だね
そうも言われた
ある老人の腕を切るとき
老人は悲しそうに笑い、
「あんたしきの作る傷じゃあ
この腕には目立ちもせん」
見れば老人の腕は
絶え間ない化膿に埋もれ
斑な黒と赤の色
仕事ですから、と言い
わたしも笑った

人を幾人さえも伐れぬまま
刀は脂がこびりつき
わたしは膝からくずおれる

ああ、いっそ
この身を伐ってしまいたいのだ

針をなくして

2007-02-26 | 
透明な糸を通した針を持ち
薄い翅を拡げ滑空する
追い掛ける蝶たちは愚鈍に羽ばたく
大丈夫だね、大丈夫だよと
二匹は囁きあうのだ

しかし、いつしか踏み込んでは
ならない領域へ
棘の生えた巨大な菜の花が
蜻蛉を減速させ翅を止める
見えない根に取り込まれ
花畑が下から競り上がり
身動きもとれず
菜の花と花畑に呑まれる

次に見たのは、
崩れた家屋の中
小さな針は淡く光っている
脚で立ち素足で腐った板を歩く

アンモニアの強いそこで
下着をしたまま用を足し
誰ともない薄汚い住人に
下卑た笑い声をあげられる

迷ったの か
壁をひっくり返し進む
蜻蛉はひたひたと、歩き
翅のないことに気付いた

対立

2007-02-26 | -2007:わりとマシなもの
科学と宗教に培われた
見かけは中立を保ち
その実ぐらぐらと揺れている
私の倫理を芯にした
更に連なる縦軸は
自我と理性と社会性
矛盾が矛盾を埋めていき
(時間には始まりがあって
神さまが世界を作られた
複数の神は口々に異なる
救済への手段を説いて下さり、
アトミックとは天の賜であるが、
科学は宗教から生まれたのだ。)
双方からのそしり合いに
私は耳すら塞げないのだ
ヒトは科学を信じ同時に
神に祈ることもあるが
この土台の上でどうやって
科学の経を唱え宗教の法則に祈るのか
私の信ずる科学は宗教に潰され
私の信ずる宗教は科学に笑われ
そうして全てが消えてしまい
培われたらしい縦軸は
何を糧に立っているのか
押せば倒れるか消えるか
常識性をもっても私にはわからない


季節外れの

2007-02-24 | 暗い
この川は昔、
人がようけ死んだらしいんよ
ぷかぷか腹を浮かべて
そこここのへりに引っ掛かったんと
夏場じゃってそりゃあ臭うて臭うていけんかった
仏ははあ数えきれんほど沈んで
今も川の中におるんて

じゃけ言うてな
私にはその恐ろしさは
えっともわかりゃせんのんよ
なにしろ私は17歳じゃけ
想像が体験に勝つとは思うておらんし
それで平和都市の子じゃ言われてもな
二世でもないけ言えんのよ

そりゃ死ぬのはいけん
物騒なものは落ちて欲しゅうないが
広島におるんは私の責任じゃない
広島人の責任なんて
私ゃ知らんのじゃ
夏は暑うて暑うていけんから
慰霊祭は行きとうないし
おっさんおばさんの話もつまらんし
足も痛くて何にもならん
先祖が死んでないんじゃけ
心も入らん、ってことは
誰も責めらりゃせんじゃろう

でももう遅いんじゃけどねぇ
晴れた日にゃ真っ先に
ピカドンが頭に浮かんでしまうし
頭ん根っこは左翼的じゃ
平和平和って言うんは
広島だけ大日本帝国と同じ道な気もするけ
逆思想で同じ道
川の写真は怖いんよ