暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

依存

2009-08-31 | 心から
私を一人にしないでと
昔に言った私は死んだ
悲しいと泣くより利己で泣く
それは今も変わらないけど
今立っているのは多分
一人にしてはならないと思わせる人間ではない

山はいつしか谷になり
川はいつしかダムになる
そうして私は変わっていった
知らぬ間に けれど
気がつけば最初の骸を見るほどに
脱皮して綺麗になるのは虫の世界で
脱皮すればするほど
私は醜く削れていく
それでも一人にしないでと泣く
自分の愚かさがかわいそうで泣く

どうか私を一人にしないで
できればずっと寄り添っていて
置いていかないで
昔に言った私の残骸は
ヘドロにまみれた汽水の底
もう私を一人にして
脱皮するのはかまわなくても
醜い体と縋る心は
もう誰にだって必要ではないから

sleeper

2009-08-17 | 
誰も目覚めない朝に目覚め
太陽の照り返す坂を少しずつ下る
たとえ歩く気さえ起こらなくとも
誰一人として親切を教えることはない
日増しに減っていく野菜をもぎとるが
肉はもはや液体に成り果てた
鶏も豚も牛たちも
得体の知れない夢を見ているのか
夕暮れまで川に沈む魚たちを眺め
山の向こうを一度だけ見やる
私には住処を離れるだけの
勇気も利益もありはしないのだと
野菜をかじりながらまた坂をのぼり
日が沈めばまた眠る
今度こそ目覚めることがないようにと
体に鈍い祈りをささげながら

自尊心

2009-08-14 | 心から
誰かにお前は負け犬だと
断じて私に気付かせてほしい
悟るまでには成熟は遠く
予感をかすかに感じるほどの
馬鹿だとわからぬこともない
私の尻を蹴り上げて
保健所にでも無理やりにでも
私は知らねばわかりやしない
無能だ無知だと罵られれば
愚かな枷は緩くなる
けれども負け犬たるこの私は
首輪をぎちりとはめられて
舞わねばならない闘犬一匹
明日も明後日、しあさってでも
休めど望まれる闘う犬ころ
少なくともお前に希望など
寄せる者がどこにいると
首輪を引きちぎれたなら
私は犬に 負け犬に
なることもあるのだろうか

理解する

2009-08-14 | -2009
一を知るなら二も知るだろう、
そうしてあなたは間違いを犯す。
一を知れども百なら知らぬ、
それならあなたにもわかるであろうに、
ひとつひとつの段を数え、
数とは連なる一つであっても、
あなたに百はわかりますまい。
あなたの求める十だとて、
あなた以外にわかりはすまい。
おのれが段をのぼろうとも、
となりにだれかがいようとも、
あなたののぼる段を知らねば、
求めるひとはともにはいない。
一を知れば二をも知れよう。
手を引きともにのぼらねば、
あなたの十などわかりはしない。
段をのぼり百に着けば、
おそらく無量もあるだろう。
あなたに無量があるのならば、
かれにも無量があるのだろう。
一を知るなら二も知るだろう、
ならば三はどうであろうか。

寒気

2009-08-11 | 自動筆記
筒の向こうを覗き込む
羞恥を含んだ後悔の綿を両頬に詰め
紙に覆われればなかったことになると
円に移る風景にはあこがれた

みずから門を通り抜けた
鍵などかかってはいない密室で
一方的な隣人をうかがう
あこがれは薄い膜の外
成熟しても破れはしない
呼吸をわすれ 隔たりを想う

(以下編集)

2009-08-09 | -2009
深呼吸をして
息をずっとし続けて
肺の動きを止めないで
煙は深く吸い込んで
青い筋を消えるまで眺めて

眠らないで
考えることをやめて
考えることをやめないで
今見えることの処理をして
楽観的に前を見て
現実的な遠くを見据えて
小さくでも声を発して

死なないで
与えることを忘れないで
きれいにし続けて
ただ生きるだけにはしないで
おびえないで
おびえさせないで
きれいでい続けて

喉をふるわせて
たましいがしぼれるほど叫んで
満足はしないで
葛藤し続けて
つぶして
殺さないで

望まないで
望み続けて
苦しまないで
苦しんでいて
動悸を忘れて
決して忘れないで
笑っていて
鏡を見ないで
見ようともせずに
生き続けないで

2009-08-09 | 暗い
わたしの中の脂肪分が
ぐずぐずにとろけていっている
けれど肌は固くなる
せみよりうるさい機械の音で
からだの軋みは隠れている

暗い部屋に横たわり
じっとりと汗をしみつかせる
すぐそこまで来ているかげろうに
挨拶をする気にもならない