T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

1560話 [ 「下町ロケット・ゴースト」の大要 3/3 ] 9/30・日曜(雨)

2018-09-29 08:53:40 | 読書

「下町ロケット・ゴースト」の大要

「第八章 記憶の構造」

-1-(特許侵害の訴状が届く。伊丹は社員に現状を説明する)

 訴状の内容は、これまでの交渉で先方が主張してきたものと同様であった。

 伊丹と島津は、佃に連絡し、神谷弁護士に裁判の代理人になってもらうようにお願いするために、佃を訪ねることにした。

 その後、島津は、社員に事情を話し、最初に佃製作所が力を貸してくれる申し出をもらっていると説明した。島津は、『最初の候補』の話だけして、後がないことが気になった。

-2-(訴訟に勝つための手段は論文)

 3階の技術開発部に入った佃は、立花からギアゴーストの件、その後どうなったか質問された。

 訴状が届いたらしいが、伊丹らは神谷先生に頼みたいと言っている。

 勝ち目はあるのかと問われ、勝ち目は全くないわけでなく、それは或る論文だと答える。

-3-(神谷はギアゴーストの代理人を引き受ける)

 佃製作所を伊丹と島津が訪れたすぐ後に、神谷も社長室に入ってきた。

 神谷は、伊丹の謝罪に、別に気にしていないと言って早速に質問した。

「末長弁護士とは、どうなさるのか」と。

 伊丹と島津は、「顧問契約は打ち切ります。神谷先生に弊社の代理人をお願いします」と頭を下げる。

 あたしは負ける裁判はやりません。ところで先日、島津さんは問題の副変速機について、『以前から知られている技術の応用だと解釈していた』と言われたが、それは何故でしょうかと尋ねる。

 島津が返答に窮すると、神谷は一通の書類をカバンから出して島津の前に広げた。

「これが、その理由でしょう。この論文は佃さんが東京技術大学発行の論文集から見つけたもので、島津さんが在籍されていた頃の大学院生が書かれた論文です」

 驚く島津に、神谷は、これで勝つ見込みがついたので、代理人を引き受けることにしましたと言う。

-4-(中川と末長の裏話)

「そろそろ訴状が到着している頃だと思うが、伊丹社長からは何も………」

 中川から言われて、末長は酌の手を止め目た。ここは赤坂にある和食の店である。

 末長が表情を曇らせ、口にしたのは、先日、伊丹から中川との関係を問われた件である。

「何か気取られることを言われたのではないですか」と言われて、末長は首を振った。

 司法試験合格同期の中川から、いい儲け話があると誘われて、末長は3億円で顧問契約をしているギアゴーストの開発情報を漏洩したのである。

 中川の計画は周到であった。ケーマシナリーに技術情報を流して特許で先行させ、その後、特許侵害で訴える法廷戦略だ。そして、ギアゴーストを窮地に追い込んだところで、ダイダロスの買収案を提示する。15億円ものライセンス料を要求しているが、多くが弁護士費用やコンサルタント料として中川とダイダロスに還流する取り決めができているのだ。

 末長のところにギアゴーストの伊丹から連絡があったのは、その2日後のことであった。

-5-(末長との顧問契約解除。

  島津は、末長から中川への開発情報提供通話を手に入れる)

 伊丹と島津は末長の事務所へ出かけ、訴状が着いたことを告げる。

 そして、末長との顧問契約を今月をもって打ち切らせてもらい、あとは神谷修一氏に訴訟の代理人をお願いすることを告げた。

 その後、末長先生は中川先生と仲がいいのですねと言って、カバンの中から末長と中川が並んで写真を撮り対談している雑誌のコピーをテーブルに投げて外へ出た。

 末長は急ぎスマホを出して中川に通話した。

「ギアゴーストとの顧問契約を打ち切られた。あんたとの関係がばれた。大丈夫だろうな」と。

 大丈夫って何がですという中川に、

「情報提供の件、洩れたりしないだろうな」と叫ぶ。

 そのとき、ドアにノックがあり、秘書と島津が入ってきた。

 島津は、さっきまで自分が座っていた椅子の足元とから小さなトートバックを取り上げた。

 もう二度と来ませんからと出て行く島津に、末長は唖然として見送った。

-6-(父子相互の情愛、300年続く農家の絆)

 2月頃は今年も田んぼやるかと言っていた父が、四月に帰ると、半病人では米作りは無理だ、農業法人の話を考えたいと言う。

 たしかに、人間なら誰もが限界を迎える年頃だ、しかし、そうした人間の摂理を親子の絆で守り続けてきたのが、殿村家の300年だったのではないか。それにピリオドを打ってしまっていいのか―――殿村の胸に葛藤が渦巻いた。

-7-(帝国重工での伊丹の退職経緯)

 昨日、重田から伊丹に、先日の続きを話したいとの連絡があった。伊丹は大崎駅近くのダイダロスの本社へ出向いた。

 重田は、「今日は先日の件の続きでなく、かって、あんたは、プライドをずたずたにされて帝国重工を追い出された。自分を追い出した連中を見返してやりたいと思っているだろう」と言った。

 重田の言葉に、伊丹の脳裏にかっての記憶が急速に蘇ってきた。

 的場は、重田工業との取引を中止した後も、なお収益を上げろと檄を飛ばした。

 伊丹は、『機械事業部のサプライチェーンに関する考察と提案』という企画書を提出した。このキモとなるのは、旧態依然とした取引先会の解散と、取引の抜本的見直しだ。

 企画書を見た上司の超保守的な照井事業計画課長は拒絶反応を示した。その後で開かれた企画を審議する課長会でも全面的に否定された。的場部長も、どうしたわけか閲覧印とともに「見送り」と赤で大書してコメントもなく戻してきた。

 その後、伊丹に総務部への辞令が出て、総務の課長からも、「君、終身刑だから復帰は期待するな。恨むなら、照井を恨め」と言われた。また、「ここ、帝国重工の墓場だから」という声も聞こえてきた。

-8-(伊丹がスケープゴートになった真相)

 重田は、重田工業が倒産した後の帝国重工機械事業部の動きについて話し出した。

 的場は聖域なき改革を断行したつもりらしいが、そのやり方に反発する上層部もいた。さらに決定的にしたのは、東京経済新聞の記事で帝国重工の批判が巻き起こった。帝国重工としてはイメージダウンである。

 的場は上層部におもねる形で、抜本的改革の鞘を収めて、伊丹の企画書を課長たちに命じて徹底的に批判させ、さらにあんたを事業部から外に出す決断をして、間違った改革の象徴として、あんたをスケープゴートに仕立てた。

 的場は取引中止にする代わりにコスト削減の下請け叩きを徹底した。

 オレは、あんたを恨んでいない。あんたもまた被害者だということを知っているからだ。的場という悪党に騙され、踊らされ、用済みとなった途端、打ち捨てられた同じ被害者だよ。もし、あんたが的場を見返してやろうと思うなら、オレ組むことだ。オレはあんたと一緒に戦おうと思って出資を提案したんだ。

 重田は、それだけ言って立ち上がり、もうこれ以上、余計な勧誘をする気はないと言って別れた。

 

「最終章 青春の軌道」

-1-(第一回口頭弁論期日の前日の佃製作所とギアゴースト)

 第一回口頭弁論期日を翌日に控えたその晩、佃は、山崎と殿村に声をかけて、近くの居酒屋でささやかな決起集会を開いた。

 佃は、「裁判に勝っても負けても、ウチは前進する。みんな力を貸してくれ」と言って、山崎と殿村は大きく頷く。しかし、殿村の表情を過(よぎ)っていった一抹の揺れに佃は気づかなかった。

 一方、ギアゴーストの伊丹と島津は、裁判の後の動向に、島津は佃と一緒に仕事したいと言うが、伊丹は重田のことを内緒にしているので無言であった。

-2-(殿村は佃製作所を辞める決心をする)

 佃から誘われた決起集会は、殿村の心のどこかに消せない苦しみを残していた。

 先週の日曜日のことである。

 殿村が田植を終えて農道に出ると、足下に杖を置いた父親が静かに長い合掌をしているのを目にした。それは豊穣を願って、そして、過去300年、殿村家に実りをもたらしてくれた田んぼへの感謝の気持ちの長い祈祷と見た。

 そのとき、殿村の胸底から湧出した感情が、抗い難い奔流となって胸を衝いた。

オレは、この場所に戻ってくるべきだ」と決意した

-3-(裁判は神谷が勝つ)

 被告代理人の神谷は裁判長の許可をもらって、答弁書のうちの争点となる部分を読み上げた。

「被告ギアゴーストは、原告ケーマシナリーが侵害を主張する当該特許について、無効を主張し、乙第一号証を提出する」

 神谷の陳述が続いた。「乙第一号証は、東京技術大学栗田章吾准教授が2004年に発表された論文『CVTにおける小型プーリーの性能最適化』です。栗田先生に話を聞いたところによると、先生はクルマ社会の技術的発展のために敢えて特許申請を見送られました。従いまして、この論文で発表された技術情報は公共の益に帰するべくして公開されたものであり、根幹部分の多くをこの特許に負っている原告側特許は無効であると主張するものであります」 その後も、神谷の陳述は続く。

「………。ギアゴースト製副変速機は、乙第一号証論文で発表された構造と技術に、同社独自の解釈とノウハウにより修正を加えたものですが、その修正部分にまで原告側特許が及んでいるのは、極めて不自然な偶然だと言わざるを得ません。ひとつだけ納得できる解釈があるとすれば、ギアゴースト内部からの技術情報の不正な流出であり、その傍証として、この乙第二号証を提出するものです」

 そう言って、神谷が高々とと掲げたものは、ICレコーダーであった。

「いまから3週間ほど前、ギアゴーストの伊丹社長と島津副社長は、末長弁護士のもとを訪れ、本件について相談をいたしました。その際、被告はやりとりの一部始終をICレコーダーに録音しておりまして、それを置き忘れて10分近い後、取りに戻りました。これは、その時に偶然録音された末長弁護士とある人物との会話です。重要なところですので、聴いていただいてよろしいでしょうか。ほんの数分で終わります

 裁判長の許しが出て、スピーカーから末長弁護士とある人物の声が流れた。

 ―――ギアゴーストの件ですが、よろしいか中川先生。

 ―――………。

 ―――私から情報提供した件、絶対に漏れないよう、お願いしますよ。

    買収が決まったら、約束の成功報酬もらうからな。

「乙第四号証は、末長弁護士からこの録音テープの声は、自分のものだとの確認書です。

いずれにしても不正な手段によるものを証明するものです」

 ………。

「原告代理人、いまの指摘についてどうですか」

 裁判長の問いに、「次回までに回答いたします」と、顔面蒼白になった中川はそういうのがやっとであった。

-4-(勝訴となった2社)

「特許無効」の勝訴判決が言い渡されたのは、10月最初の金曜の午後のことだった

 裁判は原告側の点論の余地のないままわずか半年で判決が出た。

 判決に先立ち、一昨日には、末長孝明と中川京一のふたりが不正競争防止法違反の疑いで逮捕されている。

 その夕方、佃製作所の会議室ではささやかな祝勝会が開かれた。

 昨年6月末に、新型エンジンの採用を中止され、トランスミッションメーカーを目指しての経営戦略を進めてから1年半近い

 ギアゴーストと佃製作所。一緒に戦った2社にとって、今回のことは名実ともにパートナーとして共存共栄していく貴重な一歩になる―――はずであった

-5-(ギアゴーストの分裂)

 ギアゴーストの祝勝会が開かれた。

 島津は、仕事があって二次会の終わり近くに会社に戻ってきた。

 暫くすると、伊丹も現れ、「シマちゃんに話したいことがある」と近くの椅子に座った。

 伊丹は重田登志行社長から聞かされたスケープゴートの話をしだした。

 オレを裏切ったのは、照井課長でなく、的場部長で、完全に捨て駒にされたのだと。

 島津が、「昔の話でしょ。私たちの仕事はこれから始まるのよ」と言うが、伊丹はきっちりと片を付けると呟き、「重田さんと一緒にやる。ダイダロスの資本を受け入れ、業務も提携するんだ。そして的場に復讐するのだ」と言う。

 ………。

「たしかに、佃製作所には世話になった。だけどそれはそれ、これはこれだ。このことはもう決めたことだ」

 島津が、「共同経営者の意見を無視して、なんで一人で決めるの」島津は声を荒げた。

 伊丹は、「いやならいいよ。シマちゃんはもう—――必要ない」と言う。

 島津は凍り付き、すっと言葉を呑んだまま、伊丹を見つめることしかできなかった。

-6-(財前は帝国重工の中の農業分野?に転任する)

 快晴の種子島に、3月の風が吹いている

 準天頂衛星「ヤタガラス」7号機が発射のときを待っている。

 財前は、この打ち上げを最後に、ここの現場を去ることに決まっている。

「メインエンジンスタート」

 抑制された財前の声が聞こえた。

 ヤタガラスはみるみる小さくなっていき視界から消えた。

 佃と財前は握手を交わす。

 ………。

 財前最後のスピーチも終わろうとしている。

「………。私は今回の打ち上げをもって任務を終了し、宇宙航空企画推進グループへ転任します。これからの私の仕事は、我々の背生活にとってロケットがいかに重要で必要なものなのか、ある種の布教活動です。夢の続きを見るための地ならしのようなものです。そのために私が第一弾としてぶち上げるのは農業です。私は―――危機にあるこの国の農業を救いたい」

 なんで農業なんだとの呟きが聞こえる。しかし、佃は武者震いを感じないではいられなかった。

 佃は、花束を掲げながら消えて行く財前に小さな声で言った。「しばしの別れだ」

-7-(佃製作所で学んだことを無駄にせず農業に邁進すると殿村は辞職する)

-8-(島津はギアゴーストを退社し、佃にお詫びして姿を消す)

 ギアゴーストの島津から、佃のもとに電話がかかってきたのは、4月 半ばのことであった

 勝訴の後、佃のところに伊丹ひとりが裁判でお世話になった御礼に来たが、そのときは裁判のことだけで一遍の挨拶だけで引き上げた。

 そういえば、そろそろヤマタニが次期トラクターの仕様を決め、ギアゴースト製のトランスミッションの搭載を決める頃だ。佃は、それに関わるバルブの話に来たのだろうと期待していた。だが、違っていた。

 島津はお詫びに参りましたと切り出し、「昨日、ギアゴーストは、ダイダロスと資本提携を結び、お互いに資本を持ち合い、今後、両社は企画、製造、そして営業活動において協力していく旨の契約を締結しました」と告げた。

「なんですって」と、あまりのことに佃は動揺し返す言葉を失った。

 ………。

 どうして、そんなになったのかと尋ねる佃に、島津は、「伊丹は過去のしがらみから抜け出すことはできませんでした」と経緯を口にし始めた。

 それは、若者たちの青春、その挑戦と挫折の物語でもあった。

 苦悩に満ちた表情で島津は佃に訴えた。

「私たちの気持はいつの間にか離れ離れになっていました。伊丹には伊丹の道があるのでしょう。その道を私は一緒に歩むことはできません」

 そう言うと、真っすぐに佃の方に顔を向けて、「本日、私はギアゴーストを退社しました。短い間でしたが、大変お世話になりました」と言って佃の前から去って行った。

 佃は、暮れかかった坂道を遠ざかるその姿を眺めていた。

     「終」

[「下町ロケット・ゴースト」は1年10月にわたる企業小説だったが、次の「下町ロケット・ヤタガラス」においても、ダイダロス&ギアゴーストと戦いながら、佃製作所は農機具用の変速機のバルブの開発に、財前も農業器具の開発に、殿村は農業にと、いずれも同じ゚方向に邁進するものと思われる]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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1559話 [ 「下町ロケット・ゴースト」大要 2/3 ] 9/27・木曜(曇・晴)

2018-09-26 19:37:25 | 読書

「下町ロケット・ゴースト」の大要

「第五章 ギアゴースト」

-1-(バルブコンペは佃の勝利。トランスミッション戦略の第一歩を踏み出した)

 ギアゴーストの依頼を受けて、モーター科研が佃のバルブに良好との評価結果をつけて返送されたのは、年が明けた1月のことだった。

 ギアゴーストの担当者が大森と佃の評価結果と所見書を島津に提出した。

 バルブコンペは、島津が社長室に入って10分もかからず佃製作所に決まった

 大森バルブは、ハイスペックのためコストが高い。

 島津は、「佃製作所のは細部への作りが凄くいきとどいている。素材も相当厳選している。重量や燃料への影響、それにコスト。全部計算しつくした上で、ウチのトランスミッションとのベストマッチを狙ってきた。これは実は見かけ以上にすごいバルブだよ」と部下に教える。

 佃製作所内では、朗報を受け、軽部が「お前らと一緒に仕事ができて、まあなんて言うか―――楽しかったぜ」と思いがけないひと言を立花とアキに投げる。そして、「ふたりを連れて社長のところへ行ってきます」と山崎に言って歩き出した。

-2-(コンペに負けた大森バルブが、ギアゴーストとの取引停止の通告を出す)

 コンペに負けた大森バルブの営業部長は、自社の知財部長の尾高仁史から、ギアゴーストが特許侵害で潰れるかもしれないとの情報を得る。

 損害を少なくするため、大森バルブのほうから、ギアゴーストへの供給は契約期日で打ち切ることの事前通告を出すことにした。

-3-(ケーマシナリーの代理人から内容証明郵便が届き、顧問弁護士のところへ)

 トランスミッションメーカーのケーマシナリーから、特許侵害をしていると指摘され、代理人の弁護士・中川京一らの差出名で内容証明の郵便がギアゴーストに続く

 伊丹と島津は顧問弁護士の末長弁護士のところへ向かう。

-4-(伊丹と島津は末長弁護士を訪ねる)

 内容証明の中味は、御社が製造するトランスミッション「T2」を構成する副変速機はケーマシナリーが取得している特許を侵害しているので、当該副変速機の製造及び搭載の中止を要請するものです。と同時に、本件侵害について経済的な対応を要請するものです。

 島津が説明する設計書や特許公報を見た末長の考えは、侵害していることは間違いないので、裁判では勝てる見込みはなく、特許実施料の支払い交渉になるでしょうとのことで、週明けに相手代理人とのアポを取った

-5-(代理人・中川はライセンス料15億円を要求する)

 中川弁護士は計算書を見せてライセンス料は合計で15億円になると示し、ケーマシナリーは今まで減額するなど譲歩したことはありませんと厳しい言葉で要求する。そして、侵害したのは御社であることを忘れず、検討し返事してくださいと言う。

 事務所を出た末長は、「ケーマシナリーの目的はギアゴーストを潰すことだから、何とか資金調達してここを凌ぐことです」と言う。

-6-(伊丹は会社を生かすために出資者を探す)

 翌日、伊丹は島津に交渉の結果を報告し、「出資者を見つけてどこかの傘下に入るしかない。その場合、社員の雇用の維持だけは条件にしたい」と言う。

 とにかく、この会社を生かすために、出資者を探し出すと決意を示した。

-7-(敵と味方と思っていた、ふたりの弁護士の前祝)

 銀座の有名なイタリアンの奥まった個室。

 招かれた弁護士と中川弁護士は白ワインで乾杯した。

 招かれた男が、ベンチャーキャピタルで断られ、M&Aの仲介業者に難しいと言われ、取引先の大森バルブにも断られているとのことだと言う。

 勝負あったというところかなと前祝の乾杯をする。

-8-(ヤマタニの入間が、伊丹に出資者として佃を紹介する)

 伊丹は入間に、「ケーマシナリーから特許侵害を指摘され、15億円のライセンス料を要求されている。ヤマタニさん弊社への出資を検討していただけないか」とお願いする。

 入間は、自社では無理だと応じる。しかし、佃であれば特許訴訟で巨額な和解金を勝ち取った超優良企業でもあるので、検討してもらえるかもわからないと答える。

 

「第六章 島津回想録」

-1-(伊丹らはヤマタニの入間の仲介で、佃にギアゴーストへの出資を願い出る)

 伊丹と島津のふたりが、佃製作所を訪ねてきたのは2月最初の水曜であった

 佃の問いに、伊丹が今までの経緯を説明する。

「ケーマシナリーから、『T2』に搭載してる弊社製造のトランスミッションの副変速機が特許侵害であるとの指摘を受け、弊社顧問弁護士の末長は裁判に勝つことは不可能で、ライセンス料15億円が必要になっている」

 続けて、「うちへの出資を検討していただけないか。もし、いただければギアゴーストを譲渡する。ただし、社員の雇用は守っていただきたい」と申し出た。

 佃は社内検討のため、時間をいただきたいと答える。

-2-(ギアゴーストの買収についての神谷弁護士の助言)

 佃は、伊丹と島津から相談のあった翌日、神谷顧問弁護士の法律事務所を訪ねた。

 神谷は対抗手段がなくはない。クロスライセンス契約を狙えないかと教示する。

 佃は、ギアゴーストの買収を前向きに考えていることについて、神谷に胸の内を明かした。

「もし、トランスミッションメーカーを傘下に収めることができれば主力のエンジン事業とかなりの相乗効果を発揮することができる。本音を言えば巨額のライセンス料を全額払っても一緒にやりたい」と告げる。

 神谷は、「買収のために企業精査の他に、ケーマシナリーのトランスミッションを手に入れ、リバース・エンジニアリングで特許侵害の有無を精査する必要がある」と助言すした。

 リバース・エンジニアリングとは、他社製品をバラし、その構造や技術を検証する作業のことをいう。

-3-(佃製作所とギアゴーストが共同で行うリバース・エンジニアリング)

 佃は、ビジネスに戦略は必要だが、会社も人と同じで損得以前に道義的な正否が大切だからとして、神谷からの助言を伊丹に伝えて、共同でリバース・エンジニアリングの作業をすることにした。

-4-(特許侵害に対する神谷の質問)

 島津らと共同でリバース・エンジニアリングに取り組んでいる佃製作所へ神谷が訪ねてくる

 神谷は島津に、特許侵害だといわれている副変速機は、いつ頃、設計図面が完成したのかと尋ねる。

 島津がパソコンから読み上げたのは3年ほど前の日付で、それが何かと質問する。

 神谷は、「ケーマシナリーの特許公報を調べると、先ほど、あなたから告げられたギアゴーストの製品設計が完成した日から1週間後に『クレーム補正』(権利範囲の変更)をしています。その範囲は御社の副変速機を意識したものでして、そこが、どうも不自然なのですが、設計情報が外部に漏れていませんか」と尋ねる

 外部に漏れることはありませんと言う島津に、神谷は、あなたが考案した副変速機について、なぜ特許申請をしなかったかと尋ねる。

 島津は、「以前から公けに知られている技術に少し応用を加えたもので、特許にするほどのものではないと解釈していました」と答える。

-5-(帝国重工は島津の才能を不要と排除する)

 島津は帝国重工で車両用トランスミッションの開発に従事していたが、保守的な古くさい帝国重工の組織は、旧来の路線を否定する島津の才能を不要として排除し、総務部へ転任させた。

 ここには自分の居場所はないと、伊丹の誘いに乗ってギアゴーストの副社長になった。

 

「第七章 ダイダロス」

-1-(仮説の検証)

 佃がギアゴーストの伊丹、島津と共に、神谷の事務所を訪ねたのは、リバース・エンジニアリングが成果なく終わった2月半ばのことだ

 ケーマシナリー代の人の中川が設定した回答期限が数日先に迫り、出資を考える佃を含め、今後の対応について詰める必要があった。

 佃から、ギアゴーストさんへの出資という形で何とか救済したいがいかがでしょうかと尋ねた。

 神谷は佃の質問に答えず、伊丹と島津に、ケーマシナリーの特許のクレームの補正時期に不自然のところがあることから、社員等からの情報漏洩があったのではないか、もう一つ神谷が手に入れたデータから、末長と中川は、隠しているが昔から親しくしていた間柄でなかったのか、いわゆる「仮説の検証」のためのヒヤリングをしたが、末長を信用している伊丹らは感情を害して帰って行った。

 神谷は残った佃に、先ほど事務所を出る前に伊丹にも封筒入れて渡した、業界誌の対談集コピーを見せて、中川と末長は友人関係にあることを告げた。また、先日、島津が話したギアゴースト製の副変速機の技術と構成の基本は、以前から公けになっている技術と言ったことから、もとになる論文があると推論し、佃にその検索作業の手伝いを頼む。

-2-(訴訟手続きへの移行)

 伊丹と末長は中川との二回目の特許侵害の交渉に臨んだが、交渉は決裂し、中川は訴訟手続きに移行することを告げた。

-3-(ギアゴーストの買収に、旧重田工業の社長が現われる)

 中川弁護士の仲介で、ギアゴーストの買収をしてもよいというダイダロスの社長の重田登志行氏が現われる。

 重田登志行は、伊丹が帝国重工時代に倒産した下請け企業の重田工業の社長で、倒産には伊丹が関わっていたのだ。

-4-(重田工業の倒産経緯)

 当時、伊丹が所属していた帝国重工の機械事業部は赤字が続いていて、新部長に的場俊一が起死回生の切り札として送り込まれ、的場は様々な容赦しない施策を打ち出した。

 それを受けて、伊丹も下請け企業にコストダウンを要求した。重田工業はそのことに非協力的な態度をとるので、的場の意向により、取引を中止した。そのために重田工業は倒産したのだ。

-5-(ダイダロス社長重田登志行の買収案)

 買収案の1番目は、買収はダイダロスが行う。2番目はケーマシナリーの紛争とその賠償などにかかる費用は一切負担する代わりにギアゴースト全株式の無償譲渡を希望する。3番目は従業員の雇用は保証しない。4番目は伊丹社長が社長を続行する。

 伊丹は、重田工業の倒産に関わったことを気にしてか、賠償などにかかる資金のめどが、佃製作所しか候補がない状況にあることからか、従業員の雇用を保証しないという伊丹のアイデンティティを踏みにじるものであるにもかかわらず、検討するので時間をいただきたいと持ち帰る。

-6-(末長弁護士に疑いを持ち、神谷に弁護を依頼する心が動く)

 神谷から先日渡された封筒を開けると、業界誌に掲載されている中川京一と末長孝明の対談記事が出てきて、その記事からふたりが親しい間柄にあることが解った。

 伊丹は、先日失礼した神谷であったが、頭を下げて弁護を依頼したいとする心が動いた。

 東京地裁からの訴状が届いたのは、その2週間後のことであった。

-7-(副変速機に関連する論文を探す佃)

 佃は、神谷から頼まれた目当ての論文を家に帰っても探す。

 娘から何か開発するのかと尋ねられると、救いたい会社があるのだと言って、その作業に熱中する。

 

 [ギアゴーストのトランスミッションに特許侵害があるとケーマシナリーに訴えられる]

 [佃はギアゴーストを救いたいと神谷の援助を受けて頑張るが、訴状が届く]

    「第八章 記憶の構造」に続く

 

 

 

 

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1558話 [ 「下町ロケット・ゴースト」の大要 1/? ] 9/25・火曜(雨・曇)

2018-09-24 13:41:07 | 読書

「下町ロケット・ゴースト」の大要

 秋発刊予定の「下町ロケット・ヤタガラス」を読み易くするために。

「第一章 ものづくりの神様」

-1-(取引先のヤマタニから新型エンジン採用を白紙にするとの申し出を受けた佃製作所)

 佃製作所の佃社長は、突如、取引先の農機具組み立てメーカーのヤマタニから呼び出しを受けた。梅雨明けの待たれる6月末のことであった

 ヤマタニの蔵田調達部長から、外部調達コストの根本的見直しで、新型エンジンの採用を白紙に戻す、それと既存製品は高級機向けに限定し発注量を大幅減に見直すとの申し出を受けた。

 低価格で納入する競合相手は、"安さ一流、技術は二流"で評判のダイダロスとのことだった。

-2-(殿村経理部長の父親が倒れ、殿村は農家の実家に数日帰る)

 佃は帰社してすぐさま緊急会議を開いた

 殿村は、「ダイダロスは数年前に経営権を買い取った社長・重田登志行の経営方針『徹底してリストラと、低価格路線の追求』により業績が急回復した」と説明する。具体的にはコストを抑えるために生産拠点を海外に移すと同時に、余剰となる正社員を大量解雇したと唐木田が説明する。

 佃は、社員をコストだと思ったことはなく、最優先して守らなければならない財産だと考えている。

 そんな中、殿村の父親が心筋梗塞で倒れ、殿村は実家の農業をするため数日の休暇をとった。

-3-(顧客ニーズにどう向かうかが、佃製作所の喫緊の課題)

 ヤマタニから発注計画の見直し告知があった週の金曜日、佃製作所恒例行事の飲み会の席で、唐木田部長から、「ウチは、エンジンはより高性能であるべきだというスタンスでずっとやってきたが、それが本当に顧客ニーズにマッチしているのか、考えなきゃいけないところに来ているのではないか」と佃製作所の存在意義に関わる問題提起があった。

 それを受けて、佃は、「今回の失敗を糧にして、オレたちはオレたちのやり方で、取引先やユーザーと向き合っていこうじゃないか。きっと、ウチにしかできないことがあるはずだ。果たしてそれが何なのか。それを早急に見つけ出すのが、わが社に突きつけられた喫緊の課題である」と言う

-4-(帝国重工の経営環境右下がりで社長交代に。佃製作所の受注にも影響)

 佃と山崎はロケット打ち上げに向けた会議に出席するため帝国重工本社を訪ねたのはその翌週であった

 小型エンジン製造が佃製作所の主業だが、その一方、大型ロケットの水素エンジン用に供給しているバルブシステムは、いまや佃製作所の代名詞といっていいキーデバイスである。佃製作所の技術力が業界で、"ロケット品質"といわれるのも、この供給実績あってのことだ。

 会議の後、宇宙航空部の現場責任者の財前道生に誘われて洋食屋に入った。

 子会社の巨額損失計上により帝国重工の経営環境の右下がりで帝国重工藤間社長の来期限りでの退任が既定路線になっていた。財前は、後任には反藤間の急先鋒の国内製造部門統括取締役的場俊一の名前を挙げた。

つまり、そのときは、スターダスト計画も存亡の危機になるようですね」と問う佃に、財前は肯定の沈黙を寄越した。

 大型ロケットエンジンのバルブシステムの供給は、佃製作所にとって精神的支柱だ。いまそれが、まったく手の届かないところで、その受注がなくなろうとしているのである

-5-(佃製作所を高性能のトランスミッションも製造するメーカーに)

 帝国重工での会議があったその週の土曜日、佃は山崎部長と殿村の父親の見舞いに行った。

 トラクターで休耕田を耕している殿村に、オレにも運転させてくれと言い、佃は2時間ほど運転して、「おかげで、つぎになにをすべきか、わかった気がする」と思いがけないひと言が飛び出した。

トラクターの作業の精度はトランスミッション(変速機)の性能に左右される」と言い、

 殿村にも分かり易く、佃は続けた。「どれだけ高性能なエンジンを開発したとしても、乗り味や作業精度を決めるのはエンジンじゃない。変速機なんだ。その意味では確かにエンジンなんか動けばいいのかもしれない。変速機はそうはいかない。佃製作所が高性能のその両方を作れるメーカーになれないか。真剣に検討してみる価値はあると思う

 

「第二章 天才と町工場」

-1-(バルブを制するもの、トランスミッションを制する)

 殿村の実家を訪ねた翌週の月曜、毎週月曜の朝開かれる連絡会議で、佃はトランスミッション参入構想を打ち出した。

 佃が打ち出した要点は、「すでに高性能トランスミッションを製造しているメーカーがある中へ参入して勝ち目があるのか」という質問に対する答えにあった。

「トランスミッションの性能が果たしてどこで決まるのか―――そこがポイントだ。当たり前のことだが、それぞれの部品の加工精度は極めて重要で、研磨の精度はウチの技術レベルが抜きんでているが、そうしたもの以上に、トランスミッションにとって重要なパーツが実は存在する。バルブだ」

 全員が息を呑むのがわかった。

トランスミッションの性能を左右する大きな要因のひとつは、油圧をはじめとする流体制御であり、それを統べるバルブの性能そのものなんだ」

「だから、ウチなのか」そんな呟きがどこからか洩れ、佃は頷いた

-2-(ヤマタニのトランスミッションのバルブから参入する)

 その夜、佃は殿村と山崎をいつもの居酒屋に誘った

 佃は、「取引先のヤマタニはトランスミッションを製造しているので、そのバルブだけでも作らせてもらえないか頼んでみたい」と提案した。

 今週、ヤマタニの浜松工場へ行く予定があるので、その際、話題にのせることにした。

-3-(ヤマタニは新型トランスミッションをギアゴーストに外注する予定)

 その週の金曜日、佃と山崎、津野の両部長がヤマタニの浜松工場へ行き、入間工場長に合う

 佃から、入間工場長に、弊社はトランスミッションに目を付け、とりあえずバルブに参入することを考えています。開発した場合、貴社の製品に導入していただく余地があるだろうかと尋ねる。

 入間は、「バルブは大手の大森バルブが入っている。現行製品は勘弁してくれ。新型については、トランスミッションそのものを外注に出す予定だ。いま目を付けている会社はギアゴーストだ」と。続けて、

そこはユニークな会社で、あくまで企画設計会社で、すべての部品製造と組み立てを契約企業に発注している。つまり「ファブレス」(製造拠点を持たないという意味)です」と言う。

 だから、ギアゴーストに外注しても、そっちのバルブが採用されれば同じだろう。興味があれば、その会社の社長を紹介するよと言われた。

-4-(浜松からの帰路、佃と山崎は東京大田区のギアゴーストを見に行く)

-5-(佃らは、ヤマタニの紹介でギアゴーストを訪問する)

 佃らは、ヤマタニの入間工場長を訪ねた翌週、入間の紹介でギアゴーストを訪問する。

 ギアゴーストは、文系で営業戦略を担当する伊丹大社長と天才的な女性エンジニアの島津裕副社長が5年前に起業した年商100億円の技術水準が業界トップクラスの会社で、ふたりとも帝国重工の元社員だったが、保守的な組織からふたりの才能は不要として干されたのである。

-6-(大森バルブに負けない、ギアゴーストの要求に見合うバルブ作りを約束する)

 伊丹と佃がトランスミッションについて語り合った。

 伊丹は、「ヤマタニさん向けに開発しているトランスミッションが採用されるかどうか。それで、ウチの将来はかなり変わってくる。うまくいけば、農機具のジャンルに本格的に進出する足かがりになる。農機具は車と比べると市場は小さいが、それだけ大手との競合も少ない。ぜひとも進出したい市場だ」

 佃は、「小型エンジンだけを作っていては先がなく、そこで注目したのがトランスミッションでして、夢はトランスミッションメーカーになることです。しかし、現時点ではウチができるのはバルブを作ることてです」

 伊丹は、「大森バルブさんと競合することでしょう。バルブの場合、お金と手間暇をかければ、いいものが出来るでしょうが、それではうちの要求水準はクリアできません。コストも、発注から納期までのリードタイムも、きっと想定よりも厳しいと思います。技術水準を維持しながら、この条件をクリアするのは、そう簡単なことではありません」

 佃は、「もちろんチャレンジさせていただきます」

-7-(スターダスト計画の行く末と財前の異動内示)

 スターダスト計画に懐疑的な次期社長候補の的場が、金曜の夜、食事に財前を誘った

 足元のわが社の実績は惨憺たるもので、巨額となる大型ロケットへの投資をすべきでないと思うと、的場は持論を告げた後、財前の将来の話に切り替えた。

君も切りのいいところで―――もう少し先になるだろうが、お前は今のポストから離れろ。水原君の考えでは、準天頂衛星七号機を花道にしてはどうかということだ。私もそれに賛成だ」と

 

「第三章 挑戦と葛藤」

-1-(大森バルブの裏交渉)

 大森バルブの辰野営業部長がギアゴーストの伊丹を四川料理店に招待していた。

 辰野は、「バルブもコンペなんて考えていませんよね」と牽制する。

 しかし、伊丹は、「弊社のスタンスはコンペですから、ご了承ください。それに、すでにコンペティターに名乗りを上げた業者がありますので」と答えた。

 辰野が、それはどこですかと尋ねると、伊丹は、「ヤマタニさんに紹介された佃製作所です」と答えた。

-2・3-(ギアゴースト向けのバルブユニット開発チームの選定)

 佃製作所の3階の技術開発部には、大手トランスミッションメーカーのケーマシナリーのそれをパーツごとに解体されていた。バルブとそれを組み込むバルブボディも並べられていた。

 そこでは、佃も立花から受取ったバルブを眺め、思い浮かんだ印象を呟いていた。

 その場には、人工心臓弁ガウディ計画の開発担当者だった立花洋介と加納アキも使命が終りエンジンのバルブ部門へ復帰していた。

 佃は山崎のたっての願いもあって、自分から積極的に名乗り出た中堅エンジニアの軽部真樹男に開発を命じた。

 そして、軽部の下で開発に参加する者として、立花とアキを指名した。

-4-(財前は水原から、「ヤタガラス」7号機の打ち上げを花道に転任内示を受ける)

-5-(殿村の父親が再入院。殿村は農家を継ぐべきか否かで悩む)

 殿村の父親が心筋梗塞の緊急手術で最初に入院したのは2か月近く前。経過は良好で一旦退院したものの、ステントを入れる手術のため昨日再入院した。

 入院している父親は帰郷した殿村に、「田んぼ、どうだ。何もないか」と尋ねる。

 父親は300年続く農家の12代目。自分で農家に幕を下ろす決意をして殿村を大学に行かせのだと言っているが、それは父自身に言い聞かせた言葉と思い、その言葉を真に受けるほど若くはないという殿村は決断に悩む。

 

「第四章 ガウディの教訓」

-1-(軽部は、立花らのバルブに静粛性、軽量化、オリジナリティを指示した)

 立花とアキが開発しているバルブに、樹脂パーツを入れての静粛性、燃費にも影響する軽量化を検討してみては、そして、ふたりのオリジナリティを出せと言う

-2-(戦っている軽部と殿村への佃の気配り)

 会社近くのいつもの居酒屋で、佃と殿村と山崎がテーブルを囲んでいる。

 話題はバルブ開発の進捗が思わしくないことになっていた。山崎が、「軽部は職人気質で誰にも相談せず一人で苦労している」と話すと、殿村は、「何を悩んでいるかわからないブラックボックスに、会社の仕様来が左右されるのはどうか」と言う

 すると、佃は山崎に、「軽部と話し合い、論点を整理してみてはどうか」と指示する。

 その後、話題は実家の農業を続けるべきか否かと悩んでいる殿村のことになったが、結果は援けるような言葉は出ずじまいだった。

-3-(大森バルブの強引な営業)

 大森バルブは満足のいく試作品を早めに持参するからコンペは止めてくれ、応じていただいたら、コストをダウンするからと強引な営業を持ち込む。

 しかし、コンペの相手の佃製作所が、帝国重工のロケットエンジンのバルブを製造している会社と聞いて、ハイスペックなものに作り替えることにする。

-4-(ガウディ計画の中から、バルブのオリジナリティを見い出せるのではないか)

 立花とアキは、バルブの静粛性と軽量化が達成できたような気がした。軽部からも褒められた。

 しかし、自分らしさのバルブ、いわゆるオリジナリティが見つからないというふたりに、軽部は『ガウディ』と向き合えみなとヒントを与えた。

-5-(農業法人を起業した殿村の同級生が田んぼを売却しないかの話が出る)

 農業の手助けで休日に帰郷している殿村に、農業法人を起業した高校の同級生から田んぼを売却しないかとの話があった。

 父親に話すと、なぜか嫌悪感を示し、稲刈りに話題を変えた

-6-(佃は、安易な安売りは止めて、儲けになる商売をしてくれと諭す)

 バルブ開発の軽部チームは、大森バルブ相手だからと、コストオーバーのハイスペックのバルブを作った。

 しかし、佃はOKを出さずに、「儲けを削ってまでして、相手のコストに合わせて物を売ることはしないでほしい。商売は自分の仕事にいかに儲けを乗せるかが腕の見せどころだ。安易な安売りは、結局のところ商売を細らせる。いいバルブと思うが、これでは商売にならない。もう一度設計を見直せ」と命じる

-7-(立花たちのオリジナリティのバルブを見つける)

 ガウディ計画では、病気の子供たちと向き合った。いまオレたちが向き合っているのは、ギアゴーストのトランスミッションだ。

 そう考えた立花はいった。

「ギアゴーストは、農機具のトラックター用トランスミッションとして最適な仕様に設定しているのだ。だったらバルブもそれに寄り添うべきだろう。いまのウチのこのスペックはーーー無駄なんだよ」

-8-(ケーマシナリーと中川弁護士の秘密話)

 師走に入り、クライアントなどとの会食が多く開かれている。 

 そんな中、大手トランスミッションメーカー・マシナリーの知財部長・神田川敦は接待相手の田村・大川法律事務所の中川弁護士とそれぞれのグラスにビールが注がれるのを待って、グラスを高々と掲げた。

「………。中川先生。今年一年。お世話になりました」との神田川のお礼の言葉に、中川は、

特許承認、おめでとうございます。これで、次の段階へ進めますね」と笑みを浮かべ、続けて、「本件がうまくいったら弊所と顧問契約をお願いします」と軽く頭を下げる。

 話が進んで、中川が口を切った。

ところで、相手への請求金額は、私どもで提案させていただいた当初の予定でよろしいですね」

「異議はありません。是非、それでお願いします」と神田川は答える。

              

 [第一章の「ヤマタニからの大幅受注減」の問題がおきてから半年近く経っていた。]

 [佃は、バルブを開発し、トランスミッション戦略の第一歩を踏み出したかに見えた]

  「第五章 ギアゴースト」に続く

 

 

 

 

 

 

 

 

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1557話 「 川口俊和シリーズ 」 9/23・日曜(曇)

2018-09-23 12:28:01 | 本と雑誌

                              

 「コーヒーが冷めないうちに」、「この嘘がばれないうちに」に続くシリーズもの。

 前2冊は涙腺が緩み涙した。今度もそれを期待して購入。

 「コーヒーが……」は映画化されたので、これは見たいと思っている。

                              

 今年は雨がよく降るので、亡弟の墓参も予定が取れずにいる。

 このあと、少し衣更えをしておこうと思っている。

 その後は、「下町ロケット・ゴースト」の大要を纏めたいし、

 ダイヤモンド婚を記念した「夫婦史」を書きたいとその準備も出来ている。

 とにかく、やることは一杯にある。

 

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1556話 [ 「看る力」から抜粋 ] 9/19・水曜(晴・曇)

2018-09-18 12:19:32 | 読書

 

看る力 アガワ流介護入門

 作家、インタビュアーとして活躍する一方、94歳で亡くなった父・弘之氏を看取り、いまは認知症の母の世話をするなど、介護経験豊富な阿川佐和子、1万人以上のお年寄りと向き合い、6千人以上の最期を看てきた高齢者医療の第一人者、大塚宜夫医師。

 二人が語る親&伴侶の正しい介護法、理想的な老後の生活術―――。

「私の心に留まった文章の抜粋」

 Ⅰ 看る力 家族編

 1 好物は喉につまらない

 阿川 父がある日、「鰻を食べたい」と言い出した。

    誤嚥性肺炎が治ったばかりだし、小骨が引っ掛かったらどうするんだ、

    さすがに鰻はまずいだろうと先生に相談したら、

   「ああ、いいんじゃないですか」とあっさり。あれにはびっくりした。

 大塚 心配し出したらきりがない。

    ご本人が食べたいものを食べていただくのが一番でしょ。

    不思議なことに、たとえ飲み込みに障害がある人でも

    好きなものなら喉を通るんですよ。

 

 大塚 食べるっていうのはね、人間の最後まで残る楽しみであると同時に、

    高齢者の生きる力を測る目安としても、とても大事です。

    ヨーロッパの高齢者施設を視察したときに、痛感しました。

    食事を食欲をそそるように見せ、

    飲みこみやすい形にカットするなど工夫をこらす。

    また、口に運ぶ介助も十分にやる。

    でも、それを本人が自分の力で飲み込めなくなったら、

    それ以上の対処はしないんです。

 阿川 点滴もしない?

 大塚 しません。はっきり言えば、自分で飲み込めなくなったら、

    つまり、食べられなくなったら、その人の生きる限界だということです。

2 医療より介護、介護より生活

 大塚 寝たきりでも認知症でも病気でも、どんな方でも、

   「ここで過ごす時間は人生の最後に誰もが経験する生活の一時期なんだ」

    と考えました。

    生活することを基本に据え、環境を豊かにする。つまり、衣食住を整える。

    そのうえで介護と医療をくっつける構造にしょうと。

 阿川 医療より介護、介護より生活、という方向に優先順位をひっくり返した

4 バカにしない、怒らない、とがめない

 阿川 認知症の人は、まわりから見たら理屈に合わない発言や行動でも、

    本人にとっては、残った記憶と情報をもとに行動しているわけだから、

    整合性はあるわけですね。

 大塚 そこが私たちが最も理解しなければならないポイントです。

    本人がうまく処理できなくても非難しないこと。

    とがめたり諫めたりしても何の役にも立ちません。

    本人としては少ない記憶を駆使して自分なりにベストの判断をくだし、

    行動しているわけですから、怒られる意味がわからないのです。

    それよりも、まず、バカにされない、叱責されない、とがめられない、

    という安心感を与えらることが大事。

    これは、認知症の対処法の基本です。

    (これは高齢者に対しても同じだろうと思います)

    よく、認知症になると「子供に返る」って言いますが、違います。

    認知症の人は、言われたことを覚えていられないのです。

    新しく記憶できないのです、学習できないのです。

    教育的な効果は、絶対期待しちゃいけないんです。

 阿川 うちはマンションだから雨戸がないのに、

    母は何度も「雨戸を閉めないと」と言います。

    私は、はじめて聞いたように「うちには雨戸がないんだよ」と言います。

 大塚 何を言われても決して否定しないことです。

    時には「雨戸ね、閉めましょう」とオウム返しをすればいいんです。

5 介護は長期戦と心得よ

 大塚 介護の専門家としては、

   「全力でやらない。できるだけ多くの人を巻きこんでやる」を徹底する。

   「介護する側が極力いい精神状態を保てるようにすること」が、

    介護を長く続けるための基本中の基本。休み休みが基本。

7 イライラしたら笑っちゃおう

 大塚 認知症で介護が必要になったお母さんに対して、

   「愛しい」って、なかなか言えることじゃありません 。

    一番大事なことは、「お母さんが大好き」 という気持だと思います。

    そういう前向きな気持ちは、相手が認知症でも伝わっています。

    認知症の人って、「気」には極めて敏感です。

    そして、感情の記憶は、最後まで残るのです。

    キツく接すると、「この人は私に対して、いい感情をもってない」、

    という不信感だけが残るのです。

9 認知症でも一人暮らしを

 大塚 私は老人病院の会長ですが、高齢になったも、

    できるだけ自宅での生活を続けた方がいいと考えているんです。

    一人、あるいは高齢者同士の暮らしは、

    少々体調が悪くても自分で動かざるを得なくて、緊張感があります。

    一見過酷に思えますが、老化防止や認知症の進行を防ぐ特効薬です。

15 介護される立場で考える

 阿川 私は「母の気持はどうなのか?」って考えることのほうが大事―――。

 大塚 そう。家族として、当の本人にとってはどうかという視点、

    これを絶対に忘れてはいけませんね。

Ⅲ 看られる覚悟―――あなたが高齢者になったら

23 七十五歳が節目

 大塚 75歳を過ぎたらじっとしているだけで筋肉は細り、関節は固くなり、

    バランスをとる能力もガタッと落ちていく。

    ましてや安静を保つ必要のあるケガや病気をすると、

    体の機能も気持ちも一気に衰えます。

    例えば、風邪を引いて寝込んだら、風による消耗に加えて、

    寝ているだけで筋力や体力がどんどん落ちていまうから、

    元に戻らなくなってしまいます。

24 老人に過労死なし

 大塚 若い頃は体を休ませ、体調をよく保つことで気力充実といった感じでしたが、

    75歳を過ぎたら、体の言うこと聞いて楽させたらもう終わり。

    体が何と言おうと、気力に体力を引っ張らせることこそが大切ですよ。

    予定があるならとにかく出かけましょう。

 阿川 甘やかすな、と。

 大塚 そうです。75歳を過ぎて使わなかったら、体はたちまち衰えます。

30 そこで働く人を見て施設を選ぶ

 阿川 いま高齢者向けのビジネスがどんどん広がり、

    老人施設や老人病院が増えています。

    これをどう見分けるか、その基準やヒントはありますか?

 大塚 一番いいのは、そこで働いている人の表情を見ることです。

    働いている人の表情や立ち居振る舞いは、

    自分のやっていることへの誇りや自信、心の状態の集大成だからです。

 

         

 

    

 

 

 

 

 

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