暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

かわうそ

2013-05-30 | 自動筆記
清のびてみるこまの
げんそ陸やまにこうじ

くなくなやめてば
総落すめて
方四区わんても菊りつづ
うぞやまにとや
キマ、峰ねくゆ

(寒よ寒よと鳥羽は降る)
(されども滴る土の壁)
(まにこうずるはすべらかに)
(手折れる後の腥さ)

半放急御えを暗んじせ
かわうそかわうそ遍籠の声
降せ降ぜ、キマせ、花報けんらぜ
夏ん端憂のの弁こらぬ

高所恐怖

2013-05-24 | 心から
遥か高い鉄塔にのぼり
君よ、なぜ遠くを見るのか
落ちてしまえば元も子もない
雲を掴めるはずもない
遠くの灯りを眺めても
君はただ鉄塔の上
私はおそろしいのだ
君が落ちることも
鉄塔が崩れることも
遠くに広がる営みも
君よ、君はおそろしくはないのか
誰かがまばたきをしたその時こそ
足元が裂けてしまうというのに

有害ゴミは分別しよう

2013-05-16 | 暗い
ぼくのこころは死んでしまった
くさってしまう前にきりはなした
捨てた
それでもじゅくじゅくいたむんだ
膿んでいくのがわかるんだ

もっととおくへ
とおくへ捨てよう
火をつけて燃やしてしまおう
湖の底にしずめてしまおう
土をかけて埋めてしまおう

ぼくのこころ
ぼくのこころは
死んでしまった

くさりゆくだけなら
どうしてたいせつにできるだろう
それでも悲鳴をあげている
いやな臭いの汁をたらす

どうしてもどうしてもくさるのなら
近づかなければいいんだよ
遠くへ遠くへやってしまおう
誰にも迷惑かけないように
みんなを遠ざけてしまえばいい

ぼくのこころは死んでしまった
せっかく生まれてきたというのに

嫉妬

2013-05-13 | かなしい
あどけない笑みを見るたびに
他愛ない話をするたびに
私の醜さが露呈する
だけれどそれは決して
決して不快なんかじゃなかった
君もそうだったろう
そのはずだと知っていた
ずっと時が続けばいいと
お互いに思っていたはずだった
あまりに君は身勝手で
私はとても羨ましかった
君の鮮やかな世界に在る私は
一体どんな綺麗な姿で見えるのだろう
褪せた私の世界の君は
なお極彩色を煌めかせる
だけれど君はあまりに身勝手
私はあまりに浅ましく
私の世界には残像がちらつく
君の世界に私はいるのか
鮮やかなのは私だけでないのか
今なお焦がれる君の言葉は
嘘じゃないとは知っている
淡い期待をするそばで
君のすべてが本音なんだと
君の世界は誰しもが鮮やかだと
わかっているつもりでいただけだ
いつだって君は本音を言い
いつだって私は裏を読む
それでよかったはずじゃないのか
それで幸せだったはずなのに
私は君の本音を騙し
君は私の裏を読まない
必要なものはもうなくなった
あるのはただただ残像だけ
君の世界の私がいるから
今なおそれがちらついている
また私は期待をし
君の本音に絶望する

君だって知っていたはずじゃないか
私はそう思っていたよ

無意味

2013-05-11 | つめたい
体がとても重いのだと、彼はいつもそう言っていた
確かに彼は歩くのも辛そうで、
腰掛けた椅子が悲鳴をあげていた

彼のはらわたを脱いてやるのだ
腸も、肺も、心臓も
これで随分動けるだろう
肝も、脳も、生殖器も

彼は見違えるほど軽やかになり、
そして見違えるほど美しくなった
飛び跳ねるように走り回ったあとで、
窓を乗り越え飛び降りた

羽のようにふわふわと、
地面に華麗に降りたてるのだと、
しかし彼にはまだ分が悪い
まだまだ彼は重かった

骨も、筋も、脂さえ
まだまだある、まだまだ重い
彼のすべてを脱いてやるのだ
これで軽くなったろう
これで跳べば飛べるだろう

ほら、彼は軽そうだ
美しささえ取り払って
彼はとても軽そうだ

寂しくなんてないんだよ

2013-05-08 | -2013
あの子はどこへ行ってしまった
細い手首の可愛いあの子は
(遠く、遠くへ行ってしまったよ)
甘える声がよく聞こえていた
私はよく耳を澄ませて
あの子の声が聞こえるたびに
夕暮れの空気を感じていた
(誰も知らない遠くの場所へ)
声が止んでしばらく経つ
私は夕暮れを忘れてしまった
昼と夜とが代る代る
いつだったかいつのことだか
(あの子がどこへ行ったとしても)
細い手首に心配することはなく
返事のないあの子を心配することもなく
平穏に夜は訪れる、日はやってくる
あのこはいつの間にかいなくなった
どこへ行ってしまったのか
(おまえはすぐに慣れるのだよ)
どこへ行ってしまったのか
遠く遠く、見えないほどの
遠く遠く、聞こえぬほどの
(いなくなった、そのことに)

(おまえはすぐに慣れるのだよ)

闘魚は沈んだ

2013-05-01 | -2013
紫色の足の先、
爪がぼろぼろ剥がれ落ち、
滲み出す水の赤黒さ。

彼はとても綺麗な足をしていた。
長い指と、美しい踵。
節くれだったそれでもなければ、
変にやわこいそれでもない。
私は彼の足が羨ましかった。

紫色の足の先、
ひやりと冷たい足の先。
それからぬるむ足の先。

役に立たないのだ、綺麗な足は、
鑑賞用の魚がたやすく死ぬように。
鮮やかな闘魚も闘わせれば襤褸になる。
美しい人形のような足は、
羨ましくもあり蔑んでもいた。

どうか血を通わせておくれ、
どうか熱を分けておくれ。
腐ってしまった痛い痛い、

彼のような足になりたい、
彼のような足などいらない、
長い足も短い足も、
みな美しき鰭を纏っている。
爪は腐り、指は落ちて、
踵は割れ、揖保をこさえた、
水の滲み出す冷たい足など、
ただ沈みゆく闘魚と同じ。
しかし鰭を広げるだけの、
ただ美しきものになど。
どのみちなれはしないのだ、
彼のような足になど、
どのみちなれはしないのだ。