暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

想像射精

2008-07-31 | 錯乱
ふぞろいな
あえぎ声が
布団の向こうで
きこえるのです。

(ただこの空間にいるのは)
(わたしだけではなかったろうか)

くぐもった
悲鳴は
鼓膜を不愉快に
ゆらして
ねばついた体液
の打ち鳴らすおとは
不協和音に
さえ、ならないのです

(あ)
(あ、あ)
(あ)
( あ あぁ、あ)

つめたい子どものかたわれが
なまぬるく放射
されてゆくのを
布団のなかでわたしは
わたしの
からだのなかに
かんじました。

(ひ)
(ひ、ひひ、いや)
(あ あ、ひひひ)
(  ふ う、あ、いや いやだ)

あついなみだは
えぐれた乳房のおくそこで
乳腺を腐敗させて
いくばかりなので
もう泣かないとちかった
涙腺を
やいてしまおうと
考えました。

みんな死んでしまえ
みんな死んでしまえ
みんな死ね
みんな死ね
(いこーるわたしよ傷をなめる自殺願望だなどと)
(ただわたしはわたしが死ねば良い)
(効率)

布団のくらやみのなか
ではほかにだれもおらず
わたしはのちにおかあさんが
妹ができたわよとわたしにおしえて
くれたあの日を思い出します。

(いとしいきみへ)
(きみとは全体の総称)
(きみを歪んであいしている)
(だがあいしてくれなど)
(声が、聞こえました。)

夜明けの子守唄

2008-07-28 | あたたかい
夜ももうすぐ終わるから
おやすみなさい、瞳を閉じて
子守歌でも眠れないなら
キミが安らかな吐息をたてるまで
ずっと一緒にいてあげる

悪いお化けはみんなどこかへ消えてしまったよ
ゆっくり息をしてごらん
見えないものなんてないよね?
ボクが目の前にいるのがわかる?
眠ってごらん、目を閉じて
まぶたの向こうにはちゃんと世界が待っている

ほら、鳥まで目覚めはじめて
また眠い目をこすらせて今日を過ごすのはイヤだろう?
ボクのおやすみのキスをおでこに感じたなら
三つかぞえて眠るんだよ
おやすみ、夢も見ないくらい
深く深くおやすみ

せめてもう少しだけの

2008-07-27 | 心から
冗談みたいに
みんな死ぬ
恐怖をとびこえて
生きるのをやめる

そんな簡単に手放すくらいの命なら
どうかわたしに与えてください
もっと生きたい生きていたい
けれど生きることはできない
ほんとうなら生きてはゆけるのに
生きることはわたしが許さない

お願いだからその命を
捨てるくらいなら売ってほしい
わたしは生きたい 誰よりも
もっと回路が整然ならば
もっと情緒が闊達ならば
もっと未来が明瞭ならば
もっと自分が健常ならば
もっと妄想が健康ならば
老衰で子供たちの税金を吸い取り死にたい
ずっとずっと生きていたい
死ぬのはこわいしぬのは怖い
それでも機会を渡してくれず
宙ぶらりんにわたしは生きて

たぶんもう長くないころ
終わるかもよと
自分に願いをかけないことで
かえって安心になろうとする
羨ましい妬ましい
なんで死にたいと思えるのだろう
その気持ちをわたしに分けて
けれどできるならば
そのかわいい脳神経を
わたしの汚泥と交換させろ

嫌だ

2008-07-25 | 錯乱
たぶんそこにいた
それはだれもいないということ
むねをかしてあげるから
どうぞおなきになりなさい
そんなのいつもきれいごと
きれいごとはとってもきれい
きれいはたぶんかなしいよりはただしい
けれどわたしはなかないよ
かなしいわけではないだから
きっとわたしはなかないよ
わたしはしぬまでいきるから
だからなにもほしくない

曖昧ミーまいん

2008-07-24 | 明るい
誰でもいい
わけはないね
できれば好みの誰か
理想のひとに殺されてもいい
人生は素晴らしい
噛み締めるのが惜しいほどに
生きていくには
どうにも楽しすぎるかな
だから理不尽だと
笑ったっていいけれど
理不尽だと言いたいのは
言いながら死んでいきたいのは
たぶんこっちの方が強い
それでも理想なんて
現れやしないから
テレビ越しの溜め息

つきながら
楽しい人生を
いやがっているんだろうね

命日の手前

2008-07-23 | -2008
日がしずむまでは
ぼくはあかりをつけないよ
真っ暗なときにはたぶん
きみを踏んづけてつぶしただろう
けれどいまじゃあきみの顔が
これっぽっちも思い出せない

黙祷は数秒でかまわない
どうして毎年黙祷をするのと
あなたはぼくにたずねたね
べつに意味なんてない
最初から誰も何もどうにもなっていないよ
だからって偶然の産物でもない

穴があいている
ぼっかりと引力もない穴が
それはぼくの口でもあって
ただ生きる食べる食べる
何一つ変わらないから穴があいている
喪失したのではなく最初から既に

きみのことをみんなは虫と呼んだ
どこもかしこもなまぐさいきみを
ぼくもまた虫と呼んだ
引力のない穴はぼくの思念いがいに
引力をつけることはできない
どうしてもきみの顔が思い出せない

べつになにもなかったんだよ
虫を踏み潰したなんて特別なはずもない
ぼくの黙祷は誰に捧げるのか
わからないけれど数秒だけいのり
その場だけかみさまをしんじることにして
おぼえのないきみが細胞で喉を鳴らすのをかんじる

きみという虫が死んだとき
きみという虫にいのる日は
あなたのことなんて忘れているよ
ぼくは今日だって穴から虫と変わらないものを食べながら
ほんのすこしだけぼくの細胞に思いを馳せる
そうしていつも日がしずむだけ

777336244466

2008-07-20 | 
黒く人が並び並ぶ
欲しい欲しいぼくにちょうだい
何をかわからぬただ何か何かを
人が並び崩れ散らず待つ

「いつもくれるのに、
 今日は遅い。
 こうして待っている、
 人が増えて足は痛い、
 けれど待ち続けたのだから、
 必ずもらえるはず」

へりくつ

2008-07-16 | 心から
ただしいことを言ったつもりだったのに
鼻でわらうきみたちは
たったのひとことで存在をあしらう
「それは屁理屈」
屁みたいな理屈だって理屈には変わりなく
なんだって屁みたいな理屈というだけで
すべてを否定されなければならないのだろう
わたしは否定を否定する
屁理屈が受け入れられないはずはない
「それも屁理屈」
感情が先行した理屈にもならないものたちが
我が物顔で社会をみんなをきみたちを
牛耳り闊歩しているじゃあないか
かりにそれも理屈だとしたら
感情論こそ屁みたいな理屈
なんだって自分の存在そのものまでも
屁理屈で正当化しないと生きられないきみやわたしなのに
屁理屈を冷笑で一蹴するのだろう
そもそも屁理屈だと主張する反論を
わたしはまだ聞いてはいない
反論がもしも正論ならば
わたしはよろこんで受け入れよう
屁理屈はなぜ受け入れないのか、
なぜ屁理屈だと決めたのか、
正当な理屈をつきつけたならば
わたしはよろこんで受け入れよう
「それこそが屁理屈」
わたしは否定を否定する
「それこそが屁理屈だと言うこともまた屁理屈」