暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

因果応報

2013-04-27 | -2013
望む結果を得られたか

尊厳などは失われた

あとに残るのは苦い味

そして惨めな肉体ひとつ

社会は冷たく暖かく

吹き荒ぶ風も時には優しい

あるのはただただ生きる肉体

死すことも望むこともできず

無慈悲な歯車は回り続ける

いくら望みをかけたところで

相反すれば屑籠へ葬られ

心が折れたと宣うのか

弱者になったと宣うのか

所詮は挫折も均衡に過ぎず

迎合されれば反発し合い

まるでそぐわぬ方程式

それでも冷たく暖かく

未だその手は汚れていまい

尊厳などは失われた

誰しもの手に失われた

それでもお前はまだ、

欲にまみれて望むのか

循環

2013-04-25 | 狂おしい
足首から下
ぼたぼたぼた
口より先
もくもくもく
たくさん食べよう
いっぱい食べるよ
おんなじまちの
いっしょなばしょで

(無機の群は毛の生えた腕を毟り)
(全体を把握する前にそれら全て飛んでいく)
(貪るのだ貪るのだ)
(具象を欠いた絵空事のように)
(擦り合わされる硬質な肉体と)
(迸っては散る油と脂)

こぼれ落ちる砂の塊を
そのまま流せば詰まってしまうよ
ずるずるずると引きずって
たっぷり注いでいただきます
ごちそうさま、
ごちそうさま

(砂の塊を有機は吐き出し)
(銅線の血脈を飲み干すのだ)
(鉄と肉でできた子供達)
(何もかもが共食いだ)
(脳を欠いても腕は生え)
(脳を足しても足は生えない)

くるぶしの先
ぼたぼたぼた
舌より上
もくもくもく
もぐもぐ食べて
ぼたぼた落ちる
いただきますいただきます
たくさん食べたね
お腹がいっぱい
ぼたぼたぼた

Good Luck.

2013-04-23 | かなしい
きみの手を握る気に
ぼくはちっともなれないでいる
きみのことを愛するなんて
嘘をいう気になれないでいる
花の咲くきみの道に
ぼくはきっと外れるだろう

鳥は雲の向こうへ行ってしまったよ
日は山の向こうへ沈んでしまったよ
またやってくるのを待つ気なのか
またのぼるまで待ち続けるのかい

ときどき幸運はやってくる
それはいつもやっては来ない
だから幸運だなんて言葉がある
だのにきみは期待して待ち望んで
そして綺麗な涙をこぼす
(花はいつか枯れてしまう)

きみの滑らかな白い手を
どうしても好きにはなれないから
決して曇らない清らかな目を
どうしても好きだと言えないから
きみはきみの道を行くといい

ぼくは花のない道にする
鳥が隠れた先の道に
日が沈んだ向こう側に
きみはきみの道を行くといい
ぼくはただきみのために
幸運だけを祈っている

理想郷は手招きしてくれない

2013-04-21 | あたたかい
草原を見たいんだ
れんげの花が広がるような
足がすっぽり隠されるような
どこまでもどこまでも続いて
山で地平を切り取った草原を

降った水が染み込んでいく
深くまで降りて水脈に連なり
たくさんの養分を分け与えられた川
そこで泳ぐ魚たちと
魚を求める鳥や獣を見たいんだ

人は同じく獣のはずだ
それなら獣という言葉はなぜ生まれたのだろう
僕たちと称する彼らの中には
獣なんて含まれていやしない

草原を見たいんだ
土など見えないほどに茂った草原を

僕が見たかったものは
むき出された土なんかじゃなかった

人と獣は違うものだと
言葉が確かな堀を作っている
水脈は人にも確かに流れ
汚れていっているなどとは言わない
ただ染み込むことはないだけだ、

君たちの作った硬い土も
僕たちの作った柔らかい布も
必要なのだろう、僕にも君にも
だけれど草原を見たいと言ったのは
そういったものに辟易していただけで

川を泳ぐ魚は小さい
家の隙間を縫う獣もまた
大きなものはたったひとつ
たったのひとつ、浮かんでいる

草原を見たいんだ
無造作な土の山なんかじゃなく

見たかったんだ
叶うことのない熾烈なエデンというものを

恨むよ

2013-04-17 | -2013
跨いで通りなさい
避けて通りなさい
引き返しなさい
立ち止まりなさい

前を見なさい
左右を確認しなさい
後ろもきちんと見なさい

なぜあなたはそんなにも
まっすぐに前だけを見て進むのですか

あなたの歩いた尾を引くように
轢かれたものたちが横たわっているのに

なぜあなたはそんなにも
気にしないで歩いてゆけるのですか

知らぬ存ぜぬで通せるほどに
微細なものとでも言うのですか

無二の親友が轢かれてしまえば
あらぶる義憤を燃やすくせに

土を見なさい
空を仰ぎなさい
水を覗きなさい
火を避けなさい

集まるのはやめなさい
群れるのをやめなさい
一人を恐れるのはやめなさい

眺めた惨劇のその先をさえ
想像もつかないと言うのなら

目から口から血を吐き出した
あなたをきっと眺めるだけ

砕けた足で這いずりまわる
あなたのことを誰かが笑う

名乗り出る勇気さえも持たないならば
なぜあなたはおそれないのですか

懺悔

2013-04-16 | 
私は名もない生き物だった
形すらも、意思すらもなく
ただ気がつけば自我というものがそこにあった

歩くこともできず
ただ粘液のような体をもぞつかせるしかできない私
傍らを走り抜ける小さな生き物を見て
あのように走れたなら速いのだろうと思った

私は取り込む、それを取り込む
本能というものがあるならばその時のことをこそ呼ぶのだろう
小さな毛の生えた生き物はすばしこく
それをよくよく観察するために
私は取り込む、ばきばきと音を立てて
粘液の体で模写でもするかのように

いくつものそれを経て私は人というものを象った
なんと効率の悪い体だろうか
早く走ることもできず
歩くのさえもバランスが要る
それでもなぜ彼らの形を成したのかと問われれば
きっと他の生き物にはないものがあったからだ
私は粘液を押し固めその形を為し、人は私を子供と呼んだ
子供という人はみな一つの場所に押し込められる
私は私と同じ背丈の彼らとともに暮らした

彼らはなんと筋肉を動かすのだろう
複雑に絡み合った筋肉を僅かに動かし
隙間から洩れる音を自在に操る騒がしい彼ら
私はそれを真似ようとした
努力してそれを真似ようとした
なぜか取り込む気持ちは起きなかった
代わりに犬や猫といった
それらをたくさん取り込んだ

先生と呼ばれる人がいた
彼女は私のことを厳しく叱った
私はなぜ叱られるのかはわからなかったが
叱られるというのは心地よくないのだとは思っていた
動物を殺すのはやめなさいと叱った
私には殺すという感覚はわからなかった
ただ人を含めた生き物はとても脆いことは知っていた
私が触れるだけで中の汁を滴らせる子供たち
なぜ彼らはこんなにも脆く生きているのかが不思議だった
なぜ私だけが彼らにそぐわないのかを考えたことはなかった

それでも子供たちと先生は
私を認め、よく笑いかけてきた
笑うという行為はとても難しく
私は一度も笑い返しはしなかった

子供は遊ぶ
大人は子供のために遊ぶ
遊びもまた私にはわからなかった
駆け回り息が上がり疲れ
そして笑う
彼らは遅い足で懸命に走った
遅い足で懸命に追い掛けた
なんと効率の悪い体なのだろう
猫や兎の足になればあっという間なのに
どうして彼らは私のように
姿を変えることがないのだろう

子供は私を鬼と呼び
私は鬼の役割を演じてみせた
子供は私を鬼と呼び
笑うことなく慄き逃げた

私は子供を追いかけた
それが鬼の役割だった
早く走れればいいのだ、犬のように
跳んで捕まえればいいのだ、鳥のように
取り込んだ彼らはとても役に立った
血と肉がまさしく私の中にあった

私は子供を捕まえた
もはや私の頭の中に遊びとしての鬼はなく
ただ、ただ、子供を捕まえた
触れるだけでたやすく傷を負う人は
子供の肌ならなおさら深く沈み込む
抱き込むように捕まえた
形を成そうとさえもせず
取り込むように捕まえた

いくらも音がとんでくる
私は鬼だ、鬼なのだから
彼らを捕まえなければならない
なぜ子供ははしゃぎ笑いながら
追いかけっこなどをするのだろう
なぜ私を見る子供たちは
決して笑うことがないのだろう
決して笑うことがなかったのだろう

いくつもいくつも捕まえた
滴り落ちるなまぐさの汁
いくつもいくつも捕まえた
飛びへばりつく知恵の肉
私は彼らを学習した
学習しようと努めていた
あんなにも笑っていた彼ら
彼らもまた血と肉と骨と糞でできていた
ならば私は
私は何でできているのだろうか

たくさんの子供を捕まえて
鬼の役目を終えた私
役目を終えてしまった私の前に
先生という人がやって来た
いくら理由がわからなくとも
彼女の筋肉は快適からは程遠いと示し
何よりも何よりも
私の為した役割はきっと叱られて然るべきだ
なぜ悪いのかはわからなくとも
叱られるのは決して快いものではない

初めて芽生えた心の隙間
これが喜びであればどれほど
どれほど楽であれただろう
悪いものは隠してしまう、
幼子じみた拙い計略
私は咄嗟にそれを隠した
彼女の視界を覆うことで
何も何にも見ていない
どうかどうか叱らないで
先生は私に笑いかけてくれる
それはなぜだか快い
笑ってくれていればいい
優しく優しく被った手の中
彼女は叱ってもくれなかった

相互通行見切り発進

2013-04-14 | -2013
あなたならこれを言っていい
あなたにはこれを言ってはいけない
何でも言えるのは誰かだけ
その向こう側にいる誰かは
誰にも何も言えないとしても
あなたはとても楽しそうだ
(彼らもとても楽しそうに見える)
ほうと息をついて言う、
あなたといるとどれだけ楽になれるかと
(彼らもとても気楽そうに見える)
言わないという事実
言わなければ事実にならない真実
口をつぐむ彼らは
彼らはとても優しい顔をして慰める
真実は真実で事実は事実
重たい枷などありはしない
少なくともあなたには、
そしてあなたの思う彼らには
すべての棘を取り払って
あらゆる棘をぶつけ合い
それが事実で真実ならば
あなたはなんと恵まれているのだろう
優しい言葉に涙をこぼし
慰めは正当性を裏付ける
そう、あなたは間違っていない
何一つ何一つとして間違ってなど
その向こう側など見えはしない
見えないならばないのと同じ
棘は刺さっても痛くはない
何しろあなたの出した棘
痛がるそぶりのない彼ら
あなたはまたしても安堵をし
笑い、泣いて、棘をなくし、棘を突き刺す
それで世界は成り立っている
(とてもとても辛そうに見える)
死ねば泣いて生きれば笑い、
死さえも知らず生は無価値で
楽しそうに見える
楽しいのだろう
あなたの愛は心から
誰かもまた笑んでこたえる
だからあなたはまた思うのだ
この人がいてよかった
わたしはこの人なくしては生きてはゆけない
なんでも言えるこの人は
どれほどわたしに価値があるかと
それは事実で真実ならば
誰かもきっと楽しいのだろう
(見える、それは何にもならない)
幸せにしあわせにめぐっている
薄氷は割れることがなければ
ずっと氷でい続けるのだから

虚無虚無

2013-04-14 | -2013
突き刺す寒さは心地好く
うだる暑さは肌に合い
生暖かい風が吹き
優しい何かは朽ち果てる

愛を象る胸像は
とうの昔に壊された
冷たい視線が吹きすさぶ
何色でさえない街路

木々はざわめき囁いた
虫も獣も逃げ出したなら
残ったものはまやかしだ
転がるものも何もかも

口に手をあて歯を見せず
道行く人は幸いだ
寒さも暑さも許容のうちと
豊かな水をたっぶり注ぎ

紫色の爪先は
いずれ黒から灰の色へと
まやかしならば還るべきだ
廃墟のように 車のように

尊いかれらは朽ちるだろう
生暖かい風が吹いているなら
残されるべきはまやかしだけだ
みなそれぞれに方舟を選ぶ

爪から朽ちて頭にまわり
それでも見えないはらわたの中
みな幸せに暮らしているのだ
たとえ舟に乗り遅れても

へいわのわ

2013-04-12 | -2013
友達、友達、友達の友達
たくさんたくさん輪が広がっていくね
それはとても楽しいことだね
あれあれよおく見てみたら
ところどころが切れているよ

それならちっとも輪じゃないね
仲良しなんて嘘っぱちだね
誰と誰なら手を繋ぐのかな
誰と誰なら手を離すのかな
組み替えて組み立てて作った輪っかはまるで
古くなったゴムみたいだね

きみたちは楽しそうに話しているね
わたしもそこに混ざったりして
とってもとても楽しいんだよ
友達の友達は友達じゃないんだ
仲良しの仲良しは手を繋げないんだ

ぷつぷつひびが入ったゴムだよ
ばつんと切れたらおしまいなんだ
ぽつねん残ったゴムの切れ端
誰が繋いでくれるのかな
その切れ端だけあまりもの
もうボンドでくっつけちゃったよ残念だね

ところどころが切れているんだよ
楽しそうだね、その楽しい顔は
向こうの人には向けてくれないのかな
わたしはもうたっぷりもらった
仲良しなんて嘘っぱちだね

ひとりぐらし

2013-04-10 | -2013
不在通知が届きました
インターホンは鳴りませんでした
投函されたと思ったら
不在通知が届きました
電話をしてはみたけれど
きっとまた紙切れです

勧誘のお兄さんがやって来ました
何度もインターホンを鳴らされました
居留守で帰ると思ったら
新聞受けから覗かれました
姿は見てないはずだけれど
居留守はきっとばれています

インターホンが鳴りました
請求書の書留でした
インターホンは鳴りません
鳴らしてほしい時に限って

鍵を回して帰ります
鍵を回して出かけます
盗まれるものはありません
宅配は全部受け取りもせず
あるのは請求書留ばかり
出迎えに鍵を開けることも
見送って鍵をかけることも
勧誘を招くことは永遠になく
それ以外で一度たりとも
インターホンは鳴りませんから

携帯電話が鳴りました
それは間違い電話でした