暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

2009-05-29 12:47:04

2009-05-29 | かなしい
あなたの潰した紙風船で
わたしは空を漂おう
無残に散らした花びらで
きれいな鶴を作り出そう

いつか消えるというのなら
今ここで消えてもかまわない
わたしは頭を撫ではしない
さようならと言うだけで

いくつもの死体に埋もれながら
「(何かを喋って、いる)」とささやかれ
わたしはあなたの無垢をあわれみ
死体とわたしをあわれんだ

からだがたとい立派でも
肉も脂も内臓もない
がらんどうの空洞は
きっと死体を欲しがっている

痺れ

2009-05-22 | つめたい
詰まるところ
きみたちが嫌悪を表するそれら、
魂なき人間の躰などは
ただ組成していたものが崩れ
砕かれ
切り裂かれ
燃やされ
ぶちまけられたに過ぎない
カップに入ったゼリーを見るか
落として崩れたゼリーを見るか
本質的に変わりはない

わたしはわからなくなりつつある
本質的な違いと
きみたちの言う違いとの
違いが
きれいと称する無機物の群
こわいと称する無機物の塊
うつくしいと称する有機物の集合
おそろしいと称する有機物の残骸
前後左右のその違いが
わたしはわからなくなりつつある

カップに入ったゼリーを見るか
落として崩れたゼリーを見るか
本質的には変わりない
ゼリーが人に替わろうとも

妄想

2009-05-13 | -2009
腹の疼きが果たして空腹なのか
それとも満腹の嘔吐感なのか
私には判断の術を持たない
正しい物差しなど
何かの役に立ったことがないからだ

あなたの信じた平行線は
私を騙す錯覚になり
またあなたは私を疑い続ける
断罪するつもりはない
釈明するつもりも
ただ私は
自らの顔色まで窺うことに疲れた
たったそれだけ

あなたと呼ぶ不特定多数
あなたがたの中に入る私
私という自己同一性は
公園の鉄棒に引っかかったまま
風に揺られて振り子を演じている
見知らぬあなたがたの中の
私の知り得ぬところに存在する私は
あるいは誰しもの見る小さな妄想に過ぎない

私は私を証明する確証も知らず
空腹感さえ忘れていっている

あなたがたと称するあなたから
私が顔を覗かせる
とうにゲシュタルトを起こしたそれは
知らぬ間にあなたの皮へ戻り
残酷なほど無垢な瞳をしてあなたの耳を踏み潰す
幻影に似た錯覚を普遍的だと
真実にするのであれば簡単なことだ

盲になれば消えると思えば
恐らく全ては消えるだろう
この目を潰す心など
どこにもありはしないのに
私は惨めにも自らに負け
疲労を糧に手段から逃げる
空腹か満腹かなど
既にどうでもいいことだ
線と線の違いの事実は
錯覚に過ぎないのと同様に

2009-05-12 | 錯乱
何をしても
鉛が四肢にまとわりつくなら
くずおれて息絶えればいい
それでも誰かの服を掴みたがる
鈍色の指で

(わたしの自己憐憫だと思わねば)

口を閉ざせば何も無い
夢を描いた先を現実で見つめ
心で、頭でどれほど
叫んだところで
他人は他人に気づきはしない
おのれが隣人の
自殺に気づかないのと同様に

(涙はいつだって止まらないのだから)

「わたしはたぶんあなたのもの、
けれどわたしにぎゃくはできない、
ただたちどまっていさえすれば、
あなたはそこにはいなくていいの、
きっとわたしをみすててしまう、
なみだはとまったりはしないから、
わたしはひとりでしにたいのよ、
ことばをしらないばかなんだだもの」

醜形恐怖

2009-05-08 | 
犬の目をした男が
手をゆっくり広げると
まっくらい空から
ひかりのつぶが舞い降りて
沈んでいく無垢なつみびとを
殺す

夜がいつかやってくるとき
冬もまた顔をのぞかせる
悲しげな瞳はどうせ
明日の殺戮をおもいえがき
よいを求め死を狩るのだろう

みにくい死に光をあて
落ちる影の向こう側に光をあて
ひどくいやなものを忘れていこう
犬の黒目は大きく開くが
見えるものは白色ばかり

おのれのつみはよいに埋め
光よ降れと手を上げる
死に行きあるいは既に死んだ
亡骸をきれいに輝かせ
きたないものを駆逐しようか
きたないものは駆逐させよう
殺す

揺れるあたま

2009-05-05 | -2009
 頭がどろっと濁っているのに、
 視界は不安なほど鮮明だ。
 色あざやかな菜の花畑は、
 春が過ぎ新緑の枝を方々へのばし、
 絡みつく神経細胞さながらに視界を侵す。
 誰かが笑っていても、
 いつかそれが灰になることを知っている。
 ただ頭は濁りを増すいっぽうだから、
 幾度も認めては見届けている。
 走馬灯のようなコントラストは、
 それでもどうやら現実に違いはなく、
 ただ脳が漂っているのが死に近い世界、
 ならば視覚は脳とは違うところにあるのだろうかと、
 昔考えたことは昔のうちに書き留める。

 世界にもはや意味はなく、
 菜の花が終われば人知れず植物へ変わるように、
 誰もが灰へと変わるように、
 頭は濁りきり塊へと意味を変える。
 そうなれば最後には、
 せめて最後には
 できるだけきれいであざやかな
 私の夢を見ることができたらと
 いつかには考えたのかもしれない。

己の不足を呪わず

2009-05-02 | 心から
腐りきった言葉たちを
排水口から浚って洗う
そんな気分も起こらないのだ

どろどろと崩れるそれら
恐らくは正しくない腐敗による
あるいは仕方のない犠牲を数える
それらは
糸を引き下水へ流されて
あとには白々しいプラスチックが
残るだけ

同じせりふを数え上げ
無駄とも知らず流し込み
ただただ腐り汚していく
わたしの罪も過去にしかならず
何をすべきかなどという問いは
迸る水の音にかき消され
あたらしい言葉がガスを出す

無題

2009-05-02 | かなしい
わたしの足にたまる
重く痺れる疲労感は
思えば久しく忘れていたもの
泣き出したくなる焦燥を
処理する術は一時に忘れ
幼子さながら泣き喚く
この痛みからどうか
逃れられますようにと