僕はどうしたって
母や父の庇護の下で暮らさなければならないのです
いくらあがいたところで
僕のうしろには家族が潜み
あらゆる手段は家族に帰結するのです
僕は愚かです 愚かな
過ちを続けているから今も子供でしかないのです
けれども僕は
大人にも子供にもなりたくないので
こうしてもがいているのです
僕は白痴のように笑ってばかりいますが
本当は笑いたくなどありません
もう道化は疲れました
何をばかなことを、とあなたは嘲笑するのかもしれませんが
ほんとうです ほんとうに疲れました
それでも僕はまだ家族としてのビジネスを
果たす必要があるのです
あんまり弱すぎるので僕はいつも申し訳ないと思っています
ただ謝ってもかえって良くないと 知ってもいます
僕は泣かなくなりました 心は弱くなりました
もう僕は 無力な自分に情けをかけなくては
生きてゆけなくなりました
あるいは社会を憎むことで
僕は自分を許そうとしました
自分のような弱い人間が生きられるような
優しい社会が悪なのだと
けものの社会であれば 僕は
今ごろは骨も水となっているでしょう
僕は愚かだとわかりますか
愚かです けものののような人間です
正しい社会を信じるならば 僕は僕自身を
生かすことも否定しなければならないのです
僕の迷いや罪悪感はすべて許されてきました
迷いが罪であることも罪が真実であることも認められ
愚かな僕は どうしてか いつも
高台にのぼることをすすめられるのです
そうして僕は笑うしかありません
どのように歩くかも知りませんから
最大の罪悪を知っているでしょうか
僕はその大罪を犯してなお生存を認められています
家族という責務を果たすための
ひとの情念というものを どこかで
捨ててきてしまったようでした
愛を知らない生き物など
どこに存在するというのでしょう
僕の熱は存在しません
ただ申し訳ないと思うばかりです
人であることを放棄した僕は
やはり白痴のように笑うのです
どうして誰もが庇護するのでしょう
僕が子供だからでしょうか
僕が人間でないことを知り情けをかけるのでしょうか
家族に手をついて謝りたいのですが
きっと父も母も僕を最初から許していると思います
僕の犯した大罪も あの人たちは
あたたかい笑顔と涙で許してくれるのでしょう
どうにも居心地が悪いのです
おそらく僕には救済の道もないのだと
あらゆる教典は慰めてくれました
僕は愚かな存在なのですが
それでも死が恐ろしくてしかたがありません
いいえ わずかな
けものとしての本性の残滓は
生きていたいようなのです
僕はおそらく いつまでたっても
大人と子供の輪を宙ぶらりんにさがっていることでしょう
たとえ生きていることが間違いと知覚していたとしても
私の最後の獣の本能に頼るしか道がないのです