暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

骨身をわける

2014-12-12 | 狂おしい
尊大な皮膚をまとい
分厚い利己心に肥え太り
憎悪の筋肉で骨身を支える
私は人の形をしただれか
骨身をきれいに分解すれば
骨にしたってみすぼらしい

虚栄心で何を得たか
何も得られない現実だけ

喪われた数年間を
時に分に、秒に換算したことはあるか

日に日に体はおおきくなる
頭は相対して小さく見える
実際にすこしずつすこしずつ縮んでいく
発育不良の骨はいずれこなごなに砕け
私は人の形をしたなにか
骨身をわけられることもない
憎悪の筋肉をどろどろに溶かし
何層も纒う利己心を変色させ
尊大な皮膚をふくらませるような
そんななにかになり果てて
山を海をさまようのだと

思っている
想像している

いま既にそうだという可能性には
決して目を向けずに

愛していたのだけれど

2014-12-09 | -2014,2015
ごはんだよと呼ばれ
階段を降りると
ごはんはとうの昔に終わっていた

食卓にはコーヒーの匂いがのぼりたつ
わたしはこの匂いは嫌いだった
食後のおやつと出されたようかんへ
手を伸ばす前に平げられる

すべてが すべてが手遅れで
わたしは手で顔を覆うだけ
めまぐるしく移り変わる時間のあいまを
縫っていくことができない

取りこぼした花瓶は割れて
散らばった花は萎れていく
わたしは手で顔を覆うだけ
ほんとうに済まなかったと
呪詛のようにつぶやくだけ

ほんとうに ほんとうに済まなかった
涙は後から後からこぼれては
光の速さでめぐる世界で蒸発する
ただわたしの枯らせた花々の影だけが
わたしと同等の時間を経て佇んでいる

コーヒーの匂いが消えた
食卓の灯りが消えた
わたしは涙をぬぐい布団へもぐり
いくらもしないうちにまた、
だからわたしはこの匂いが嫌いなのだ

転ばぬ先のだるまさん

2014-12-05 | 狂おしい
かさかさに乾いた唇の皮を剥ぐ
ささくれだった指先を揉む
めくれた爪を引きちぎる

生きているわ
生きているわね

つめたい風に晒されて
凍えた手足は動かない
優しい両親は肩を抱いて、
動かない手足を切ってしまった

痛いのだって生きている証拠
あなたがいれば、あなたさえいれば幸せなの!

しくしく泣いて暮らす私に
二度と悲しみが訪れないよう
声をつぶして目玉をくり抜く
うかつに噛み切られてしまう前にと
舌も歯もぜんぶ取り去った

それだけじゃない、
それだけじゃないの
癌になるといけないからと
乳房も子宮もぜんぶ出して
不幸を減らすために膣を埋めて
歯のない私がまんがいち
誤嚥するのもいけないからと
チューブは口から肛門まで

みんな私を私と呼ぶの
とてもとても優しい声で
どんな姿でも、
生きていてくれるだけでいい
生きてくれてありがとう
何も心配しなくていい、と

いつだったかに耳も聞こえなくなったわ
心無いことばで悲しまないようにと

生きているわ
生きているわね

本当に生きているのかしら
私は本当に、
人間として、