T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

[ 「ホワイトアウト」を読み終えてー6/6- ] 5/1・金曜(晴)

2015-04-30 15:58:17 | 読書

 51. (笠原は湖面上に水中スクーターのライトを探索していた)

 笠原は、湖畔部分の氷が一番脆いところをスノーモービルのライトを左右に首を振って、水中のライトを探していた。千昌は不思議に思って尋ねた。

 笠原が我々はオホーツク海の羅臼沖で流氷の下に相互に品物を沈め、水中スクーターを利用して引き揚げるといったロシア警備隊との密輸で自動小銃などの武器を手に入れたのだ。

 ウツギは、密かにスキー場が営業している時期に、この奥遠和に水中スクーターを隠しておいて、バッテリーだけを常に持ち運んでいたのだ。今、そのバッテリーを使って水中スクーターを動かし、この湖畔のどこかに隠れているウツギの本当の仲間のところに向かっているのだ。

 千昌が、お金が手に入っていないのにと不思議がると、ウツギが警察と通信していたように見えたとすれば、あれば芝居で、実際はこの奥遠和の近くに潜んでいたウツギの本当の仲間が警察と交信し、その結果がウツギに連絡されていたわけだ。

 それから、先ほど、ウツギが制御室で無線機の前で空線信号を待っていたが、あれは、仲間から、金も既に手に入り、脱出のヘリも用意できたという合図の信号音だったのだ。だから、信号音を聞いて、巡回に行くと言って制御室を出て行き、この湖のどこかから水中スクーターに乗ったと、話してくれた。

 52. (富樫は、スノーモービルで近づいてきた戸塚と坂下を湖に沈めた)

 富樫は湖面や斜面を動き回るスノーモービルを見て、俺を探しているのではなく、自分らが脱出していると見えた。しかし、脱出するには奥遠和ダムのヘリポートからでは、警察の追跡がある。とすれば、遠和川水系最上流に片貝ダムがある。そこのヘリポートから、仲間の用意したヘリコプターで飛べば秘密裏に脱出ができると思った。富樫も片貝ダムに向かった。

 そのうち、先ほどのスノーモービルが近づいてきた。富樫は身を隠してやり過ごしたが、後ろから見ると、スキー場の救急用で、後ろに牽引する荷台に女性らしき人が乗っていた。

 暫くすると、後方からもう一台スノーモービルが近づいてきた。今度は運悪く見つかってしまい、こちらに向かってきた。富樫は、自動小銃でスノーモービルの前面の湖面を連射した。氷が割れて、犯人2人は水に沈んでいった。富樫は犯人が乗っていたスノーモービルで先に行ったスノーモービルを追いかけた。

 53. (笠原が外にいたウツギの仲間に射殺される)

 千昌がウツギは何処に向かっているのか笠原に訊ねた。笠原は、奥遠和ダムの奥にある片貝ダムのヘリポートから仲間が用意したヘリコプターで逃げようとして、今、水中スクーターでそちらに向かっているのだと告げた。

 湖畔を進むスノーモービルの前方に湖面の下を進む水中スクーターのライトを見つけた。水面に浮上したウツギに拳銃を撃ったが水中に隠れた。次にウツギが出てきた時、笠原が湖に向かって歩を進めた時に隙が出たのか、横から銃声がして笠原が射殺された。千昌は林に向かって走った。続けて、ウツギの仲間が撃った弾で笠原が乗っていたスノーモービルは炎上し、千昌も傷を負って倒れた。ウツギの仲間は千昌も死んだと思い、スノーモービルにウツギを乗せて奥に走った。

 54. (テロリストから予約を受けたヘリ会社が、郡山、宇都宮、浦和、川越にあった。

     奥田は、今日の予約を受けた会社へ車で走った。)

 あらすじ略

 55. (富樫は笠原の死体を見つけるも、千昌の姿が見当たらなかった)

 片貝川の谷に冨樫のスノーモービルは入っていた。暫く行くとスノーモービルが炎上していた。傍らに犯人らしき者が死亡していたが、同乗の女性らしき人は見つからずに先を急いだ。

 56. (犯人3人が雪崩の中で死んでしまった)

 富樫は前方にスノーモービルのトレール跡を見た。距離が詰まり20mと離れていなかった。人影は3人。先を行くスノーモービルが廻り込み銃声がなった。富樫の乗ったスノーモービルのどこかに命中したのだろう、雪の中に投げ出され三回転ほどした。敵は30mほど先から、また小銃の銃声がした。その瞬間、雪崩が起きて犯人達は埋もれてしまった。

 富樫は何んとか雪の外に泳ぎ出た。そして、近くの2mほどのサワシバを折って、雪崩の後の膨らんでいる場所をつついて歩いた。結果、3人の男が死んでいた。女性はいなかった。

 富樫は、疲れた体を一歩づつ前にだし、奥遠和湖のほとりの斜面に出てきた。

 57. (千昌の耳に、和志が教えた雪の積もる音が聞こえてきた)

 千昌は奥遠和に来て二度目の夜を、和志に教えてもらったように湖畔の枝下の僅かな窪みの中で膝を抱えて震えながら過ごした。

 さらさらと何かのこぼれ落ちるような音が微かに聞こえ続けている。千昌はきっとこれが和志が言っていた雪の積もる音なのだと思った。その音が徐々に大きくなってきた。キュッ、キュッと雪の結晶の触れ合うような音が聞こえる。誰かが自分の許に近づいてくる足音のようにも聞こえた。

◇ エピローグ

 千昌は長見市民病院の一室で気がついた。3時間前に左腿を縫合したばかりなので無理しないでと看護婦が注意した。

 千昌が気がついたことを知らせれて医師が入ってきて、助けてくれた男性に感謝しなさいと教えてくれた。その後を受けて、長見署の奥田ですと自己紹介してから、その人はダム運転員の富樫輝男さんという方で、手足の一部を凍傷によって失われ、今は昏々と眠り続けておられますが、命には別状はないと知らせてくれた。

 奥田からの事情聴収に、千昌は、気を失った時までのことを仔細に説明した。

 千昌は医師の了解を得て、隣室の富樫のベットサイドへ行くと、点滴を施すために冨樫の左手が毛布の先から少し出ていた。千昌はそっとその手に触れてみた。和志と同じような手の感触だった。冬山から帰った後の和志は、いつも、こんなかさかさとしたひび割れだらけの手をしていた。千昌には和志の手の感触が甦ってくる。そのざらつく荒れた男の手を頬に当てた。

 富樫の手がびくりと震え、力強く触り返してきた。そして、ゆっくりと、富樫の瞼が開こうとしていた。

                                  (終)

 

 

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[ 「ホワイトアウト」を読み終えて-5/6- ] 4/30・木曜(曇)

2015-04-30 10:45:15 | 読書

 41. (対策本部は50億円がスイスの銀行の匿名口座に送金されたとみた)

 中央から現地対策本部に、両替した送金の詳しい報告が入った。

 スイスの銀行では、住所・氏名の替わりに顧客番号と暗証番号を利用する匿名口座が認められていて、客は自分の素性を銀行側に伝えることなく、取引いわゆる送金ができるのだと知らされた。それで、犯人が要求した50億円は、対策を打つ時間もなく、すでに匿名口座に送金されてしまったとのことだった。

 そんな時、皆川の身元が判明したと、中央から現地対策本部にFAXが入った。テロ集団「赤い月」のメンバーと目される中川研に似ているとのことだ。また、そのことから、東日本電力の元社員で、「赤い月」の爆破テロで妻子を亡くした小柴卓也の退職後の消息が不明だということも連絡があった。

 42. (ウツギは制御室の無線機の前で時計ばかり気にしていた)

 テロリストたちの間には、富樫の行動が重く頭上にのしかかっていることもあり、彼らの間に緊張感が漂っていて、ウツギは無線機の前で腕組みをし、時計ばかり気にしていた。

 43. (富樫は奥遠和に戻ってきた。対抗手段はヘリポートの破壊だと思った)

 前方に見える夜の山の稜線が、うっすらと明るくなっていた。富樫は雪の中で立ち止まった。丸山のスキー場のナイター照明だ。侵入者達がナイター用のライトを全て点灯させているのだ。富樫は、この天候ではヘリコプターの発着のためとはいえない、だとすればなんのためにと思いながら、自分の行動が侵入者達に悟られないように警戒しなければと注意した。

 富樫は、敵は多数なので、自分の存在を敵に悟られずに対抗する手段があるだろうかと考えた。あるとすれば、ヘリポートの破壊しかないだろう。そのヘリポートは自分の今の位置からはダム湖の向かいの左側にあるので、湖の上のほうを遠回りして横切る方法しかなかった。

 そこまで考えた時、富樫はあまりにも光り輝く照明灯を見て、侵入者達は自分がこの奥遠和に戻ってくるのを読んでいたのだと確信はした。

 44. (ウツギは無線の信号音を聞いて一人で一番手の巡回に出る)

 ウツギの前の無線機に空線信号が入った。他のテロリストたちは何かと集まったが、その後は無音だったので元の場所に戻った。しかし、ウツギは、そろそろ時間になったので自分が一番手に1人で巡回すると制御室を出て行った。

 千昌は厨房で拾ったダブルクリックで手錠を外そうと手錠の鍵の穴を懸命にいじっていた。テロリストのうちの髪を後ろで束ねた男の須山が、それを見つけて、千昌の拘留場所を他の人質と同じ地下倉庫に移すべきだと思い、自分のトランシーバーでウツギに連絡を取った。しかし、返答がないので、須山は呼びかける相手を変えて湖畔荘あたりにいる坂下を呼んだが、応答が無かった。笠原が制御室の無線で呼んでも応答がない。

 須山が妨害電波のためではないかと言うので、念のため警察に通信してみた。長見署と繋がり、応答があった。笠原が「仲間たちはもう釈放されたんだろうな」とかまをかけてみた。その返事が「今、全国の刑務所から護送車がこちらに向かっている。天候が回復すれば要求の50億円と共にヘリで送れるはずだ。安心してくれ」との返答だった。今までのウツギの対応から、笠原はその内容に不審な部分を感じていた。

 45. (富樫は奥遠和を白く埋め尽くす深雪と闘っていた)

 あらすじ略

 46. (笠原はウツギが単独行動をとったことに気付く)

 笠原は須山に妨害電波は出ていない、内線電話で戸塚(1号館)と連絡を取って、戸塚が持っているトランシーバーでウツギを呼んで制御室に電話するよう連絡してくれと受話器を渡した。

 暫くして、戸塚から、坂下とは連絡が取れたが、ウツギとは連絡が取れないと内戦に連絡があった。

 笠原は、ウツギが驚いて、電話をしてくるだろうと、窓から拳銃を放った。ウツギから何もなく、戸塚から何があったのかと電話があり、とにかく、坂下と一緒に制御室に戻るとの連絡があった。

 そんな時、千昌がアッと言う。先程、引き寄せ中を見て、制御室の入口に投げておいたザックが無いのだ。その声で、笠原と須山はザックが1つ無くなっていることに気づいた。

 笠原は、戸塚達の行動の統制を須山に任せて、外に出た。

 47. (富樫は奥遠和のヘリポートに向かって一歩一歩、足を進めていた)

 あらすじ略

 48. (奥田は、テロリストはヘリを自分で予約していると推測した)

 奥田は、煙幕を張る方法で金を要求しておいて、実際は別の方法でスイスに送金していたので、ヘリについても裏があり、自分らで準備しておるのではないかと思って、望月部長に調査許可をもらった。

 49. (千昌は笠原に救われる)

 戸塚と坂下が制御室に飛び込んできた。須山が応答に要領を得ないので、千昌に見たことを素直に白状しろと迫った。千昌は、手錠を外すことを交換条件にして、ウツギがバッテリーが入ったバックを持って外に出たことを話しした。

 千昌は、犯人らが口論している隙を見て、外に逃げた。運よくスノーモービルに乗る笠原に救われ、ウツギを探しに湖上に出た。遠く後ろから戸塚と坂下がスノーモービルで追っかけて来た。

 千昌が、須山は戸塚に制御室で射殺されたようだと告げていた。

 50. (富樫は、湖面の氷の具合を確かめている荷台付のスノーモービルを発見した)

 あらすじ略

                                    (次章に続く)

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[ 「ホワイトアウト」を読み終えてー4/6- ] 4/29・水曜(曇)

2015-04-28 16:01:42 | 読書

 21. (富樫は一か所だけ逃げ口が残っているのを思い出した)

 富樫は斜坑跡に向かった。扉口まで20m程に近づいたとき、地鳴りのような爆発音がした。雪崩で扉が閉まったのだ。そして、次々に爆発音がした。犯人が出口を爆破したのだと思った。

 富樫は出口が一か所だけ残っていることが閃いた。水を止めて地下発電所から外へ出ることだ。

 22. (千昌は笠原に人質の食事をリーダーにお願いしてくれと頼む)

 あらすじ略

 23. (政府対策本部が警察庁に設置される)

 県警本部から警察庁を通じて内閣に報告され、秘密裏に、警察庁に政府対策本部を設置された。

 中央の対策本部から出された指示は、シルバーラインの復旧作業、テロリストたちの割り出し、制御装置の操作を行っていることから電力会社退職者の追跡調査、奥遠和ダムの下流にあるダムの放流であった。

 また、中央本部の全国への指示で、昨年暮れに御殿場の火薬工場から薬品が盗難があったことや、東日本電力の本社ビル爆破の関連情報が入り、その分析が始まった。

 24. (富樫は地下で休眠を取る)

 富樫は、内線電話を使い犯人達の応答から、人数は5人だと判断、翌朝まで休眠を取った。

 25. (千昌が人質の分まで食事を作り、ウツギを怒らす)

 あらすじ略

 26. (現地対策本部で報道協定の申し入れを行った)

 中央の対策本部の指示による赤柴ほかの下流ダムの調整一斉放流や新潟と福島の一部停電、シルバーラインの復旧工事から、何か事件が起こっていることを地元マスコミの知ることになり、中央の許可を得て、現地対策本部で報道協定の申し入れを行った。

 27. (富樫は発電機を止めて放水路の水を空にしてダムからの脱出を決意した)

 富樫は目覚めて、ようやく立ち上がりウォーミングアップをした。

 ここから脱出するには水力発電を止める必要があるが、犯人達は、こちらの行動を感知して、再度、ダムの出入口を爆破してダムの中に入り、発電を開始、放水をするだろう。となると、放水路に水が流れ、自分は水に流される、しかし、時間的に間に合うだろうと考え、富樫は放水路からの脱出を決行した。

 28. (犯人達も明かりが消えたことで、富樫の放水路利用脱出を察知した)

 富樫の行動を察知した犯人達は、ダムの出入口を爆破して、ダムの中の発電機を動かした。

 29. (富樫は放水路を流れる水に身を任せた)

 いくら走っても、富樫の目には、放水路の先に針先ほどの明かりも見えない。背後からドーッと言う水音が聞こえてきた。

 発電機が動き出したのだ。もう1分もしないうちに水が押し寄せてくる。富樫は、右手で衣類を力の限り抱きしめて水の衝撃に身を任せた。

 30. (千昌は手錠を外せる道具を探した)

 千昌は、誰もいない制御室の前の廊下で、廊下の手すりに片方の手に手錠をかけられていた。その手錠を外せる道具を見つけようと、靴ひもやベルトなどを使って制御室の入口に見えるナップザックを引き寄せた。中は道具になるものは入ってなく、バッテリーや電池が入っていた。もう一つのナップザックと思ったが、犯人達の靴音がしたので、仕方なく元の場所に投げ入れた。

 31. (放水口から流れ出た富樫は大白ダムに向かった)

 富樫は、気がつくと身体の回転が止まっていた。雪の降り続く谷の底に、富樫は捨てられた空き缶のように転がっていた。

 防寒着に入れていたライターが見つかり、枯れ木などを集めて暖を取った。いつまでも休んでいるわけにいかず、出発しようとして自動小銃を手放していることに気がついて、放水口まで引き返してやっと発見した。そして、直線距離で5kmの大白ダムを目指した。

 32. (犯人側から50億円の準備時間24時間の確認を求められた)

 午前8時、中央のホットラインのベルが鳴った。望月刑事部長が応対し、犯人側との交渉は全て中央側が行なうことに決定したと署内の対策本部の捜査員に伝えた。

 その時、福井係長から、F系の空線信号です、犯人からの無線だと思いますと、奥田に声をかけた。

 応答した奥田は犯人に無線を切り替えることを告げた。犯人はしぶしぶ了解した。そして、中央から、これからは警察庁の藤巻が対応すると連絡した。犯人側から50億円の準備時間24時間の期限について、人質となっている所員の名前を読み上げたりして、再確認を求められ、藤巻は了承した。その後、犯人は24時間経った正午に電話すると言って無線は切られた。

 33. (千昌は戸塚の監視のもと厨房に向かった)

 あらすじ略

 34. (奥田は犯人の要求が現金だけのことを不審に思っていた)

 長見署内の対策本部では、今までの交信内容を踏まえて対策会議を開いていた。

 要求した50億円をどうやって受け取るつもりなのか、ヘリで逃げるとして着陸は何処を考えているのかなどの意見が出た。しかし、奥田は皆が頭から過激派組織と信じ込んでいることに不審を持っていた。もし、犯人が過激派組織であれば、刑務所に服役中のメンバーの釈放要求をするはずだが、それがないことから、犯人の実態が分からないことに頭を痛めていた。

 35. (千昌は厨房へ行く途中で戸塚から強姦されようとして笠原に助けられる)

 あらすじ略

 36. (犯人から50億円を2時までに米ドル札に両替するように要求変更があった)

 12時に犯人から電話があり、50億円が用意できたことを確認し、2時までに、スイス・セントラル・バンク東京支店で米ドルに両替しドル紙幣が足りない金額は自己宛小切手を発行してもらえ、そして、銀行に向かうそちらの代表者の名前を知らせろとの指示があった。警察庁の藤塚は、同行責任者は山根警部補と鈴木審議官と答えた。それと、へりは新潟空港にいる海上保安庁の「えちご」をリクエストする。操縦士は新潟保安本部の操縦士の中からを指名するので準備しておいてくれとの要求があった。

 37. (富樫は5時間ほどかかってようやく大白ダムの中に入った)

 富樫は歩きはじめてから4時間近くが経過し午後に入っていた。

 1時23分、ようやく大白ダムに到着し、鉄枠がついた窓からなんとか中に入った。まず発電機を動かし電力を確保するために機械室に急いだ。

 38. (富樫と長見署の奥田の情報のやり取りが可能になった)

 長見署の中を、雪崩に足元を掬われたような衝撃が駆け抜けた。

 大白ダムに何者かが入った侵入警報が鳴っているとの長見電力所からの通報があった。次に届いた通報は冨樫運転員だとのことだという朗報だった。

 大白ダムとの無線を長見署にも通じるようVHF無線に送電線通信を乗せて、奥田がマイクに向かった。

 富樫から、村瀬と岩崎が死亡したこと、人質は1号館の地下倉庫に、犯人達は殆どが開閉所にいて、私が2人殺し、残りは5人ないし6人、そして、死亡した一人は免許証から皆川正道と通報した。次いで、わかっている犯人の名前を、サカシタ、トツカ、スヤマ、カサハラと告げ、自動小銃と拳銃を持っていることを話しした。

 そろそろ2時になるので、奥田は冨樫の許しを得て、急ぎ、VHFのマイクをオフにして、犯人からの無線に切り替えた。

 しかし、今までと異なり、予定時間を3分過ぎても合図の空線信号が無く、不審に思っているときに、中央からの電話で、たった今、直接、銀行のほうに犯人から電話があり、待機中の鈴木審議官に、スイスのベルンにある本店の匿名口座宛に自己宛小切手の送金を命じたとのことであった。

 電話回線が切れていたのでなく、一時的に切断しただけかと対策本部の者全員が不審がっていた。

 39. (富樫は千昌らを助けたいために奥遠和に戻る気持ちは変わらなかった)

 富樫は、36時間ぶりに乾パンと飲料水を飲んで、使い捨てカイロで足を温めていた。

 そこへ受話器から富樫を呼んできた。奥田からだが、もう少し詳細な情報を知りたいと、県警の塚越公安管理官にかわり自動小銃や爆薬のことを聞いた。塚越が、思い出したいことがあれば、また連絡をくれと言うと、これから奥遠和に戻ると言い張った。奥田も止めたが、千昌や人質の所員を助けたいとの冨樫の決意は固かった。

 40. (ウツギは大白ダムの発電機だけが動いているのを発見し、

     富樫が生きていて戻ってくることを確信していた)

 大白ダムの発電機だけが動き出している。それを見たウツギは、富樫が確かに放水路から脱出して大白ダムに辿り着いたのだ。彼は俺たちの予想に反して必ずまた戻ってくる。その時間は、大白ダムへの到着の時間から計算して21時間になるだろうと思うので、みんなで20時から交替で周囲の巡回にあたるのだと指示した。

                                (次章に続く)

 

 

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[ 「ホワイトアウト」を読み終えてー3/6ー ] 4/28・火曜(曇)

2015-04-27 16:44:47 | 読書

 11. (犯人から24時間以内に50億円用意しろと要求が入った)

 署内の電気が4分程で復旧した。奥田は長見電力所と連絡を取って送電状況を聞き、東日本電力の東北地区から臨時に送電してもらえることの調整がついたことを知り安堵した。

 福井係長から、犯人からの呼び出しですとの声がかかり、奥田はマイクを受け取った。

 「24時間以内に、番号不揃いの札で50億円を用意してもらおう。24時間内に要求が聞き入れなければ、奥遠和ダムを爆破させてもらうことになる。では、20時間後にまた連絡する。」

 奥田が恐れていたのは、ダムの破壊や電力のストップなど社会生活の混乱であったので、少し安心した。

 奥遠和へ向かったパトカーから、ダムへ行く唯一の道のシルバーラインの11号トンネルの入口付近で落盤していることを報告してきた。

 12. (千昌は人質として落ち着いてきて、犯人の動きが目につきだした)

 制御室での所信への部隊長の暴力に千昌は恐怖で気を失い、数分後に気が付いた。

 いつの間にか犯人が5人になっていた。部隊長、笠原、戸塚の他に見覚えが無い髪を後ろに束ねた男とオールバックの男がいた。そして3人の所員は玄関にいた所員と一緒にどこかに集められているようだった。

 部隊長が、笠原に、麓の連中に揺さぶりをかけるが、ハウエルパンガーバルブの確認はできているなと聞くと、笠原は、ここからの開閉は不可能で、ダムの中に放流管ゲート室があるのでそこまで行かないといけないと答えた。部隊長はバルブの操作は簡単そうだからと戸塚と金子にゲート室行きを指示した。

 千昌は昼食の準備のために部隊長の監視のもと1号館の地下にある厨房に連れて行かれた。途中、厨房の上の階で小太りと角刈りの男が見張りをしていたので、所員がそのあたりで拘留されているのだと思った。

 13. (富樫はダムの放流を見て外部連絡から放流停止に行動を変更した)

 富樫は、外部と連絡を取るには下流の大白ダムに行くしかないと、自分のセータの裾をほどいて、蔦でガンジキを作っていた。

 その時、突然、奥遠和の谷にサイレンの音が轟き渡った。放流を告げる警報サイレンである。奥遠和ダムの天場から100mほど下のバルブが開かれ放流されているのが見えた。

 富樫は奥遠和ダムの貯水量から考え、福島側に続く下流の五つの満水している冬のダム全てが危機にさらされて遠和川流域の町村が濁流に呑み込まれてしまうのではないかと思った。

 富樫は、一番近い大白ダムの決壊する時間を概算した。はじき出された時間は150分。だとすれば、建設当時利用していた斜坑跡を通ってダムに入り、放流管ゲート室のバルブを操作する時間はあると確信した。

 14. (長見警察署内に対策本部を設けるも対策が出せない状況だ)

 県警本部望月刑事部長を本部長とする特別対策本部を長見署に設置された。当然、電力所の所員も構成員として加わった。

 しかし、奥遠和へ行く道はなく、悪天候でヘリも駄目でダムの近くにも行けないので、開閉所の状況把握が全くできないので対策が講じられない。犯人たちも24時間以内に札束を手に入れてもどうすることもできないので、脅かしでないかといった意見も出ていた。

 そんな中、人質の家族の中西警部補が、人質の家族だけに現状の発表はできないかとの要望があり、限定で検討したいので家族を纏めてくれと依頼した。

 15. (富樫は、斜坑跡から放流管ゲート室に行き、男を撲殺した)

 富樫は斜坑跡の前の雪を1m四方ほど掻き分け、漬物石程度の岩で南京錠に叩きつけた。

 エレベータの横の電話ボックスから放流管ゲート室の内線電話の有無と番号を確認し、富樫は電話した。つながって、「こちら、金子」と応答があり、富樫が黙っていると、2回ほど「もしもし、おい、どうかしたか」との声が聞こえ、その後、独り言が聞こえた。富樫は、間違いなく相手は独りだと確信して、傍にあった消火器を持ってゲート室に急いだ。

 ゲート室から小銃を持った男が出てきた。間一髪、富樫の消火器の白い霧が男を呑み込んで、同時に銃声がなった。再度銃声がなる中を冨樫は突進して、男の頭を何度も蹴り上げ、消火器で叩きつけた。男はうめき声がなくなった。富樫は転がっていた小銃を拾い上げ、ゲート室のバルブ開閉機の前に走った。

 16. (犯人達は、放流が止まったことから放流管ゲート室の異常を知る) 

 トイレの前で千昌の監視をしていた部隊長のところへ、髪を後ろに束ねた男が走ってきて、急いで制御室に来てくれと言った。

 小走りに制御室に入ると、放流の音が聞こえなくなっていた。笠原が、ゲート室の金子に電話しても話中になっていて繋がらないと言う。

 部隊長は怒りに我を忘れて、笠原に千昌の監視を頼み、トランシバーを出して人質を監視している仲間に「こちら、ウツギだ。」と自分の名前を初めて出して「皆川に戻って来るように伝えてくれ。ウサギ狩りに行くのだ、そちらは独りでガードしてくれ」と命令した。

 17. (富樫はエレベーターに落とされた発煙筒に苦しむ)

 富樫は、もどかしいほどに表示計の針が進まないので、小銃の台尻で操作パネルを強く打ちつけた。

 犯人達は、様子を見に、ダムのエレベーターを使い放流管ゲート室に降りてくるだろうと、富樫は、エレベーターの昇降ボタンを壊そうと試みたが失敗した。エレベーターは空の状態で下に降りていった。犯人は富樫をいぶり出そうと発煙筒を投げ入れてきた。

 富樫は傍にあったボンベとマスクで苦痛に耐えた。

 18. (千昌は、笠原が仲間と話す状態から、他の侵入者と違うと感じていた) 

 あらすじ略

 19. (富樫は攻めてきた犯人の一人を射殺した)

 富樫は、犯人達は階段を使って攻めてくるだろうと、隠れて待ち伏せていると、2人が近づいてきた。

 犯人が5m先ぐらいの距離まで来るのを待って自動小銃の引き金を引いた。1人だけ射殺して、1人は傷ついて逃げたようだった。

 20. (犯人達は、富樫をダム内に押し込める方法を取ることにした)

 制御室に戻った戸塚が、皆川がやられた。自分は左腕を傷ついたと告げた。

 富樫を射殺に行くことはリスクがあると考え、奴をダム内に封印するぞと、ウツギが命令した。

 笠原が一つ問題があると言う。奴がおるところには旧制御室があり、そこの発電機が大本なのだ。電源を握られているので、もし送電を止められると個々の暖房も使えなくなると説明した。しかし、暖房は火を焚けばどうにでもなると、ウツギは吐き出すように言って、出入口を封鎖するので爆薬を持ってこいと命じた。

                                   (次章に続く)

 

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[ 「ホワイトアウト」を読み終えてー2/6ー ] 4/26・日曜(晴)

2015-04-25 13:34:40 | 読書

◇ 二月 奥遠和

 (ダムを占拠したテロリストの人質となった親友の婚約者と所員達を救出するため、

 単身闘いを挑むダム運転員・富樫)

 1. (千昌は、迎えの岩崎の車で奥遠和の山へ向かう)

 千昌は、奥遠和ダム行きを、直接、地元の電力所に頼むと、ぜひにと言われ、その本人の岩崎課長が新幹線の駅まで迎えに来てくれた。

 天候が崩れるようなので麓の電力所で様子を見るか、直ぐにダムまで行くかと尋ねられて、千昌はダム行きを要望した。

 車中で、岩崎は冷えるからと和志の防寒着を渡してくれた。千昌は、わざわざ自分のためにと、防寒着を抱きしめ、その中に顔を埋めた。

 2. (千昌を開閉所で待っていた富樫は、

    登山する不審者を発見した村瀬の後を追う)

 山で生き残った者の最低限の務めは、遭難で死亡した友の遭難状況を関係者に知らすことである。富樫は吉岡の両親にはお知らせしていたが、婚約者の千昌へは、その機会が無かった。

 富樫は岩崎から千昌が送電開閉所に来るとの連絡を受けて、開閉所の横の職員宿舎の1号館で、今朝までの仕事を終えて仮眠し、昼前に目を覚まして一階の食堂に向かっていた。

 途中、保安係長の村瀬から、丸山への林間コースの斜面を登っている不審な二人組のパーティーがいるのだと知らされた。富樫も、リフト乗り場に急ぐ村瀬の後に続いた。

 3. (岩崎が、トンネル内に停車している不審者を詰問した瞬間、射殺される)

 千昌を乗せ、岩崎が運転するライトバンが、全長25kmのシルバーライン(殆どトンネル)の入口ゲートに来ると、通行止めの看板がある傍の車止めの代わりに張られたチェーンが切れていた。岩崎は、事件性や危機感を感じずに県の道路課へ連絡し、最後の11号トンネルに入って暫くすると、大きく膨らんだ路側帯に、ランドクルーザーが停車していた。

 岩崎は、所沢のナンバープレートから不審に思い、車を降りて詰問すると、次の瞬間、轟音がして岩崎の身体が後方に跳ね飛んだ。射殺されたのだ。

 4. (レストハウスの屋上に上っていた不審者から村瀬が射殺された。富樫は助かる)

 村瀬と富樫が2本のリフトを乗り継いで、丸山の山頂のレストハウスの手前まで行くと、2人の不審者がレストハウスの屋根に上がろうとしていた。

 先にレストハウスの近くに到着した村瀬が屋上を見ると、彼等はパラボラアンテナを破壊し、無線通信網を妨害しようとしているように見えた。何をしているのかと詰問した村瀬は、屋根の不審者から容赦なく射殺された。富樫は再び銃声がなる中を樹林帯にようやく逃げ込んだ。

 5. (不審者集団にトンネルは途中で破壊され、千昌は人質になる)

 岩崎を射殺した後、車から4人の男が出てきて、部隊長と呼称される男が、戸塚と呼ばれた男を千昌の見張りに残し、あとの3人が車の後方のトンネルの側面を掘削機で穴をあけた。

 その間、監視の戸塚は、千昌が乗る車のガラスを叩いて吠える犬を足蹴にして遊ぶようにいたぶっていた。

 不審者たちが乗っていたランドクルーザーに、戸塚と太った男が乗り、千昌が乗ってきたライトバンに部隊長と長身の男が乗り込んできて千昌を乗せて少し進み、トンネルに仕掛けた爆薬をリモコンで爆発して塞いでしまった。

 これで、奥遠和と麓の町を繋ぐ唯一の道のシルバーラインは完全に塞がってしまった。不審者達は、自らの手で自分達の退路を断ったことになったのだ。

 2台の車がシルバーラインの出口が見えたところに来て停車した。千昌が驚いたことには、前にもう1台ランドクルーザーが止まっていた。仲間が待っていたのだ。

 ライトバンを先頭に、3台の車で発電所に乗り込み、「赤い月」(テロ集団)と名乗り占拠した。

 6. (富樫は不審者に追われながら監視小屋などから開閉所等に電話する、

    しかし、不通になっていた)

 小銃を撃ちながら、不審者がレストハウスの屋根から降りて追ってきた。富樫は、滑走コースを避けて滑降禁止の急斜面に体を投げ出した。

 身体を傷めたが、敵から逃げることができて、リフトの監視小屋に逃れ、開閉所に電話をかけたが、何処ともつながらない。

 1号館まで行けば連絡がつくだろうと、下りのリフトに乗り、1号館の前まで行くと、2階の窓に不審者を見つけた。相手も富樫を見つけ、自動小銃を連射しながら追ってきた。

 富樫は先ほどの大きい音や不審者の状況から開閉所が占拠されていると推測して、スキー客の宿泊先の湖畔荘の2階から中に入った。

 中で公衆電話を使ったが、ここからも電話がつながらない。外を見ると、銃を持った男達が、こちらに向かって、開閉所を占拠した、と怒鳴りながら追いかけてくるのが見えた。

 7. (テロリスト集団「赤い月」に発電所が占拠される)

 「赤い月」に開閉所が占拠されるまで、時間はかからなかった。徒手空拳の所員達には、何もできなかった。

 侵入者は二手に分かれ、戸塚と小太りの男、そして、別のランドクルーザーに乗っていた角刈りの男の3人は、玄関先に出てきた3人の所員に手錠をかけ廊下の隅に並べさせた。

 部隊長と笠原は、千昌を連れて制御室へ踏み込んで、3人の所員の自由を奪い、千昌も制御室の前で手錠をかけられた。そして、運転マニュアルとマイクロ波による遠方制御システムの回路図の提出を要求して、手に入れた。

 千昌は、笠原がその資料を見て発電設備の制御方法を学習しているようにみえた。また、部隊長はトランシーバーを出して、C班に呼びかけた。C班から、B班はトランシーバーを持っていなかったのだろう、B班の様子を聞いていた。B班(レストハウスの屋上)は所員の一人(村瀬)を金子が始末し、もう一人の所員(富樫)を戸塚が追いかけたが逃がしたようだとの報告を受け、部隊長は、戸塚に戻るよう連絡しろと指示した。

 8. (富樫はトンネル内の電話と抜け道から外部への連絡を試みた)

 富樫は湖畔荘の電話が通じないので、外部へ連絡する残された方法を考えた。

 三つあった。一つはシルバーラインのトンネル内に設置された非常通話、もう一つはトンネル内の途中から採石場に通じる抜け道、残りは8km下流の大白ダムへ行くことだが、距離から見て最初の二つを試みることにした。

 侵入者に見つからぬよう迂回してトンネルの入口に行き、トンネル内を進むと非常電話は壊されていた。その先を進むと、トンネルが崩壊していて、そのそばに岩崎課長の死体があった。抜け道もなくなった。

 9. (長見警察署に「赤い月」から発電所占拠の無線が入り、長見市内が停電)

 署長が出張していた長見警察署のUHF帯広域署活系無線におかしな電話がかかってきた。担当の福井警邏課係長から奥田副署長に連絡した。奥田はヘッドホンから入る無線の音声に自分の耳を疑った。

 「奥遠和発電所は我々が占拠した。そのため、奥遠和を初めとする遠和川水系九つの発電所は我々の管理下に入った。そして、所員11名、怪我はなく我々の監視下にある。政府の要職者に連絡が取れるようにして貰いたい。連絡方法はこの無線を介するしかないので、こちらから全て連絡させてもらう。」

 奥田副署長が県警本部と署長に連絡しろと命令した。その時、蛍光灯が一斉に明かりを失った。道路の信号灯が消え、署内のあちこちの電話に、市役所や市営バス営業所などから問い合わせの通話がかかってきた。発電所からの電気がストップしたのだ。

 10. (富樫は外部への連絡のために大白ダムに行くことを決意した)

 富樫は、不審者による開閉所占拠の事情を把握し、千昌を救うためには、大白ダムまで8kmの雪の中を歩かねばと決心した。

                                   (次章に続く)

 

 

 

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