暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

葬送行進の喜劇的な逆行

2008-01-31 | -2008
ひび割れた鍵盤から
舞台音楽が流れてくる
海底の舞踏会は始まる
船底の白骨とともに
きらびやかなシャンデリアが
プリズムの光を投げ掛ける
影を落とした踊り子の頬に
紅が添えられその手を添える優男

屍の骨の上
好きなようにリズムを刻む
嘲りの歌を口ずさみながら
化粧した衣装を振り乱し

道化は終わりだ
二度と笑うものか

憎悪にたぎる黄色い歯を見せ
演奏主は綺麗な指を滑らせる
割れた鍵盤が奏でる葬送行進曲に
踊り子の行軍は歓喜する

船底で眠る頭蓋の群れ
魚に照らされる陽のない闇
亡霊はいつでも屍の上に立ち
生ける道化を踊りながら
みずからの死を悼むだろう
不協和音に崩されて
足を踏み外してしまうまで

現景色

2008-01-29 | 
馬面の天使
「全然恵まれないあなたに救いを与えにやってきました」
かたわの浮浪者
「お前に恵まれた容姿を」

聖職者の罪悪感
政治家の劣等感
労働者の疲労感
救われない
敗北者の谷は山になる

お前は天使だ
神だ
人間だ
獣だ
大地だ
等しく膨張し
同様の感情を抱くだろう
愛している
引き裂きたいほどに

禿頭の天使
「あなたは神の使いだ。私はあなたに従おう」
かたわの浮浪者
「そうならまずお前の髪を生やしてやりたいね」

脳内麻薬

2008-01-28 | 錯乱
腕の先を伝う羊歯類の毛を生やした物体を
片っ方で引き剥がす
嫌な音が骨に響いてのたうち回るのは
私だ
俯瞰できるはずもない己は実像のように
どちらにしても実際ではない

肺臓から絞り出される淀んだ空気を
まるでデザートのように平らげる
お前は一体何がしたいのだ
気持ちが悪くて吐き気がする

現象は見えてこない
目がかすんでいる
何かが足りないといえば
うつくしき情緒以外に何があるというのか

頭痛の程度はいかほどだ
グズグズにふやけた腕の筋組織を
無遠慮に叩きながら彼が笑う
痛みに涎を撒き散らして泣きわめき
性感に咽ぶこの姿を見ている
客観性こそ実像なのだろうかと考える

複数人物のおおよそを蹴散らし
苦痛にしかならない快楽をえらぶ者をすくうのは
私だ
羊歯がまたそろそろと触手を伸ばす
激痛は甘美な果実に似ている
死を覗くつもりなど毛頭ない
エンドルフィンに脳が溶かされていくのを
笑いながら見物する実像を観察する実像の実像
実際など道の上にでも転がっているだろう
少なくともどこかへ行ってしまった

ワナビィ

2008-01-27 | -2008
しあわせに
なりたくない
ふしあわせを
わすれてしまうから
ゆうふくに
なりたくない
ちいさなことで
よろこべなくなるから
みたされて
よろこんで
あしもとに
きづかない
そんなひとに
なりたくない
しらないことを
はじないことは
いちばんはずかしい

からだをつぐむ

2008-01-25 | -2008
口を持たない奇形の子供
喋ろうともがく姿を見て人は笑う
転んだ痛みを伝えられず
嫌いなものを伝えられず
お腹が減ったことも伝えられず
両親はただ途方に暮れるばかり

口を持たない奇形の子供
喋らなければわからないのよ
頭の中で叱責が響く
言い訳も口にできず
しゃくり上げては癇癪を起こす
無音の反抗に それでもなお
人は笑う 残酷に指をさして

喉に無理やり穴を空けて
ようやく生き永らえる奇形の子供
同情と叱責に耐えながら
助けは必死に求めている
ただ人は知らない
喋ることのない者との意志の疎通など
手を振れば気が触れたと喚く
触るのを許されているといえば父母の服の裾ばかり

子供は絵を描いて
なお助けを求めていた
次第に助けてほしい思いは曖昧になり
体に受けた傷も当然なのだ
大人になる子供は考える

喋ることもできない人間を
誰が愛でるというのだろう
理解の外にいる人間を
誰が愛しいと思うのだろう

相変わらずそれに許されているといえば
父母の服の裾を掴むこと
喉から唾液を滴らせれば
それは口もなく自らを嘲笑う

ペドフィリア

2008-01-24 | -2008
あまいお菓子に
誘われて
ショートケーキも
おひとついかが?

無垢なこども
愚かなこども
キャンディひとつ
からだのねだん

砂糖のはだにくちづけて
まっかなベリィはとっておき
くるくる回るグミからは
あまいシロップが流れでる

ここへおいで
あまいお菓子をあげるから
かわりにお菓子を
ちょうだいな

ステッキひとつでついてくる
無垢なこども
愚かなこども
夕暮れが過ぎれば帰れないのに

ショートケーキがほしいから
チョコレートをあげようか
からだのねだんはあまい味
なめて溶かして 愚かなお菓子

クソッタレ!

2008-01-23 | -2008
そういやケチのつけ始めは
予定がどんどん埋まったことだ
何もかも悪い方へ
まるで誘われてるみたいじゃないか
そっちにいいものでもあるんだろう
生憎こっちの気分はどん底だ

期待通りの期待外れを並べ立て
それが普通だとでも思ってやがる
確かにご高説の通りだな
普通じゃないのは誰かって
そんなこと今更確認するつもりか

あんたの答えは気に入らない
迂濶にも考えず
結果的にその答えを誘導した自分も気に入らない
鬱陶しい雨が続く
何もかもクソッタレだ

事実がたとえ正しくたって
ご人情には敵いません
絵文字で取り繕うように
あんたらなんてクソッタレだ
どうせ歪んでいるんだと言いたいだろう
否定したことがあったか?
自分に期待しているなどと
思っていると勘違いしていやしないか?
何もかもクソッタレだ
陰惨な雨がだらだらだらだら
止むのを待つ気力もない

無垢な死の使い

2008-01-23 | 狂おしい
眠りに落ちる

さようなら、のこされないこどもたち

死を味わうために

他人をくいものにする

飽食の羊

眠りに落ちる

さようなら、自我は

死を味わいたいらしい

眠りに落ちる

眠りに落ちる

眠りに落ちる

余りに朽ちる

死食のグルメは白い毛をもっている

一種の自傷行為

2008-01-22 | つめたい
情けで二人なのだと言ったとき
私は初めて自分を責めた
訃報が視界を真っ赤に染める

怒りを自分以外の誰に向けることがあるだろう
責任転嫁の末は反対側へ
円の内も外も境界以外は変わらない

愚行を繰り返す
また真っ赤になる時を
心待ちにしているのだろうか