暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

襤褸のかみさま

2013-07-30 | -2013
私の中の高潔は
汚れた襤褸を纏っている
下水に何度も流されて
黒と白の区別もつかない
私はそれが憎たらしい
勝手に海まで駆けてゆき
無意味なほどに手を叩く
私はそれを憎んでいる
いくら排泄したところで
気がつけばまたあの襤褸と
ひどい悪臭が後ろ側
にたりにたりとそれは笑う
何を告げるわけでもなく
さも愉快そうに手を叩く
彼の彼女の高潔は
見事な絹を肌に纏い
あるじの隣に従っているのに
私の中の高潔は
それらを指さして手を叩く
さも愉快そうに歯を剥いて
私はそれが憎たらしい
笑うことしかできぬ高潔
襤褸布さえも纏った高潔
何度も何度も下水へ落とし
まだ目玉さえ残った高潔
何とも何とも半端な高潔
溶けろ 喰われろ 臓腑を晒せ
下水でさえも足りないのなら
他人のあれらを食らってしまえ
私はあれが憎たらしい
私の中の高潔は
私をよくよく知っている

アクトベリンゼン

2013-07-26 | -2013
迷子の子供を見かけた
声をかけると子供は逃げていった

旧友と話をした
お互い疲れて別れてそのまま

蜘蛛を殺さず無事を祈った
その翌日に動かなくなっていた

瀕死の猫に寝床を与えた
暖かすぎる部屋で渇きながら猫は死んだ

小さな魚を飼い始めた
浮き上がれずに溺れて沈んだ

今日の善行明日の悪行
すれ違うのは至らないせい

こっそりお金をちょろまかす
ただ気まずさが募るだけ

嘘をついて土下座をし
温情を汲まれて無罪放免

誰も知らない秘密がある
誰もが秘密を持っている

殺せば喝采を受けるなら
わたしとあなたで戦争をしよう

何度も血を流し続けた
同情を受け誰かは涙を流してくれる

今日の悪行明日の善行
結果は既にご存知のとおり

たくさん助けたそのうちの少しを
より強烈に覚えているだけ

たくさん欺いたそのうちの少しを
ただ許されてしまっているだけ

そぐわないそぐわない、方程式など
下水で鼠に喰われてしまった

敵意

2013-07-07 | -2013
はらわたがぐつぐつと煮える
鍋の中で泡を吹く
ひとさじの砂糖を入れたところで
灰汁はみるみる溢れていく

おまえのはらわたはどんな味だ
美味しくない、美味しくなどは
ただ煮て食べればどうにでもなる
骨は砕いて土に撒いた
髪も服も全部燃やした
おまえのはらわたは変に苦い

混じりのない瞳はじきに
どろどろくすんで液化した
蝿よ、鼠よ、油虫よ
死にたいがために貪るのか

褪せた食卓、どろりと濁った煮汁の煮こごり
なんともなんとも異臭を放つ
感謝するのはおまえのほうだ
美味しくない、美味しくなど
土と肉に埋もれてしまえる
異臭も灰汁もやがては糞へ
楽に生きれば楽に死ねる

残さず食べよと言うそばで
隅に重なる灰汁とはらわた
無駄ではない、無駄になど
おまえが蠅を、鼠を、油虫を
叩いて潰さぬかぎりには
燃やして灰へと変えぬかぎりは
ぐらぐら煮え立つ煮汁の中で
おまえが蕩けることもない

2013-07-03 | 錯乱
恐ろしい
恐ろしい
黒く枝垂れる雨雲が
高く這いずる木々たちが
悪意を孕んだ善き人々も

目を閉じ耐えて再び開けば
火種は業火へ転じている