暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

背骨

2023-04-24 | 狂おしい
苦しむあなたが愛らしい
痛みからどうにか逃れようと
もがくあなたはいじらしい
だから私はあなたが好きだ
悶え苦しみのたうち回る
あなたの背中を押さえつけて
背骨を丸々抜いてやりたい
まるく開いたまぶたのふちから
次から次へと涙をこぼし
それでもあなたは抵抗を見せるのだろう
何と、何と、何と愛おしい姿
(私は決してあなたを傷つけたいわけではないのです。あなたを守りたい。ありとあらゆる苦痛のすべてからあなたを遠ざけたい。あなたの幸福を心から願っています。あなたは幸福でなければならない。あなたの幸福こそが私の世界に平穏をもたらし、私はあなたの幸福なくしてはこの世にいられず、私の生存意義は即ちあなたの生存と同義なのです。私はあなたの幸福を祈っています。あなたを傷つける者は誰一人として存在してはならないのです。けれども、私は矮小で、無力で、あなたより遥かに無価値な人間です。あなたは数多くの人によって傷つけられている、そして、あなたはその優しさのせいでいつもいつも血を流しては苦しんでいます。わたしはそんなあなたがすきです。あいしています。こころから
いかに傷つこうとも苦しもうとも
暴れるのを止めないあなたが好きだ
だからあなたが苦しむ姿は愛らしい
背骨を抜いても手足を動かし
舌を抜いても絶叫し
目をくり抜いても見るのをやめず
切り刻んでもあなたはあなたであり続ける
無駄な抵抗と知りながらも
知らぬ振りをするあなたがたまらない
何と、何と、何と愛おしい生き物
(私を憎悪してください。私を殺してください。私を殺すための腕を折り、爪を剥いで、肉の袋にしてしまいましたが、それでもあなたはあなたであり続けるのです。だからあなたはきっといつか私に復讐を果たすと信じています。あなたを愛しています。私は心からあなたを愛し続けています。憎悪されても構わないと思える程に。あなたの幸福が、私への憎悪によって果たされることこそが、私にとって何よりの幸いなのです。矮小で、無力で、無価値な私が与えることのできる、たった一つの幸福の手段を、どうか受け取ってくれませんか。ありとあらゆるものから虐げられたあなたの苦痛を、私はひとつたりとも消すことができなかったのです。だから私はあなたがこれまでに受けてきた苦痛のすべてを上回るそれをあなたに与えました。私を憎悪してください。どうかどうかどうか私を断罪してください。そうしてあなたは幸福になってください。もいだ手足も背骨も全部大事にしまってあります。私の死体を隠す場所も用意しました。叫んでください。噛み付いてください。私にはあなたの幸福が必要です。あなたの幸福以外には何も要らないのです。私を殺し、憎み、そしていつの日かほんとうの幸福を手にした時、どうか私を忘れてください。)
私は
私はあなたの幸福を祈っている
あなたの幸福を
私は
祈っている