暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

奈落の王

2016-05-05 | -2016,2017
空がそっくり落ちていく夢を見た
ぼくはそのことをすっかり忘れていた

夢は夢に過ぎないのだと
かつて誰に言われたのだったろうか

落ちていく、落ちていく
ぼくの認識していた空が
土には大きく亀裂が入り
ブラックホールが顔を出す
ぼくの認識していたものは
いともたやすく吸い込まれ
ぼくの世界はあっさりと
忘却という名の
まっさらな空間に成り果てた

夢は確かに現実ではない
現実の空にはひこうきぐもが
うすい線をえがいている

けれどもぼくは忘れていた
夢を、おのれを、ぼくの世界を
そうして空はみな落ちた

思えば忘却が始まった時から
ぼくの世界に亀裂が入り

新たに作られた世界の底で
ブラックホールがまばたきをしている