●【郵便不正公判】「凛の会」元会長の一部無罪で検察側が控訴
産経 2010.5.10 11:49
障害者団体向け割引郵便制度をめぐり、厚生労働省に偽の障害者団体証明書を発行させるなどしたとして虚偽有印公文書作成・同行使罪などに問われ、大阪地裁で一部無罪とされた障害者団体「凛(りん)の会」元会長、倉沢邦夫被告(74)について、大阪地検は10日、判決を不服として大阪高裁に控訴した。
事件をめぐっては厚労省元局長、村木厚子被告(54)=公判中=が全面無罪を主張。共犯とされた同会発起人、河野克史被告(69)に対する判決公判は11日に大阪地裁で開かれる。
●障害者郵便割引不正:「凜の会」発起人に有罪 元局長の関与触れず--大阪地裁判決
毎日新聞 2010年5月12日
障害者団体への郵便料金割引制度を悪用した郵便不正事件で、偽証明書作成に関与したとして虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた障害者団体「凜(りん)の会」(解散)の発起人、河野克史(こうのただし)被告(69)の判決が11日、大阪地裁であった。横田信之裁判長は「事件の中心人物で刑事責任は重い」として懲役1年6月、偽証明書の没収(求刑・同)、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
判決によると河野被告は、同会代表、倉沢邦夫(74)=同罪で無罪判決、検察側控訴▽厚生労働省元局長、村木厚子(54)▽同省元係長、上村勉(40)の3被告と共謀。04年2月、倉沢被告を通じて村木被告に、凜の会を障害者団体と認定する証明書作成の便宜を依頼。同年6月には上村被告に催促し、村木被告の指示の下、証明書を作成させた。
横田裁判長は「倉沢被告に国会議員への口利き依頼を指示し、上村被告に催促するなど、事件に対する寄与の度合いが大きい」と述べ、河野被告を郵便不正・偽証明書事件の中心人物と認定した。
虚偽有印公文書作成・同行使罪は作成権限を持つ公務員を処罰する「身分犯」で、権限があるのは当時課長だった村木被告。そのため判決で村木被告が無関係と判断されれば、河野被告には身分犯ではない公文書偽造罪が適用される可能性があった。しかし判決は村木被告の関与について具体的に言及しないまま、起訴内容を認める河野被告を「身分なき共犯」と判断した。
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河野被告は判決後、大阪市北区で会見し、「事件の発端を作った私の責任は重い。関係者や社会に何度でも謝罪したい」と神妙な表情で話した。ただ村木被告については「個人的な意見だが、村木被告の公判の様子を見て、事件にかかわっていないと感じた」と無罪との感想を述べた。【日野行介】
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■解説
◇起訴内容争わず、他と異なる判決
郵便不正事件で起訴された4被告のうち2人の判決が有罪と無罪に分かれた。同じ凜の会幹部の2人が同じ罪に問われながら異なった判決となったのは、分離裁判で審理内容や証拠が違うためだ。裁判に提出された証拠のみによって有罪、無罪を判断する刑事裁判のルールによる。
4月27日の倉沢被告に対する判決は「便宜を依頼したという倉沢被告の供述調書は不自然」として、村木被告との共謀を否定した。一方、今回の河野被告の判決は被告が起訴内容を争わず捜査段階の供述調書もすべて同意していることから、起訴事実を認定する中で村木被告との共謀も認めた。ただ、村木被告の具体的な関与については言及がなかった。
今回の事件は、一貫して無罪を主張する厚労省キャリア官僚の村木被告が、偽証明書作成に関与したかどうかが最大の焦点だ。村木被告の弁護人は河野被告の有罪判決に「証拠の違いから結論が異なるのは当然」とコメントした。村木被告の公判では、出廷した証人が相次いで捜査段階の供述調書を覆し、村木被告の関与を否定している。【日野行介】
●障害者郵便割引不正:「凜の会」発起人、河野被告が控訴 2審で無罪主張へ
毎日新聞 2010年5月22日
郵便料金割引制度を悪用した郵便不正事件で、偽証明書作成に関与したとして虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われ、1審・大阪地裁で有罪判決を言い渡された障害者団体「凜(りん)の会」(解散)発起人、河野克史(ただし)被告(69)の弁護側が21日、大阪高裁に控訴した。
河野被告は1審で起訴内容を認めたが、2審では一転、無罪を主張する見通し。河野被告が無罪主張に転じると、同事件で起訴された4人全員が、村木被告の共謀を否定する立場になり、調書の信用性がさらに問われそうだ。【日野行介】 |