T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

[ 「空飛ぶタイヤ(上)」を読み終えて-3/6- ] 7/1・水曜(雨・曇) 

2015-06-29 11:13:51 | 読書

[第二章 ホープとドリーム]

(1)

 ホープ自動車販売部カスタマー戦略課長の沢田悠太は、最近契約したコンサルタント会社が提案した大幅な組織改編を会社が受け入れ、それまで担当していた販売戦略から顧客対策を任されるようになった。彼は、バランス・スコアカード(業績評価システム)の取り入れに伴う改編だが、決済に回ってくる書類は、従来、お客様相談室のオペレーターが受けていたようなクレーム報告ばかりで、余計な提案をしてくれたものだと思っていた。

 沢田の未決済箱に、赤松運送からの「タイヤ脱落の原因は整備不良とは考えられないのに、短絡的な表面調査のみで断じるのはメーカーとして無責任な対応としか言いようがない」とする再調査依頼書に、担当の北村信彦の「港北警察署に整備不良が原因だと正式回答しており、処理済案件との立場で申し出に応ずる必要はないものと思われる」との回答案がついた文書が入っていた。

 沢田は、「無責任な対応」という言葉に怒りを駆り立てられ、こいつはクレーマーに近い、そもそも、自社の整備不良で起こした事故なのに、メーカー側に責任をなすりつけるとは責任転嫁も甚だしいと思い、「当事者には販社を通じて説明を徹底させること」とのコメントを添え、怒りと共に決済箱に叩き込んだ。

(2)

 再調査はできないとの返答を持ってきた益田に、赤松は、ホープ自動車が警察に出した調査結果を見せてくれと言う。益田は、捜査資料だから無理だと答える。赤松は、だったら再調査してくれと益田と押し問答の結果、自分がホープ自動車と交渉すると、益田から「販売部カスタマー戦略課・沢田」という担当責任者名を聞き出した。

 赤松はすぐ沢田に電話したが、待たされたあげく、席を外しているとのことだったので、電話をもらうことで電話を切った。その間、益田が傍らに立っていて、ほっとした表情だった。

 赤松は、自動車会社と販売会社との上下関係がどうなのか、ことホープ自動車に関していうと、親方日の丸というか、販売会社社員の気の遣いようは、売らせてもらいますという異常さを感じた。

 外回りから午後の5時近くに戻った赤松は、沢田に電話したが、電話口に出た男からは、沢田は本日は戻りませんとの返事だったので、明日はどうかと聞くと、いると思いますと言われ、いるかいないのかぐらいは分かるでしょうと赤松は怒りが込み上げてきて、明日朝一番で電話をくださいと言って電話を切った。

 沢田は居留守を使っていて、直ぐ益田に電話して、「私どもが直接お話しすることではない。販社できちんと対応してください、いいですね」と、乱暴に受話器を置いた。

(3)

 電話を切ったばかりの赤松のところに宮代が来て、取引先の太平洋産業の社長から、うちが起こしたような事故が群馬でもあったらしいことを聞きましたと、新聞記事のコピーを差し出した。

 半年前の5月6日、高崎市の路上で大型トラックが道路脇のコンクリート壁に激突し、運転手が両足切断の大怪我を負った。事故の原因はスピードの出し過ぎと掲載されていた。

 宮代が、記事には書かれていないが、運転手の話だと、タイヤが外れたと言っているそうで、警察では、タイヤの外れが事故の前後を明確にせず、ホープ自動車の千調査により、整備不良としているとのことですと言う。

(4)

 翌朝、益田から赤松に電話があり、製造元から連絡があって、再調査は何度やっても同じということで納得いただきたいと、沢田の返事を伝えてきた。赤松は、ウチに電話してこいと言ったはずだ。大企業だからといって客を馬鹿にするなと、沢田って人に伝えてくれと言って、高崎に向かった。

 タイヤ脱落事故を起こした児玉運送の社長から、事故現場を案内してもらって、事故後の状況も話してもらった。

 怪我した運転手が原告の裁判で、事故原因は、「ハブの摩耗に気づかず交換しなかった整備不良」だとするホープ自動車による調査結果資料が提出された。相手が運転手だったので、控訴しなかったが、調査結果には納得しておらず、車輛の構造的な欠陥かなと思っていると児玉社長は言った。

 そして、児玉社長は続けて、整備不良で家宅捜査を受けて1週間も経っているのに逮捕されないのは、押収した証拠品を分析しても整備不良の証拠が揃わないからでしょうと赤松を励ました。

(5)

 児玉を訪ねた日の夜、史絵が赤松に、変だなと思えることがあるわと話しかけた。「実際の整備状況を見もしないで、客の整備不良が事故の原因だなんて断定するのはおかしいと思うわ」と。赤松は言われてみれば確かにそうだと思った。

(6)

 翌日、赤松は益田に連絡して、販売部の沢田とのアポを取ってもらった。約束の時間は、その翌日の午後2時になった。

 応接室で、赤松と無理について来た益田が待っていると、沢田は急用ができたと部下の北村係長が入ってきた。

 赤松:「納得できないので、再調査していただきたい」

 北村:「納得されるかどうかは、そちらの問題で、当方としては、きちんと調査したので同じ調査を繰り返す理由がない」

 赤松:「調査結果を見せてもらいたい」

 北村:「調査結果は依頼された警察に提出してある。弊社には関係ない」

 赤松:「整備不良だなんて、ウチの整備状況を見もしないで、なんでそんな結論が出るのですか」

 北村:「御社まで足を運ばなくても、事故車両の破損個所を見れば整備されているかいないかぐらいのことは一目瞭然です。整備不良でないことを主張するために、我が社の調査結果が間違っていることを言いたい気持ちは分かるが、それは違うのではないですか」

 赤松:「お宅にはCSという言葉はないのか」

 北村:「ありますよ。本当のお客様の満足をいただくために頑張っています。私どもにもお客様を選ぶ権利はあります。違いますか」

 赤松は、どうなってんだ、この自動車会社は、タイヤが外れる前に、こいつらの心からもっと大切な部品が外れちまったんじゃないかと思った。

(7)

 居留守をつかっていた沢田は、どう説明しても納得しない莫迦だよと言いながら席に戻った北村に、これでとやかく言われる筋合いはない、もう再調査されても無視だなと言う。

 その沢田の判断の中に思いがけない波風が立ったのは、その晩のことだった。

 残業していた沢田のとこに、品質保証部の室井課長が来て、赤松運送からクレームが来てないかと言う。沢田は室井の意図が分からず、来たとだけ返事した。室井が、さらに、どんなことを言ってきたと聞くので、沢田は、再調査の依頼だが何か気になることでもと答えた。

 ホープ自動車の品証保証部の仕事は、製造部門のお目付役的なもので、事故調査も品保証部がやったのに、調査報告済みのその案件について品質保証部が気にすること自体に、沢田は違和感を感じたのだ。

 室井からの返事が無いので、沢田は、もう一度、調査に問題か、気になること事でもあったのか聞くと、まさかと言ってフロアを出て行った。

 引っ掛るものを感じて、沢田は、車両製造部にいる友人の小牧課長に電話した。沢田は、室井との経緯を話しして、もしかすると品証部の連中をとっちめられるかもしれないので、お前の知合いの品証部にいる村井に探りを入れてみてくれないかと告げた。小牧は同意して電話を切った。

 ホープ自動車には官僚的な社風があり、社員の関心事は内へと向いていて、沢田も、事故の真相ではなく、品質保証部のミスを探り出して、奴らの鼻っ柱を折ることができればと思っていたのだ。

(8)

 ちょうど同じ頃、赤松運送では社内会議が開かれていて、赤松から、今のままでは再調査に応ずる可能性が無いと報告され、今後の対応について協議なされていた。

 警察の動きが見えないこと、資金繰りが苦しいことについて討議がなされた後、谷山整備課長から、「事故原因はホープ自動車じゃなくても調べれば判るのではないですか、ただ、肝心の車両部分の部品が手元に無いのですが」と言われ、赤松は半ば唖然として、そうだよと顔を上げ、事故調査の鑑定なら他でもやってくれるはずだ、早速、ホープ自動車に部品の返還を申し入れてみようと結論を出した。

(9)

 小牧が、沢田から電話があった翌日、一杯やろうと沢田を誘った。

 小牧は、村野が担当外と言うので、昔、販売担当をしていた頃の俺の部下だった研究所の加藤だ、代わりに来てもらったと言って、30代初めの男を紹介した。

 酒が大分入った頃、小牧が加藤に、品質保証部の幹部と研究所の所長が集まる秘密会議があると聞いたが、目的はなんだと尋ねた。加藤が、センシティブなものでと隠そうとするので、小牧が何故だと突っ込むと、「タイヤのTをとったT会議といい、基本的には製造と品質保証で取り仕切ってる内輪の会議で、きっかけは、群馬の運送会社で起きた人身事故に我が社のトラックの不具合が絡んでいたのです。平たく言えば、タイヤ関係事故についての定例的な対策会議です」と答えた。そして、続けて「S評価は品質保証部が行なうもので、その評価の基準は主観的なものに過ぎません」と言う。

 ホープ自動車では、不具合情報はすべて品質保証部に集約され、そこで危険性などの検査の上、S1からS2,S3に評価分類することになっている。

 エンジン、ブレーキ、駆動系などの不具合によって事故が起きる可能性があると評価されるものは全てS1で、すぐさまリコール会議にかけられる。S2は、部品の不具合、S3は、さらに危険性が低いと判断される軽微な不具合で、これらはリコール会議にかけられることはない。

 沢田が、「つまり、本当にS1に分類される危険なものであっても、品質保証部の匙加減次第では、S2にもS3にもなるってことか」と聞くと、加藤は、「そういうことです。まともにいけばリコール対象のものもある」と答えた。

 沢田は、本来リコールすべきものをだな、評価変えして社内で対応するってのは要するにリコール隠しだと言ってから、やり残した仕事を思い出したと言って外へ出た。

 会社に帰った沢田は、品質保証部へ行き、室井に、「お前ら、赤松の件、勝手にS1からS3に格下げして、事故原因を整備不良にしたのではないか。それはリコール隠し以外の何ものでもないだろう」と言い放った。口論はリコールの是非について及んだが、最後は、室井が、「お前らは黙って車を売っていればいいんだよ。高度な経営判断を伴う話に頭を突っ込むな!」と言って席を立った。

(10)

 翌朝、沢田は、販売部の野坂部長代理に呼ばれて、昨夜、品証部の室井と口論して仕事の邪魔をしたそうだが、大人になって組織の動き方を覚えろよと言われた。

 沢田は、午後遅く、また呼ばれて、野坂から、昨夜の件は忘れろと命じられたので、席に戻りながら、整備不良だと笑わせるじゃないか、整備が足りないのは、ホープ自動車という組織そのものだと呟いた。

                               (次章に続く)

 

 

 

 

 

 

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[ 「空飛ぶタイヤ(上)」を読み終えて-2/6- ] 6/28・日曜(晴)

2015-06-28 08:19:20 | 読書

「上巻 あらすじ」

 赤松社長とホープ自動車関係者とのやり取りは、できるだけ仔細に、その他の物語については、簡略または略することにした。

[序章]

 33歳の主婦・柚木妙子が、幼い男の子の手を引いて歩道を歩いているところを、赤松運送の新参運転手・安友がトレーラートラック(以下単にトラックとする)から外れた直径1mのタイヤに直撃され、妙子は、一緒に歩いていた男児と夫の2人を残して亡くなった。

 「これがままの手だよ。ずっとずっと忘れちゃいけない、ママの温かさだ。おまえとパパの大切な、大切なママだ」

[第一章 人生最悪の日々]

(1)

 赤松運送は中小企業で、二代目社長の赤松徳郎は、父親の後を継いで32歳で入社して10年、苦労の連続であったが、幸いなことに大きな事故に見舞われることはなかった。

 事故があった日、会社からの連絡で赤松は外回りから急遽、事務所へ帰り、宮代専務から「タイヤが飛んで人に直撃した」「過積載は大丈夫ですが、整備不良かもしれませんな。だとすれば会社の責任は重いですね」と事情を聴き、話をする間もなく、管轄の港北警察署から要請があり警察へ出かける。

 警察の担当は高橋真治という刑事だったので、赤松は事件だと認識した。安友と共に数時間に及ぶ事情聴収で車両整備状況、整備士の労働環境の仔細を訊かれた。しかし、タイヤが外れての事故となると、誰の責任なのか見ただけでは判らないので、二人とも逮捕はされなかった。

 赤松は事故の翌々日に行なわれた柚木妙子の通夜に行き、3時間ほど立ち続け謝罪の言葉を何度も口にした。

 赤松が通夜から帰ってくると、宮代は、事故があったトラックを整備した門田駿一を社長室に呼んできた。

(2)

 宮代に連れてこられた門田は、1ヶ月ほど前に赤松から注意された髪の金色メッシュはそのままだった。髪を金色メッシュに、耳にピアスをした門田は、赤松にしてみれば、意思の疎通にも苦労する異次元の人間だ。

 赤松は整備の話をする前に、「金髪は止めろって言っただろう。会社ではピアスは取れ」と、さすがに赤松もキレかかっていた。やっぱり、こいつの整備に問題があったんじゃないかと、疑いがとめどなく胸に溢れてきた。門田の返事はなく、目だけが鋭く赤松を射た。

 「人一人の命を奪ったことに対する反省ってのはないのか。ちったぁ態度を改めろ」と赤松の叱責が重なると、門田が赤松のデスクを蹴飛ばして、「うるせえ!」と言い放った。赤松の「とっとと出て行きやがれ!クビだ!」の怒りに、門田は、「辞めてやらあ」と、事務所を飛び出した。

(3)

 門田が辞めて数日が経った日、外回りから帰社した赤松のところに、宮代が、門田が書いた整備記録のバインダー式手帳を持ってきた。

 昨日まで連日、陸運局の監査が入り、徹底的な検査が行われて、結果は減点なしで監査官も意外に良くやっているとこぼすほどの好成績だったが、赤松はその応対でくたくたに疲れていた。

 手帳の中を見ると、門田は、業法で定められている点検項目の他に50項目にも及ぶものにチェックが入っていた。

 赤松は、「やっちまった」と顔をしかめて立ち上がり、いまから行ってくるから、門田の住所を教えてくれと、宮代に言った。そして、住所の地図をポケットに赤松は車を飛ばした。

 赤松は、日頃から俺は「仕事の中身で勝負しろ」と言っていたが、門田は俺の信念を見極めたかったのではないか、だとすると俺は落第だと、何度も舌打ちした。

 「すまなかった。俺が間違っていた。戻って来てくれないか。この通りだ」赤松は頭を下げた。「人一人死んだんですよ。誰かが責任取らなきゃいけないんじゃないんですか」思いがけない門田の言葉に、「莫迦。おまえの考えることじゃないよ」と、赤松は込み上げてきた熱い思いに打たれた。

 翌日、いつもの様に出社してきた門田を、赤松は手を上げて応え、宮代も谷山も何もなかったように迎え入れた。

(4)

 赤松運送の事故車両は現場検証の後、ディーラーの東京ホープ販売が回収し、修理のためホープ自動車へと運び込まれていた。

 高幡刑事が赤松を訪ねてきて、事故原因の調査のため、その修理部品をホープ自動車に鑑定を依頼したことを知らせた。赤松が、修理部品はどの部分だと尋ねると、共に来ていた吉田刑事が、車軸とブレーキドラムとを接続している「ハブ」だと言い、貴社が委託している整備会社での車検は法律通り完了していたが、あの車は、最近、運転ミスで側溝に脱輪した事故を起こしているのに点検していないので、整備不良の責は残っていると言った。

 とにかく、調査が終わるまで待ちましょう。話はそれからだと言って、高幡たちは帰って行った。

(5)

 赤松のところに、その日の夕方、大口取引先の相模マシナリーの配送以来担当者の平本から、翌日、来社してほしい旨の電話があった。

 事故を起こした赤松運送のトラックは、相模マシナリーから依頼された工作機械を載せていたのだ。

 指定された時間に訪問した赤松に、平本から、工作機械の修理保証に9000万円と、生産遅れの損失穴埋め金600万円の請求、それと、当面、整備不良の会社とは取引できないと仕事の打ち切りを役員から指示されたことを告げた。積載品へは保険をかけていたので、ともかく、仕事を打ち切られたことで赤松の頭には「倒産」のことがちらつき始めた。

 赤松が社に帰ると、宮代から運転資金が窮屈になったので、年内分として3000万円を銀行から借りてきてほしいと言われた。

(6)

 赤松は、子供3人が小学校に行っていることから、PTA会長をしていた。

 赤松が帰宅すると、妻から、委員の一人がPTA会長を辞任したらどうかということを言い触らしていること、そして、長男が、人殺しの子と苛められていることを聞かされた。

(7)

 翌日、赤松は、事務所へ行く前に東京ホープ銀行自由が丘支店へ行き融資を願うと、融資担当の小茂田鎮は、支店長はコンプライアンスを気にして、業務過失致死傷ということになると銀行としては支援しにくくなるので、警察の捜査が終わるまで待ってくれないかと言う。

 赤松は社に帰り、宮代に他の銀行を当たってみてくれと指示した。

 そして、次に、赤松はディーラーの担当の益田に、警察が事故原因の鑑定依頼をホープ自動車に出していると聞いているが、その調査がどうなっているか調べてほしいと頼んだ。

 しかし、それから2日経っても益田はあいまいな返事を寄越すだけだった。

 その翌日の朝、港北署の刑事の高幡と吉田が他の20名ほどの捜査員を連れて事務所に来て、家宅捜査令状を示し、ホープ自動車からの分析結果が出て、事故原因は運送会社の整備不良にあるとの結論が出たといって家宅捜査をしだした。

                               (次章に続く)

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[ 「空飛ぶタイヤ(上)」を読み終えて-1/6- ] 6/27・土曜(曇)

2015-06-27 14:16:03 | 読書

「上巻概要と解説」

 直木賞受賞作家池井戸潤の作品。直木賞と吉川文学新人賞の候補作品。

上巻の裏表紙より

 走行中のトレーラーのタイヤが外れて歩行者の親子を直撃した。

 ホープ自動車が出した「運送会社の整備不良」の結論に納得できない赤松運送会社社長の赤松徳郎。

 真相を追及する赤松の前を塞ぐ大企業の論理。

 家族も周囲から孤立し、会社の経営も危機的状況下、絶望しかけた赤松に記者・榎本が驚愕の事実をもたらす。

解説より

 紛れもなく面白い小説である。

 面白さの絵解きは、主に二点に集約される。

 一点目は、この物語の悪役、ホープ自動車に対する作者の筆さばきの見事さである。まずは歯牙にもかけない、お前など敵にもしないという傲慢さ、エリート意識の集団としての企業を描いて見せ、そこここに見え隠れする大企業ならではの思い上がり、社員のエリート意識は鼻持ちならないものの、いかにも実在しそうな印象があり、これなら、そこいらのやくざ者のほうがかわいいいうくらい憎らしい。

 二点目は群像を描くことの巧みさ、ことに市井の、いくらでも我々の周りにいそうな、平凡な人間たちとその意地を描く人にかけて池井戸潤は優れた腕を持つ。特に集団を描くことに長けている。この作品は、実に多くのの人間が登場し、それぞれの立場、それぞれの思いで迷い、決断し、行動する。しかも、それらはすべて意外でも何でもなく無理がない。多くの登場人物を、将棋の全ての駒を使うように動かし、少しずつしかし確実に大団円へ持っていく手並みは鮮やかである。

「上巻登場人物」

[赤松運送]

 赤松徳郎: 主人公。二代目社長。

         尾崎西小学校PTA会長。大学時代は体育会柔道部員。

 宮代直吉: 専務。運行管理者兼務。

 門田俊一: 入社3年目の自動車整備士。

 谷山次郎: 整備課長。整備管理者兼務。

 安友研介: タイヤ脱落事故の運転手。入社半年目の30歳半ば独身。

 高嶋泰典: ドライバー兼総務課長。事故発生後、会社の将来性を考え転職。

[赤松徳郎の家族]

 赤松史恵: 徳郎の妻。

 赤松拓郎・萌・哲郎: 徳郎の長男、長女、次男。長男はいじめに遭う。

[被害者とその家族]

 柚木妙子: 被害者。33歳。

 柚木雅史: 被害者の夫。

 柚木貴史: 被害者の一人息子。

[ホープ自動車]

 沢田悠太: 販売部カスタマー戦略課課長。

         後に商品開発部課長の閑職に左遷。

 北村信彦: 沢田の部下。

 花畑清彦: 販売部長。のちに常務に栄転。

 野坂明義: 販売部部長代理。

 小坂重道: 車輛製造部課長。

 狩野 威 : 財務担当常務。「リコール隠し」の張本人。

 柏原    : 品質保証部長。

 一瀬君康: 品質保証部部長代理。  

 室井秀夫: 品質保証部課長。

 杉本 元: 品質保証部部員。ネットワーク管理者。後に大阪の閑職部署に左遷。

 三浦成夫: 財務部係長。

 浜崎   : 人事部副部長。

[東京ホープ銀行]

 井崎一亮: 本店営業部調査役。ホープ自動車融資担当。

         「週刊潮流」記者の榎本喬とは大学時代の友人。

 濱中譲二: 本店営業部長。

 紀本孝道: 本店営業部次長。

 巻田三郎: 専務。

 田坂 茂: 自由が丘支店長。

 小茂田鎮: 自由が丘支店融資課課長代理。赤松運送担当。

[はるな銀行]

 中村桂子: 蒲田支店長。

 進藤治男: 鎌田支店融資課長。

[その他]

 高幡真治: 50歳前後の老練な港北警察署刑事。

 吉田   : 港北警察署の若手刑事。

 児玉征治: タイヤ脱落事故を起こした高崎市の児玉通運社長。

 榎本 喬: 「週刊潮流」記者。井崎一亮の大学時代の友人。

 平本末嗣: 赤松運送の運送依頼取引先・相模マシナリーの配送担当者。

 益田   : 東京ホープ販売の営業課長。赤松運送担当。

 小諸直文: 赤松運送の新鋭顧問弁護士。

                        (「上巻あらすじ」に続く) 

 

 

 

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[ 夏至 ] 6/22・月曜(曇)

2015-06-22 11:36:45 | 日記・エッセイ・コラム

 今日は夏至。

 ローカル新聞のお天気欄に、きょうは1年で最も昼が長い「夏至」。

 冬至のカボチャのように全国的に何かを食べる風習はないが、

明るい時間が長く、疲れがたまりやすい時期なので、旬の食べ物を積極的に取ろう。

 と掲載されていた。

 夏至の漢字からのイメージは、「夏の太陽がガンガンと朝から夕方の遅くまで照っている」といった感じだが、

実際はうっとしい日や酷い雨などの不順な天候の日が続いているので、

新聞のように何か疲れが溜まっているような気がする。

 

 ジョン・マンの1.波濤編、2.大洋編を読んだ後、ブログにあらすじをUPしたので、

最近出版された文庫本の3.望郷編を購入した。

  2.大洋編の終わりは、

救助されてホノルル港についた筆の丞や重助、ジョン・マン達5人は、

日本に帰りたいが、船賃が高い。

 ジョン・マンは一人、皆の船賃を稼ぐために、続けて捕鯨船に乗り、一旦母港の米国東岸へ向かう。

 と、いったところだった。

 望郷編は、そこからの物語。

 ジョン・マンは、約束通り船賃を稼いでホノルルに帰り皆に会うことができるのだろうか?

 読みたい本が溜まってきた。「空飛ぶタイヤ」のあらすじを早くブログにUPしなければ。 

 

 

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[ 俳句の鑑賞力をつけたい!! ] 6/20・土曜(曇)

2015-06-20 11:27:32 | 日記・エッセイ・コラム

  昨夜、NHKテレビで、脳の細胞は高齢者になっても活性化、育成化する?と言っていた。

 僕の趣味の一つが読書。それも小説を読むこと。

 その読書の仕方は、まず、最初のほうを一読する、いわゆる一見する。

 次に、面白いと思ったら、巻末の解説を読む。(面白そうでなければ一読で終わる。)

 そして、その作品の粗筋をブログにUPするために、

解説を参考にして集中して熟読しながら、

心に触れたところ、作品のポイントになるところに付箋を付ける。

 最後に、粗筋を作品の文章を抜粋した形で文章にまとめる。

 そして、ブログにUPする。

 これで、脳の細胞は活性化とはいかないが、衰えはないと思う。

 しかし、粗筋の纏めには半月ほどかかるし、この頃はあまり外出しないので、

ブログが1週間ほどUPできないことがある。

 そんなことから、昔、辞書として見ていた写真の本を、

ブログがUPできない日に読んで、本の中の鑑賞文を短文に纏めて、

ブログにUPしてみようと思う。

 これで、一石三鳥か?

(俳句の鑑賞力がつく、ブログが少しでもUPできる、脳が活性化する)

 

 

  

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