T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

1558話 [ 「下町ロケット・ゴースト」の大要 1/? ] 9/25・火曜(雨・曇)

2018-09-24 13:41:07 | 読書

「下町ロケット・ゴースト」の大要

 秋発刊予定の「下町ロケット・ヤタガラス」を読み易くするために。

「第一章 ものづくりの神様」

-1-(取引先のヤマタニから新型エンジン採用を白紙にするとの申し出を受けた佃製作所)

 佃製作所の佃社長は、突如、取引先の農機具組み立てメーカーのヤマタニから呼び出しを受けた。梅雨明けの待たれる6月末のことであった

 ヤマタニの蔵田調達部長から、外部調達コストの根本的見直しで、新型エンジンの採用を白紙に戻す、それと既存製品は高級機向けに限定し発注量を大幅減に見直すとの申し出を受けた。

 低価格で納入する競合相手は、"安さ一流、技術は二流"で評判のダイダロスとのことだった。

-2-(殿村経理部長の父親が倒れ、殿村は農家の実家に数日帰る)

 佃は帰社してすぐさま緊急会議を開いた

 殿村は、「ダイダロスは数年前に経営権を買い取った社長・重田登志行の経営方針『徹底してリストラと、低価格路線の追求』により業績が急回復した」と説明する。具体的にはコストを抑えるために生産拠点を海外に移すと同時に、余剰となる正社員を大量解雇したと唐木田が説明する。

 佃は、社員をコストだと思ったことはなく、最優先して守らなければならない財産だと考えている。

 そんな中、殿村の父親が心筋梗塞で倒れ、殿村は実家の農業をするため数日の休暇をとった。

-3-(顧客ニーズにどう向かうかが、佃製作所の喫緊の課題)

 ヤマタニから発注計画の見直し告知があった週の金曜日、佃製作所恒例行事の飲み会の席で、唐木田部長から、「ウチは、エンジンはより高性能であるべきだというスタンスでずっとやってきたが、それが本当に顧客ニーズにマッチしているのか、考えなきゃいけないところに来ているのではないか」と佃製作所の存在意義に関わる問題提起があった。

 それを受けて、佃は、「今回の失敗を糧にして、オレたちはオレたちのやり方で、取引先やユーザーと向き合っていこうじゃないか。きっと、ウチにしかできないことがあるはずだ。果たしてそれが何なのか。それを早急に見つけ出すのが、わが社に突きつけられた喫緊の課題である」と言う

-4-(帝国重工の経営環境右下がりで社長交代に。佃製作所の受注にも影響)

 佃と山崎はロケット打ち上げに向けた会議に出席するため帝国重工本社を訪ねたのはその翌週であった

 小型エンジン製造が佃製作所の主業だが、その一方、大型ロケットの水素エンジン用に供給しているバルブシステムは、いまや佃製作所の代名詞といっていいキーデバイスである。佃製作所の技術力が業界で、"ロケット品質"といわれるのも、この供給実績あってのことだ。

 会議の後、宇宙航空部の現場責任者の財前道生に誘われて洋食屋に入った。

 子会社の巨額損失計上により帝国重工の経営環境の右下がりで帝国重工藤間社長の来期限りでの退任が既定路線になっていた。財前は、後任には反藤間の急先鋒の国内製造部門統括取締役的場俊一の名前を挙げた。

つまり、そのときは、スターダスト計画も存亡の危機になるようですね」と問う佃に、財前は肯定の沈黙を寄越した。

 大型ロケットエンジンのバルブシステムの供給は、佃製作所にとって精神的支柱だ。いまそれが、まったく手の届かないところで、その受注がなくなろうとしているのである

-5-(佃製作所を高性能のトランスミッションも製造するメーカーに)

 帝国重工での会議があったその週の土曜日、佃は山崎部長と殿村の父親の見舞いに行った。

 トラクターで休耕田を耕している殿村に、オレにも運転させてくれと言い、佃は2時間ほど運転して、「おかげで、つぎになにをすべきか、わかった気がする」と思いがけないひと言が飛び出した。

トラクターの作業の精度はトランスミッション(変速機)の性能に左右される」と言い、

 殿村にも分かり易く、佃は続けた。「どれだけ高性能なエンジンを開発したとしても、乗り味や作業精度を決めるのはエンジンじゃない。変速機なんだ。その意味では確かにエンジンなんか動けばいいのかもしれない。変速機はそうはいかない。佃製作所が高性能のその両方を作れるメーカーになれないか。真剣に検討してみる価値はあると思う

 

「第二章 天才と町工場」

-1-(バルブを制するもの、トランスミッションを制する)

 殿村の実家を訪ねた翌週の月曜、毎週月曜の朝開かれる連絡会議で、佃はトランスミッション参入構想を打ち出した。

 佃が打ち出した要点は、「すでに高性能トランスミッションを製造しているメーカーがある中へ参入して勝ち目があるのか」という質問に対する答えにあった。

「トランスミッションの性能が果たしてどこで決まるのか―――そこがポイントだ。当たり前のことだが、それぞれの部品の加工精度は極めて重要で、研磨の精度はウチの技術レベルが抜きんでているが、そうしたもの以上に、トランスミッションにとって重要なパーツが実は存在する。バルブだ」

 全員が息を呑むのがわかった。

トランスミッションの性能を左右する大きな要因のひとつは、油圧をはじめとする流体制御であり、それを統べるバルブの性能そのものなんだ」

「だから、ウチなのか」そんな呟きがどこからか洩れ、佃は頷いた

-2-(ヤマタニのトランスミッションのバルブから参入する)

 その夜、佃は殿村と山崎をいつもの居酒屋に誘った

 佃は、「取引先のヤマタニはトランスミッションを製造しているので、そのバルブだけでも作らせてもらえないか頼んでみたい」と提案した。

 今週、ヤマタニの浜松工場へ行く予定があるので、その際、話題にのせることにした。

-3-(ヤマタニは新型トランスミッションをギアゴーストに外注する予定)

 その週の金曜日、佃と山崎、津野の両部長がヤマタニの浜松工場へ行き、入間工場長に合う

 佃から、入間工場長に、弊社はトランスミッションに目を付け、とりあえずバルブに参入することを考えています。開発した場合、貴社の製品に導入していただく余地があるだろうかと尋ねる。

 入間は、「バルブは大手の大森バルブが入っている。現行製品は勘弁してくれ。新型については、トランスミッションそのものを外注に出す予定だ。いま目を付けている会社はギアゴーストだ」と。続けて、

そこはユニークな会社で、あくまで企画設計会社で、すべての部品製造と組み立てを契約企業に発注している。つまり「ファブレス」(製造拠点を持たないという意味)です」と言う。

 だから、ギアゴーストに外注しても、そっちのバルブが採用されれば同じだろう。興味があれば、その会社の社長を紹介するよと言われた。

-4-(浜松からの帰路、佃と山崎は東京大田区のギアゴーストを見に行く)

-5-(佃らは、ヤマタニの紹介でギアゴーストを訪問する)

 佃らは、ヤマタニの入間工場長を訪ねた翌週、入間の紹介でギアゴーストを訪問する。

 ギアゴーストは、文系で営業戦略を担当する伊丹大社長と天才的な女性エンジニアの島津裕副社長が5年前に起業した年商100億円の技術水準が業界トップクラスの会社で、ふたりとも帝国重工の元社員だったが、保守的な組織からふたりの才能は不要として干されたのである。

-6-(大森バルブに負けない、ギアゴーストの要求に見合うバルブ作りを約束する)

 伊丹と佃がトランスミッションについて語り合った。

 伊丹は、「ヤマタニさん向けに開発しているトランスミッションが採用されるかどうか。それで、ウチの将来はかなり変わってくる。うまくいけば、農機具のジャンルに本格的に進出する足かがりになる。農機具は車と比べると市場は小さいが、それだけ大手との競合も少ない。ぜひとも進出したい市場だ」

 佃は、「小型エンジンだけを作っていては先がなく、そこで注目したのがトランスミッションでして、夢はトランスミッションメーカーになることです。しかし、現時点ではウチができるのはバルブを作ることてです」

 伊丹は、「大森バルブさんと競合することでしょう。バルブの場合、お金と手間暇をかければ、いいものが出来るでしょうが、それではうちの要求水準はクリアできません。コストも、発注から納期までのリードタイムも、きっと想定よりも厳しいと思います。技術水準を維持しながら、この条件をクリアするのは、そう簡単なことではありません」

 佃は、「もちろんチャレンジさせていただきます」

-7-(スターダスト計画の行く末と財前の異動内示)

 スターダスト計画に懐疑的な次期社長候補の的場が、金曜の夜、食事に財前を誘った

 足元のわが社の実績は惨憺たるもので、巨額となる大型ロケットへの投資をすべきでないと思うと、的場は持論を告げた後、財前の将来の話に切り替えた。

君も切りのいいところで―――もう少し先になるだろうが、お前は今のポストから離れろ。水原君の考えでは、準天頂衛星七号機を花道にしてはどうかということだ。私もそれに賛成だ」と

 

「第三章 挑戦と葛藤」

-1-(大森バルブの裏交渉)

 大森バルブの辰野営業部長がギアゴーストの伊丹を四川料理店に招待していた。

 辰野は、「バルブもコンペなんて考えていませんよね」と牽制する。

 しかし、伊丹は、「弊社のスタンスはコンペですから、ご了承ください。それに、すでにコンペティターに名乗りを上げた業者がありますので」と答えた。

 辰野が、それはどこですかと尋ねると、伊丹は、「ヤマタニさんに紹介された佃製作所です」と答えた。

-2・3-(ギアゴースト向けのバルブユニット開発チームの選定)

 佃製作所の3階の技術開発部には、大手トランスミッションメーカーのケーマシナリーのそれをパーツごとに解体されていた。バルブとそれを組み込むバルブボディも並べられていた。

 そこでは、佃も立花から受取ったバルブを眺め、思い浮かんだ印象を呟いていた。

 その場には、人工心臓弁ガウディ計画の開発担当者だった立花洋介と加納アキも使命が終りエンジンのバルブ部門へ復帰していた。

 佃は山崎のたっての願いもあって、自分から積極的に名乗り出た中堅エンジニアの軽部真樹男に開発を命じた。

 そして、軽部の下で開発に参加する者として、立花とアキを指名した。

-4-(財前は水原から、「ヤタガラス」7号機の打ち上げを花道に転任内示を受ける)

-5-(殿村の父親が再入院。殿村は農家を継ぐべきか否かで悩む)

 殿村の父親が心筋梗塞の緊急手術で最初に入院したのは2か月近く前。経過は良好で一旦退院したものの、ステントを入れる手術のため昨日再入院した。

 入院している父親は帰郷した殿村に、「田んぼ、どうだ。何もないか」と尋ねる。

 父親は300年続く農家の12代目。自分で農家に幕を下ろす決意をして殿村を大学に行かせのだと言っているが、それは父自身に言い聞かせた言葉と思い、その言葉を真に受けるほど若くはないという殿村は決断に悩む。

 

「第四章 ガウディの教訓」

-1-(軽部は、立花らのバルブに静粛性、軽量化、オリジナリティを指示した)

 立花とアキが開発しているバルブに、樹脂パーツを入れての静粛性、燃費にも影響する軽量化を検討してみては、そして、ふたりのオリジナリティを出せと言う

-2-(戦っている軽部と殿村への佃の気配り)

 会社近くのいつもの居酒屋で、佃と殿村と山崎がテーブルを囲んでいる。

 話題はバルブ開発の進捗が思わしくないことになっていた。山崎が、「軽部は職人気質で誰にも相談せず一人で苦労している」と話すと、殿村は、「何を悩んでいるかわからないブラックボックスに、会社の仕様来が左右されるのはどうか」と言う

 すると、佃は山崎に、「軽部と話し合い、論点を整理してみてはどうか」と指示する。

 その後、話題は実家の農業を続けるべきか否かと悩んでいる殿村のことになったが、結果は援けるような言葉は出ずじまいだった。

-3-(大森バルブの強引な営業)

 大森バルブは満足のいく試作品を早めに持参するからコンペは止めてくれ、応じていただいたら、コストをダウンするからと強引な営業を持ち込む。

 しかし、コンペの相手の佃製作所が、帝国重工のロケットエンジンのバルブを製造している会社と聞いて、ハイスペックなものに作り替えることにする。

-4-(ガウディ計画の中から、バルブのオリジナリティを見い出せるのではないか)

 立花とアキは、バルブの静粛性と軽量化が達成できたような気がした。軽部からも褒められた。

 しかし、自分らしさのバルブ、いわゆるオリジナリティが見つからないというふたりに、軽部は『ガウディ』と向き合えみなとヒントを与えた。

-5-(農業法人を起業した殿村の同級生が田んぼを売却しないかの話が出る)

 農業の手助けで休日に帰郷している殿村に、農業法人を起業した高校の同級生から田んぼを売却しないかとの話があった。

 父親に話すと、なぜか嫌悪感を示し、稲刈りに話題を変えた

-6-(佃は、安易な安売りは止めて、儲けになる商売をしてくれと諭す)

 バルブ開発の軽部チームは、大森バルブ相手だからと、コストオーバーのハイスペックのバルブを作った。

 しかし、佃はOKを出さずに、「儲けを削ってまでして、相手のコストに合わせて物を売ることはしないでほしい。商売は自分の仕事にいかに儲けを乗せるかが腕の見せどころだ。安易な安売りは、結局のところ商売を細らせる。いいバルブと思うが、これでは商売にならない。もう一度設計を見直せ」と命じる

-7-(立花たちのオリジナリティのバルブを見つける)

 ガウディ計画では、病気の子供たちと向き合った。いまオレたちが向き合っているのは、ギアゴーストのトランスミッションだ。

 そう考えた立花はいった。

「ギアゴーストは、農機具のトラックター用トランスミッションとして最適な仕様に設定しているのだ。だったらバルブもそれに寄り添うべきだろう。いまのウチのこのスペックはーーー無駄なんだよ」

-8-(ケーマシナリーと中川弁護士の秘密話)

 師走に入り、クライアントなどとの会食が多く開かれている。 

 そんな中、大手トランスミッションメーカー・マシナリーの知財部長・神田川敦は接待相手の田村・大川法律事務所の中川弁護士とそれぞれのグラスにビールが注がれるのを待って、グラスを高々と掲げた。

「………。中川先生。今年一年。お世話になりました」との神田川のお礼の言葉に、中川は、

特許承認、おめでとうございます。これで、次の段階へ進めますね」と笑みを浮かべ、続けて、「本件がうまくいったら弊所と顧問契約をお願いします」と軽く頭を下げる。

 話が進んで、中川が口を切った。

ところで、相手への請求金額は、私どもで提案させていただいた当初の予定でよろしいですね」

「異議はありません。是非、それでお願いします」と神田川は答える。

              

 [第一章の「ヤマタニからの大幅受注減」の問題がおきてから半年近く経っていた。]

 [佃は、バルブを開発し、トランスミッション戦略の第一歩を踏み出したかに見えた]

  「第五章 ギアゴースト」に続く

 

 

 

 

 

 

 

 

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