暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

心に残る罵倒の数々

2017-05-28 | 暗い
ぼくはたとえば人形のようだと
あざけるひとがいた
それはあながちまちがいでもなく
きみとて人形にちがいなかろうと
ぼくはあざけりかえしてやった

そんなぼくのことだから
友達なんてひとりとしておらず
それゆえさらにあざけるひとへ
そうさ友達などいないと
へいきなかおでいってやった

するとぼくのかおをみて
ないてわめくものがいるのだ
そのばはきみょうにこおりつき
おまえに人の心はないのかと
くちぐちにぼくはののしられる

(夜、チクタクと音が聞こえる、
脳髄に潜む花から聞こえてくるのだろう、
鼻を啜るのは糸を切ろうとするからだ、
目を濡らすのも糸を切ろうとするからだ)

ぼくはたとえば人形のようだ
ぼくにうらぎられた友達をみても
ぼくのくちはうごきやしない
よもやまさに人の心はないのかと
はやがねをうつむねをまさぐる

きみたちだって人形のようなものだ
おたがいにおたがいのふしぶしへ糸はつながり
うごけばとなりもみぎならえ
かたかたしゃべればみんなもしゃべる
つながりからまったあやつり人形

なかないでおくれ友達よ
そういったならまんぞくするかい
人形のぼくはむねをつかむ
だれもぼくのまねなどすることもない
糸はどこにもつながっていない

原点回帰

2017-05-22 | -2016,2017
わたしはにんげんになりたかったのです。
当たり前に日々を暮らし、
他愛もない話に興じ、
色恋沙汰に心をうわつかせ、
仕事をきちんとこなすような、
あたりまえのにんげんになりたかったのです。

そのためには今のままではいけないと感じました。
尽きない泥を掬っては壁に投げつけている、
心を疲弊させては喘ぐ今のままでは。
わたしにはにんげんたる資格がない、
精一杯な日常をいとなめるような、
創作にのめりこむあまり食事もろくに摂らず、
痩せこけながら、妄想をとりつかせながら、
呪いをかけた心のままではいけないと。

休むこともせず、勤勉にはたらき、
人の会話をすこやかに聞き、
すべてを肯定して生きるのだ。
そのためには創作を、
ある程度捨てる必要がありました。

わたしはにんげんになれているのでしょうか。
何をもってしてにんげんであるのか、
わたしにはいまなおわからないのです。
ときどき、わたしの称するかれらにんげんが、
おぞましい怪物に見えるのです。
わたしはこれになりたかったのでしょうか。
吐きそうになりながら会話を聞いています。
にこにこと笑いながら、おそれおののいています。
当たり前に日常を過ごしていても、
非日常にばかりのめり込んでいることに気付きます。

わたしは怪物になりたかったのではない、
人間になりたかった。
かれらもまちがいなくにんげんであるはず。
だけれど、わたしは、
わたしのなかの人間とを履き違えていたことに、
あまりに遅く気付きました。

ひとを最初からばかにするような、
特徴だけで善悪を決めてかかるような、
そのようなひとたちをにんげんとするならば、
わたしはきっと一生、かれらにとってかいぶつに見えるのかもしれません。

わたしは人間になりたかったのです。
ことばは、わたしを、人間にしてくれる。
あるいは、わたしが、かいぶつになりたがっている。
わたしは、人間になりたいのです。

入ってこないでください

2017-05-22 | かなしい
日々の語らい
何気ない笑顔、

わたしが笑えば
きみも笑うだろう

夕暮れどきに鳴くカラス、
遠くで聞こえる喧騒の音、

低く震えるこの鼓膜を
いっそやぶってしまいたいのだ

おいしそうな匂いをのぼらせ
温かな飯を食らう、

しあわせを知覚するには
鼻がつんと沁みている

せせらぐ川を眺めるうち
わたしはいつも水底にいる

高らかな高らかないとなみの声は
幾重も鼓膜を震わせる

ちらつくひとびとの残像は
魚のきらめきよりまぶしく見える

わたしがつまずけば
きみはどのような顔を、

子どもたちを食べる家々
目を覚ますちいさな虫たち、

わたしは水面の向こうから
きみの笑顔を見ていよう

正夢

2017-05-14 | 
悪魔の夢を見た
わたしの願いを叶えておくれ
他の何をも犠牲にしても
どうか願いを叶えておくれ

ああそう、そんなのお安い御用
ただしおまえの命をもらう
魂、肉体、皮膚一枚まで
解ける前に成就の時を
解ける前に見せてやろう

ぽろぽろと解け滅びていくかれの頬をそっと覆い
悪魔は願いの末路を見せてくる
浮かべた涙が落ちる前に
かれは空気に解けていくのだ

腹いっぱいの悪魔が何度も
何度も誰かに呼び出され
何度も願いを叶えてやる
かのものの呪いが腹に溜まり
ときどき悪魔も身を滅ぼしながら
ますます強くなっていく

最後の夢は私の夢
生成と崩壊を繰り返しながら
数多の死者の上に彼は立つ
おまえの望みは聞いてやった、
私の足元にも幾多の死骸
生まれそこねた退治の死骸が
折り重なって潰れている
滅びたかれらの願いと同じ数の
願いが確かに潰えたのだ