暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

いつくしむひとびと

2013-08-27 | 暗い
誰もわたしを救いはしない
それは確かにそのとおり
なぜならわたしは誰一人として
救ったことなどないからだ
救う気さえもないからだ
摂理にあぶれた愛しき愛しき愚者たちは
誰もわたしを救いはしない
かれらの求める救いとは
決して施すものではなく
施されるべき慈愛のしずく
穢れたその身を清めるものは
清浄でなければならぬと目隠しをかけ
もはや四肢も臟腑も必要ではない
清く爛れた魂こそが
わたしとかれらの救いの証
誰もわたしを救いはしない
わたしが誰をも救わぬように
恐れ蔑み情けをかけて
祭壇は静かに燃えてゆく
誰にも向けぬ饗宴のあとには
溶けた鉄くれが転がるはずだ
救いは確かに果たされるだろう
何をも忘れた灰として

吐きそう

2013-08-16 | -2013
きれいな空であなたとわたし つながっているの

わたしの大嫌いなあの女とも

わたしを嫌っているあの男とも

会ったこともない浮浪者とも

血をたっぷり浴びた殺人鬼とも

狭い肉壺を喜ぶロリコンペド野郎とも

犬と交尾するクズたちとも

虫を殺して喜ぶ歪んだガキとも

糞尿にまみれた獣たちとも

つながっているの

つながっているのよ

あなただけじゃないの

わたしだけでもないの

みんなみんなつながっているの

今吸い込んだ空気だって

誰かの屁が混じっていたり

腐った肉が気化していたり

わたしの嫌いな人の息なんて

きっとたっぷり吸い込んでいるの

この空の下で

特別にあなたとわたしがつながっているなら

きっとわたしはあなたを憎むの

落ちた枝

2013-08-12 | つめたい
王国の壁は崩されて
藁のようによく燃える
ごらん、人々は信じたものを
疑う余地なく脂となった
幸福はくろぐろとした煙に変わり
慈しみの涙をおのれに注ぐはずだ

帝国の壁はそびえ立ち
木々のように朽ちていく
ごらん、人々は信じる心を持たず
疑いのままに木偶を選んた
不幸はしらじらしい汚水として
憐れみの根を磐石にするだろう

気の毒な狼はいま干からびた
磔刑に処される摂理のしもべ
温かな家の軒下で腐る安寧と
冷たい瓦礫の上に眠る安寧と
よくよく見て刻みつけておきなさい
わたしたちにできるのはたったそれだけ

積み重なる暴君の煉瓦も
崩れゆく賢君の井戸も
同じ墓に並べられてしまえば同じこと
ここはわたしの王国ではない
あれはあなたの帝国でもない
疑うことも信じることも許されない

ごらん、彼らは生きて死に
気の毒な狼が幾度となく遠吠えを遺す
わたしたちはどちらでもない
どちらでさえもない
ただただ忘れぬように刻みつけなさい
風が吹くだけで灰になるわたしたちのために

熱を患う

2013-08-10 | 錯乱
ちくちく刺さる足の裏
痛い痛いときみは言う
ちくちく刺さる足の裏
痙攣するのは私のほう
背骨がめきめき音をたて
大きな木々のうろの影
足の棘は抜かないで
刺されば深く貫かれ
(いいえ、ずっと肌に)
痛いと苦しいと言えば言うほど
ぴくぴく動くきみの影
私はうろから解放された
きみの棘はいつまでも
いつまでもちくちく足の裏
抜けば抜いたで背骨も抜けて
放っておけばうろの住人
見ている、見ている、かみさまが
私ときみだけのかみさまが
目印ならばきみは食われ
目印ならば私は滅ぶ
もう遅い、もう遅い、なにもかも
せめて私はきみとともに
お腹の中で溶けたらよかった