暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

自己崩壊

2007-12-18 | -2007:わりとマシなもの
ぼくの向こうで
ちかちか光っているよイルミネーション
さよならを言わない兎のかげと
虎のあぎとを重ねて遊ぼう
火花が散って塵になるまで
燃えているんだイルミネーション
エネルギーの消費
ガソリンの消滅
かげがいつかやみになるよう

瞬け ぼくの
眼底でくすぶる放電光

がりがり擦って
落としてめくれたお大事に
言うこときかない機関の異常
エマージェンシーエマージェンシー
ちか ちか ちか 水銀の
光があたまにひらめいて
脳は休ませる
頭にはなにもないから
ぱら ぱら メーデー救難信号
ぼくのお舟は沈没ばんざい

夢のせかいだおはしを並べて
ちかちか歩けよイルミネーション
ぼうやのベッドは檻のなか
それってつまりぼくはどこ?
しらじらしい水銀灯が
ぼくそれ自体を真っ白あおいろ
溶ける 溶けてく
いたきもちいいグランジのせかい?


二つの破壊

2007-12-14 | -2007:わりとマシなもの
私と一緒に
あの果樹園へ帰ろう
みかん、ぶどうに
ももやいちぢく
春から冬まで実らせたあの林へ
今はきっと 入り口の両手にある
一対のいちょうが見頃だろう
あそこは昔となにも変わっていない
むしろ更に色と茂みを増して
私たちを歓迎してくれる
甘いものが食べたいから ほら
きっかけならここにある
だから一緒に帰ってしまおう
変化は時に疑い辛くなる
今ある事で済ませようとする
中々 偽りだと言い出そうとも出来ず
その場逃れの笑顔で誤魔化すばかり
あそこなら何も変わっていない
なにしろあの果樹園は
ここから幾万も遠いのだから

新緑の葉に囲まれて
おばさんの収穫を手伝った
実りが陽炎に歪むころ
涼みを借りてかくれんぼをした
赤と黄色と茶色に囲まれ
隠れて食べた甘い木の実のあの味を
細かな雪が積もっても
土に芳香は染み付いていた

昔はよく遊んでくれた
あの浅黒い肌をしたおばさんにも会おう
あんなにいい笑顔で働く人は
君だってまだ見ていないだろう
捨てることのできない記憶は
確かに果樹園の大部分を占めている
逃避だと笑われてもいい
あのしあわせな時間に 戻れるなら
みかん、ぶどうに
ももやいちぢく
好きな果物をもいで食べていい
植物も土も人間も
みんな私たちを歓迎してくれる
だからどうか 拒絶でもいい
返事を声に出して欲しい

諦めと受け入れ

2007-12-05 | -2007:わりとマシなもの
緩やかな下降曲線を描く
細胞の再生速度
諦めて受け入れた回数は
乗数をもたず昇り行く

他人を犠牲にできる強さがあれば
こうして途方に暮れることもなかった
間違っている 合っている
そんなことでさえ決められない

学んだ 私は
切り捨てることを
他人に害は与えられないなら
それなら切り捨てればいい 私を

エゴだと言われることを
何よりもおそれている

やはり自覚というものは
いつだって自分がするのだと

他への犠牲を懸念して
醜く変化したこの四肢を見るがいい
これは私の罪だ
どうあっても私の咎でしかない

何かを諦めた時
得るものと失うものと
どちらがどれだけ多いだろう
私は何かを得て何かを失った
それだけなら誰にでもある
逃避を得て命を失い
時間を得て努力を失い
献身を得て私を失い
信頼を得て自尊を失う
天秤は一生をかけても
私の目の前には現れない

そうして限界を近付ける
何事も有限なのだから

たとえ天秤が平らだとしても
失うものの器は減っていく
水がかさを減すように
泉でなければ涸れ行くように

緩やかに首を絞められる
それは誰でもない

磨り減らした時間は
取り戻すことなどできない
(と諦めている)
奪われる前に逃げ出したい
それもまた不可能な話だ
(と諦めている)

献身を正当化して
死体の上で笑うお前たちになりたい

いつの間にか許容量を超え
いずれ塵となるだろう
その時は恨むのだろうか、誰を
あるいは喜ぶのだろうか、何を
私は脆弱ゆえにすべてを諦めた
望みなど最初から持ってはならない
そのような人間もいる
気を揉む必要はない、最初から
問われるとしたなら自分でしかないのだから

腕が痒い、
頬が痛い、
頭が煩い、
得るものは緩やかに
下降曲線を描いている

ミニシアターの残骸

2007-12-02 | -2007:わりとマシなもの
深夜二時 レンタルビデオ店
ここの空気が僕は好きだ
よく知る人が
サスペンス欄で何か考え込んでいる
気だるい瞼には
なぜか冷えたここの空調がよく合っている

数本のDVDを借りた
特に観たかったわけじゃない
帰り道のコンビニでコーラとポップコーンを買う
店員もやはり見知った顔だ

本当なら
コーラは赤い紙カップに注いで
同じような安っぽいカップに
バター臭いポップコーンを山盛りにしたいところだけれど

店のレシートをチケット代わりに
帰り道は子供に返る
この道は好きだ
アパートの前で夢から覚める

泥のようにまとわりついて
離れないものがある
それは僕自身の問題で
コーラが腿に当たって冷たい

エンドを求めることよりも
これってただの習慣なんだ

帰ればもううんざりしていて
頭が鈍く痛んできている
だけどレシートを見れば
返却期限は明日まで
封を切る もう幾人もに
観られて傷ついたディスク
この映画はどんな作品だったか
そんなことはどうだっていい

時計が回る、ぐる、ぐると
僕は頭を抱えたままに
暗いテレビを眺めている

スタートが欲しいわけじゃない
フィクションのエンドなんて
事実はふわふわしているのに

何だって どうして
幸せに終わる必要があるんだ
ハリウッドのハッピーエンド主義にはうんざりさせられる
エンターテイメントは死んで
僕はここで腐っている

テレビがいかれた
くそ、五回目だ

生温い終幕に辟易しながら
それでも次のディスクを入れる
日本映画 アニメーション
特色のある流された文化

それはたまたまいい映画で
胎児の自分を絞め殺し終わる
胸が悪くなるような終わり方に
なぜか涙を流していた

潰される、
終わらないまま、
ここで腐るそして僕

ハリウッドのハッピーエンド主義にはうんざりさせられる
コーラはいつも飲みきれず
生温くなって流しに捨てた

忘れてはいけない

2007-12-02 | -2007:わりとマシなもの
シャーペンの芯が切れた時、
自転車を置き忘れた時、
朝食が思い付かない時。

折れる瞬間は
ただの要因にすぎない。
スイッチはただの一枚の
金属板でしかないように。

たったそれだけの要因で
突き動かされるほどに、
彼や彼女は
疲れていたのだろう。

弱者は本来存在できないなど、
自身がよく知っているものだ。

気を付けろ、
気を付けろ。
折れる素材はそこらに転がっている。
たったそれだけでと自問する頃には、
一人では立てやしないのだから。

強くなる前に、
休むがいい。
シャーペンの芯を買い、
自転車を予め取りに行き、
朝食用のシリアルを取っておく
時間を配分するといい。

金属板が折れれば
二度とつくことはないのだから。


最初から救われない者に救いを持たせる気はない

2007-11-29 | -2007:わりとマシなもの
私が弱いのだと知ったのは
わりあいに最近のことだ

月日の単位など
長短を知る助けにはならない

我慢というものは
器の大きな者の許されることだ
水盆は返れば元には戻らず
溢れる盆など必要もない

みずからが弱いのだと知ってから
残酷な情報を漁った
弱いのだと自覚する前も
すでに囚われてはいたのだが

事実を知り人は強くなる
それはまさしくそうなのか

傷の舐め合いもまた
防衛し一段を昇る手段のようだ

猿を笑う
犬を愛でる
生きながらの侮辱
(疑問にすぎない弱さ)
狸を剥ぐ
豚を食う
鶏を詰める
鼠を殺す
生きながらの殺戮
(あるべきはずの恐ろしさ)

何よりも優先される尊厳は
かならずなにかを犠牲にする
それを自覚もせず暮らす者
死体を知らず残骸を嫌悪する者
忌まわしいのはすでにあるもの
異質ではなく普遍
まかり通るほどの常識

私は憎悪に狂ったのだろうが
それを笑う者も狂っている

残酷な情報を貪り
今なお弱い人間として
ものを食べ暮らしている
糧に感謝はしているか
享受すべきは何もない

私が弱い人間だと知ったのは
本当に最近の話だ

自分を省みた時
みずからを殺したくなる弱さ

臆病とは弱者の証だ
おそれるまでは万人が
おののくのみは弱者が

不変を信ずる者たちよ
器の大きな殺戮者たち
彼らは私を笑い許すか
私のように自分で手一杯でない
飽食にさえ飽きた
死体趣味の聖職者

残酷な情報を貪り
今ではそれを省る
大義名分を掲げた正義の殺意
これでは 私は
弱いのではなく狂っている
アンダーグラウンドで墓を掘る
入ることのない犠牲者のために
正しくはない だが
どの道同じことだ

弱い人間に許されるのは
諦念がいいところだ

弱いものは弱い
葛藤するより他にない

悪の定義というものは
随分とまた狭義なものだ

捨て駒残党

2007-11-28 | -2007:わりとマシなもの
おまえのくるしみは
おまえだけのものではない
どうようにわたしのくるしみ
ねたみ
うらやみ
たのしみ
かなしみもまた
すべてが
わたしだけのものではない

まったくやっかいなことだ
いたみわけもまた
ここちよいのだから
おまえ おまえたちのいしは
わたしのそれであり
すべてのせきにんとやらは
わたしにいちにんされる
まったくめんどうなことだが
これもしかたのないことだ

ああ
おそろしい
たいがんではかんたんにひとがしんでいく
みしらぬものから よくしる
いたみわけのどうほうまでも
このはのようにちっていく
おそろしい おそろしい
しぬのはやはりおそろしい
なかまのいたみをかんじている
ぎぜんになみだもでてこない
わたしもしかばねとなりうるのだから

ほうこうをあげ
さかをおりるしかない
おちばをふみしめるおとと
おまえたちのいきのおと
じゅうしんがせなかでゆれるおとに
わたしのはのねがふるえるおと

やめられない
おそろしい
ああ なぜわたしは
このようなばしょで
しにむかいはしるのだろう
まかされたからなのか
たのしくてしかたがない
あきらめににているが
むしろここちよいのだ

やまのふもとでわかつであろう
どうほうとこきゅうをともにすること
おまえのくるしみはわたしのものだ
わたしのよろこびはおまえのものだ
たのしいだろう なぜなら
わたしがたのしんでいるからだ

さあかえりざけ
おまえをはでにちらすがいい
けもののほうこうは
やまのねをゆらすだろう

My Visceras For You

2007-11-26 | -2007:わりとマシなもの
胸の動悸が止まらない
(私の)
吐き気に似ている劣情の捻れ
(私の 私の)
見送る顔の空々しさは
最も忌むべき表情の一つ

(私の内臓をあなたに)

静脈血ほど黒くはない
私の清らかな体液を
あなたのものとしてしまおう
私の苦さをあなたは知らず
あなたの甘さを私は知らず
平行しない線の上
共有の誘惑は夢に掠れる

肉は信用に至らない
なぜならとても浮気だから
沈黙を守り巡る体液
言われなくとも動く内臓
開いて全てを捧げよう
裏切りを 私の
体が犯した裏切りを知りたいのなら
どうぞ脳漿まで啜るがいい
脊髄の真ん中を貫いて
四肢を罰して許すのならば
私は喜んで糧となろう

辿り着けないことも醍醐味ならば
それがいとわしいこともある

誰にも何も言えはしない
そんな舌は食べてしまおう
同じなのに解釈をたがい
理解し得ないそんな距離など
動悸をただ早めるばかり
食べてしまおう食べられよう
距離は同じ 同じになる

理解できないのなら
私の内臓をあなたに捧げよう 全て
残らず供物として やがて
嫌悪は誰に向くだろう
それが私の理解なのだと
喋る口も存在しない

叫ぶだろうか
狂うだろうか
私の既に知っている
理解を合わせ増大した
劣情に耐えるか弾けて散るか
どちらにしても距離はゼロ

(細胞など三ヶ月で消える)
私の内臓をあなたに
捧げよう 全ての願いと
この劣情 動悸を何もかも
捧げよう 意識の在りかをありったけ

さよなら

2007-11-24 | -2007:わりとマシなもの
古きを忘れて
さよなら

新しく来た風に
さよなら

別れを告げよう
手を振り笑って
振り返るのは意気地無し
別れを告げるよ
終わってもいないことに

さよなら
そこで私との繋がりが断たれる
すべてを無理やり流し去る
さよなら
そのまま逃避行だね

全部ぜんぶにさようなら
そうして古今に
こんにちは
まいにち毎日
当然に向かって手を振る
手を振ってからまた会おう
さよならさよなら
こんにちは

神経毒

2007-11-19 | -2007:わりとマシなもの
誰もが視神経に毒を持っている
一人では虫も殺せないが
何人もの視線で人間を殺せる
毒を蓄えているに違いない

そうでもなければ
この視線の中
自律神経を揺さぶられている
私はどう説明すればいい

今朝自転車で下った
坂の上の空気よりも痛い

抵抗は無力に等しく
あるいは餌に過ぎない
嬉々として 集団の中枢神経は
その足掻きを眺め踏みにじり
毒を増すだけで

一人の毒で何が殺せるというのか
罪もない善良さは兼ね備えていないが

五臓六腑を噛み砕く
幾数人の無知 毒素
私はその味を知っている

ああまた一人殺された
数万人で眺めてもニュースは死なない
ああまた一人殺した
毒の後遺症を引き摺る

誰もが視神経に毒を蓄えて
知らない間に人を殺す
毒の後遺症を引き摺る
私が殺したに違いない
毒の後遺症を引き摺る

冷たい痛み
私が 殺されよう
毒は一人でははたらかず
幾数人が一人を殺す、
何万回目もの既視感を
抱くだけだ