暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

私が有意義であるために

2014-03-15 | 狂おしい
大きなため息をつくのはよくないことだよ
ああほらまたため息をついた
きみのたましいはその度空気に溶けだされるよ
数字もないような唯一無二の
きみはだいぶん削れてしまった

だから大きく息を吸ったね
もう無理、まったく無意味なことだよ
離れてしまったたましいは融解されて
大気のプラズマにかえってしまった
きみはきっと驚くはずだよ
その大きな体に見合わないほど
ちっぽけで粗末なたましいの残滓に

ため息をつくんだね
絶望したとでも言いたげに
最後の一息でたましいはすべて抜けてしまい
あとに残るのはだれかのごちそう
けれどもきみの心臓は動いているよ
血液を送り出したおかげできみの目も開いている
きみはいくつも後悔をする
そうして大きな息を吐く

これ以上汚さないでくれないか
きみの誇りを、大気のきらめきを
どれだけちっぽけになったところで
きみは生きているし死んではいないよ
ただたましいが減っただけだから
苦しければ泣き叫び、楽しければあざ笑う
まだまだ、まだ尽きてはいないよ

どうかため息をつかないで
ぬけがらが欲しいわけじゃないし
抜けて欲しいわけでもないから
もっと大きく、たっぷりと息を吸い込んで
そのままじっと耐えてごらんよ
生きたいと願うきみの体は
そうすればより多くの息を吐き出す

だめだよもっと息を止めて
まだまだきみは生きているから
吸い込んで吸い込んで飲み込んで
瑣末な自分を省みてもいい
きみのたましいは唯一無二だよ
だから最期のため息はもう少し
待ってもらわないと困るんだ

使い古し

2014-03-14 | -2014,2015
前を向いて歩きなさい、
そうして小石につまづいた
自分の足が絡まった
足の裏は刺にまみれ
不器用なわたしをあなたは笑う
地面に這ったわたしの前には
あなたの古びた靴がある
底にはきっと夥しいほどの
刺と土と小石と
名もなき無数の羽や脚が
こびりついているのだろう

わたしの皮膚に毒は埋もれ
優しい熱で神経を焦がす
下を向くのが悪いと言うなら
素足で何をも踏めということ
あなたはやはりわたしを笑う
靴を履けばいいのだと、
踏んでしまえばいいのだと、

真新しい靴を履いて
まっすぐ前を向いて歩く
痛みはないし
小石は勝手に転がっていく
自分の足に絡まることも
あなたはそこでわたしに微笑む
それがおそろしいと思うはしで
わたしの靴は汚れていく

駆け回る、踏みしめる、
腐った肉をつぶしながら
ずいぶん昔に刺さった刺は
まだ皮膚の裏側に残っている
けれど神経はすでに燃え尽き
どうしてかつま先がひどく冷たい
冷たくて、歩いていられない