T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

1241話 「 シルバーウイーク 」 9/24・土曜(晴・曇)

2016-09-23 16:14:53 | 日記・エッセイ・コラム

                                                                                                        

                                                                                                       

                                                                                                           

  今年のシルバーウイークは、

 ゴールデンウイーク並みの連休にならなかった。

  しかも、9/11~9/23の二週間で少し晴れ間があったのは、

 たったの3 日。

  ここ数年ぶりに、秋雨前線がまったく動かず、

 台風(19日・20日)まで来て、

 休日も外出に支障をきたした。

  19日の「敬老の日」も、小雨降る中を記念品をもらいに行く始末。

  22日の「彼岸の日」も、晴れずに、

 今日、ようやく墓参に行くことができた。

 

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1240話 [ 小説「コンビニ人間」の粗筋 -6/6 ] 9/23・金曜(曇)

2016-09-22 14:59:11 | 読書

 [文章抜粋による粗筋 -6 ]

◆ 私はコンビニを辞める。

 18年間の勤務が幻だったかのように、あっけなく、私はコンビニ最後の日を迎えた。

「あ、ついに、白羽さんが男を見せたってこと!?」

 バイトを辞めていくのは困る、人手不足なんだから次を紹介して辞めてほしい、といつも言っていた店長なのに、嬉しそうだった。

 突然辞める人はプロ意識に欠けるといつも憤っていた泉さんも、

「聞いたよー! よかったねー」と祝福してくれた。

 泉さんと菅原さんから、「お祝いを兼ねて」と高級そうな夫婦箸をもらい、夕勤の女の子から缶入りのクッキーをもらった。

 私は、皆の脳が想像する普通の人間の形になっていく。皆の祝福が不気味だったが、「ありがとうございます」とだけ口にした。

(中略)

 家に帰ると白羽さんが私を待ち構えていた。

 白羽さんは部屋で、意気揚々とネットで求人のチェックをしている。テーブルの上には履歴書が散らばっていた。

「年齢制限がある仕事が多いんですけどね、うまく探せば全然ないってわけでもない。僕はね、求人なんて見るの大嫌いだったんですけど、自分が働くわけじゃないっていうと、面白くて仕方ないものなんですね!」

 私は気が重かった。時計を見ると、夜の7時だった。いつもは、仕事をしていない時でも、私の身体はコンビニエンスストアと繋がっていた。今は夕方のパック飲料の補充の時間などと、いつも時計を見れば店の光景が浮かんでいた。

 それなのに、自分は、もうその時間から取り残されてしまったのだと思った。

 部屋の中には、白羽の声や冷蔵庫の音、様々な音が浮かんでいるのに、私の耳は静寂しか聴いてなかった。私は世界から切断されていた。

(中略)

「あの、今日は食欲がないんで、白羽さん、何か勝手に食べていてくれませんか」

「ええ? まあ、いいですけど」

 白羽さんは少し不満げだったが、千円札を渡すと静かになった。

 その夜、私は布団に入っても眠ることができず、部屋着のままベランダに出た。

 今までなら、明日のために寝ていなければならない時間だ。コンビニのために身体を整えようと思うと、すぐに寝ることができたのに、今の私は何のために眠ればいいのかすら分からなかった。

(中略)

 暑さと寝苦しさに寝返りを打ちながら、私は布団の中で薄く目を開けた。

 今日が何曜日なのかもわからない。手探りで枕元の携帯を探し当て、時計を見ると、2時だった。ぼんやりした頭で押入れの外に出ると、カーテン越しに昼間の光が差し込んでいて、今は昼間の2時だと把握した。

 白羽さんは食事でも買いに行っているのか部屋にはいなかった。出しっぱなしの折り畳みテーブルの上には、昨日、食べたカップラーメンの残骸が放置されている。

 白羽さんは相変わらず浴槽で眠り、昼の間は、部屋で食事をしたり求人広告を見たりと、自分が働いていた時よりよほど生き生きと動き回って生活しているようだった。

 私は昼夜問わず眠くなるので、押入れの中に布団を敷きっぱなしにして、お腹がすくと外に出ていくようになっていて、白羽さんに命じられるままに履歴書を書く作業をする他には、何もしていなかった。

◆ 私の細胞がコンビニ店員に変化し、白羽さんとも別れる。

 その日は、私の初めての面接だった。

 私が面接にこぎつけることができたのは、奇跡のようだと、白羽さんは得意げに、

「さあ古倉さん、行きますよ」と付いてきた。

「少し早く着き過ぎましたね。まだ一時間以上あるよ。僕ちょっとトイレに行ってきます。ここで待っていてください」

 白羽さんがそう言って、コンビニの中の公衆トイレに向かって歩き出した。

 私もトイレに行っておこうかと、コンビニに入った。

 コンビニの中には行列ができていた。ちょうど昼ピークが始まる時間だ。

 レジの中には若い女の子が二人いて、レジの操作に必死だった。

 そのとき、私にコンビニの『声』が流れ込んできた。

 コンビニを辞めて一か月ほども経っているのに、コンビニの中の音のすべてが、意味を持って震えていた。その振動が、私の細胞へ直接語りかけ、音楽のように響いているのだった。 

 この店に今何が必要か、頭が考えるよりも先に、本能がすべて理解していた。

 「今日からパスタ全品30円引き!」というポスターが貼ってあるのに、他の品物と混在して置き場所が目立たないので、置き場所を移動した。

 今度はチョコレート売り場が目に入った。今日は火曜日、新商品の日。だのに、新商品のチョコが見難い一番下の棚に一列しか並んでいない。私は急いで一番上の棚に並び替えた。

 今日は暑い日なのに、よく売れる麦茶が目立たない場所に一本しか置いてない。

 レジを打っている女の子が、怪訝な顔でこちらを見ている。私は胸のバッジを見せるような仕草をして会釈すると、女の子も安心した表情で笑顔の会釈を返してくれた。

 私には、コンビニの『声』が聞こえて止まらなかった。コンビニがなりたがっている形、お店に必要なこと、それらが私の中に流れ込んでくるのだった。私ではなく、コンビニが喋っているのだった。私はコンビニからの天啓を伝達しているだけだった。

「自動ドアにちょっと指紋が沢山ついてしまってますね。目立つところなので、そこも清掃してあげてください。それと……」

 私を通したコンビニの『声』を聴いて女の子は、「はい!」と信頼しきった声で返事をした。

「何をしているんだ!」という怒鳴り声がした。

 白羽さんが、トイレから出てきて、私の手首を掴んで叫んでいるのだった。

 道路まで私を引き摺って行った白羽さんに私は言った。

「身体の中にコンビニの『声』が流れてきて、止まらないんです。私は、この声を聴くために生まれてきたんです」

「なにを……」と、白羽さんは怯える表情になった。

「気が付いたんです。私は人間である以上にコンビニの店員なのです。人間としていびつでも、たとえ食べていけなくて、のたれ死んでも、そのことから逃れられないんです。私の細胞全部が、コンビニのために存在しているんです」

 白羽さんは、面接の会場へと連れて行こうとした。

「狂っている。そんな生き物を、世界は許しませんよ。そんなことより、僕のために働いたほうがずっといい。それが、すべての人が喜ぶ生き方なんですよ」

「一緒には行けません。私はコンビニ店員という動物なんです。その本能を裏切ることはできません。コンビニ店員という動物である私にとっては、あなたは全く必要ないんです」

(中略)

「絶対に後悔するぞ、絶対にだ」

 白羽さんはそう怒鳴って、一人で駅のほうへと戻っていった。

 私は、まず面接先へ断りの電話を入れて、新しいコンビニの勤め先を見つけないと、思った。

 この手も足も、コンビニのために存在していると思うと、ガラスの中の自分が、初めて、意味のある生き物に思えた。

                

 

 

 

 

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1239話 [ 小説「コンビニ人間」の粗筋 -5/? ] 9/21・水曜(曇・晴)

2016-09-21 12:29:21 | 読書

[文章抜粋の粗筋-5]

◆ 白羽さんを叱りに来た私の妹も、反対に彼に翻弄される。

 妹が私の家に来たのは、私が電話してから一か月経った頃だった。

 妹は温和で優しい子なのだが、「お姉ちゃんのために一言言ってあげたい」とやって来た。

 白羽さんに挨拶したいという妹に、その必要はないよと言って、私は、白羽さんの餌のご飯と茹でたジャガイモとキャベツを台所の洗面器に入れて、白羽さんがいる風呂場に持って行った。

 白羽さんは、バスタブの中に敷き詰めた座布団に座ってスマホをもてあそんでおり、私が餌を渡すと黙って受け取った。

「お風呂場に入っているの?」

「一緒の部屋だと狭いので、そこに住まわせてるの。ちょっと面倒だけれど、でも、あれを家の中に入れておくと便利なの。皆が喜んでくれて、祝福してくれるんだ。勝手に納得して、あんまり干渉してこなくなるの」

「こんなことだと思わなかった……」[風呂場に住まわせ、洗面器で餌を]

 妹が震える声を出したので、驚いて顔を見ると泣いているようだった。

「お姉ちゃんは、いつになったら治るの……? お姉ちゃんは、コンビニ始めてからますますおかしかったよ。喋り方も、表情も変だよ」

「じゃあ、私は店員を辞めれば治るの? 白羽さんを家から追い出したほうが治るの? ちゃんと的確に教えてよ」

 妹は泣きじゃくり、返事をくれることはなかった。

 その時、風呂場から白羽さんが出てきてた。

「すみません、今、実はちょっと古倉さんとケンカをしていたんです。びっくりしましたよね」

 突然に風呂場から出てきて喋りはじめた白羽さんを、私は茫然と見上げた。

「実は僕、元カノとフェイスブックで連絡を取り合ってしまって。二人で飲みに行ったんです。そうしたら恵子が怒り狂って、一緒に寝られないと言って、僕を浴室に閉じ込めてしまったんです」

 妹は、白羽さんの言っている意味を反芻するようにしばらく彼の顔を見つめ続けて、「そうだったんですか……そうですよね」と言ってから、

姉から聞いてたんですけど、仕事もしないで転がり込んできて、私、姉が変な男性に騙されてるじゃないかって心配で……、そのうえ浮気なんて! 妹として、許しませんよ」

 妹は白羽さんを叱りながら、この上なくうれしそうだった。

 そうか。叱るのは、『こちら側』[普通の世界]の人間だと思っているからなんだ。だから何も問題は起きていないのに『あちら側』[普通でない思考の世界]にいる姉より、問題だらけでも『こちら側』に姉がいるほうが、妹はずっと嬉しいのだ。そのほうがずっと妹にとって理解可能な正常な世界なのだ。

わかっています。ゆっくりですけど仕事は探しますし、もちろん、籍だって早めに入れようって思ってますから」

「このままじゃ、私、両親に報告できないですよー!」

 きっともう限界なのだろう。店員としての私を継続することを誰も望んでいない。

 店員になることをあんなに喜んでいた妹が、店員ではなくなることこそ、正常だと言う。 

◆ 白羽さんの義妹の言葉をうまく利用した白羽に、

  コンビニ人間としての私が壊されて、

  体も許してしまう。

 翌日、アルバイトから帰ると、玄関に赤い靴がおいてあった。

「どちら様ですか?」と声をかけると、

「私、この人の弟の妻です。この人が滞納していた家賃を肩代わりしているので、返してもらおうと思って来たのです」と言って借用書をテーブルの上に置いた。

「本当に……あの、お金は絶対に返します……」と言って白羽さんはうな垂れている。

 義妹は私に視線をよこした。

「当然です。それで、この人とはどういう関係なんですか? 無職なのに同棲してるんですか? そんなことしている暇があったら、いい大人なんだからちゃんと就職してください」

「結婚を前提にお付き合いしています。僕は家のことをやって、彼女が働くことになっています。彼女の就職先が決まったら、お金はそこからお返しします」

「貴女は、今はどんなお仕事されているんですか?」

「コンビニのアルバイトをしています」

 義妹が唖然とした様子で叫んだ。

「はあ……!? え、それで二人で暮らしてるんですか!? この男は無職なのに! やってけるわけないじゃないですか! 行き倒れになりますよ! 何でアルバイト?」

「……」

ある意味お似合いって感じですけど……あの、赤の他人の私が言うのもなんですけど、就職か結婚、どちらかしたほうがいいですよ、と言うか、両方しないと、いつか餓死しますよ」

「二人で話し合ったんだ。子供ができるまでは、彼女にはバイトを辞めてもらって就職する。そのため毎日職探しする。子供ができたら、僕も仕事を探して一家の大黒柱になります」

 義妹は、「まあ、相手がいる分、前よりかましになってる気がしますけど……」と言い、立ち上がった。

 白羽さんは、「やった、うまく逃げれたぞ!」と興奮した様子で、私の両肩を掴んだ。

「古倉さん、あなたは運がいいですよ。処女で独身のコンビニアルバイトだなんて、三重苦のあなたが、僕のおかげで既婚者の社会人になれるし、誰でもが非処女だと思うだろうし、周りから見てまともな人間になることができるんだ。それが、一番みんなが喜ぶ形のあなたなんですよ。よかったですね! そのかわり、ずっと僕を隠し続けてください」[?]

 帰って早々、白羽さんの家族の事情に巻き込まれた私は、ぐったりと疲れて白羽さんの話を聞く気にもなれず、

「あの、今日は家のシャワーを使っていいですか?」と言った。

 白羽さんがバスタブから布団を出し、私は久しぶりに家のシャワーを浴びた。

 水の音しかしない。耳の中に残っていたコンビニの音が少しずつ掻き消されていく。

 蛇口をひねると、久しぶりに耳が静寂を聴いた。

 久しぶりの静寂が、聞いたことのない音楽のように感じられて、浴室に立ち尽くしていると、その静けさを引っ掻くように、みしりと、白羽さんの重みが床を鳴らす音が響いた。

 「白羽と別れて、いったん止めたコンビニ店員を続ける」の項

 に続く

  

 

 

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1238話 [ 小説「コンビニ人間」の粗筋 4/? ] 9/19・火曜(雨)

2016-09-19 10:16:28 | 読書

[文章抜粋の粗筋-4]

◆ 古倉恵子が勤務するコンビニへ、

  ダメ人間と思われる新入りのバイト男性・白羽が現れる。

 8人目の店長は声が大きく、バックルームでは彼の声が反響している。

「おはよう、古倉さん。今日から、新人の白羽さんとだから! 夕方に研修していたから昼勤は初めてなんだ。よろしくしてあげてねー!」

 私は、「はい」と元気よく返事する。

 そのとき、ドアの向こうから、「あのう……」と、か細い声がした。

「白羽さん? 入って入って! 俺、30分前に出勤するように言わなかった? 遅刻だよー!」

 180cmはゆうに超えるだろう、ひょろりと背が高い、針金のハンガーみたいな男性が俯きながら入ってきた。

「初めまして! 昼勤の古倉です。よろしくお願いします!」

はあ……」とのあいまいな返事に店長が注意する。それでも、

「はあ…おはようございます……」と白羽は、もごもごと小さな声を出した。

「何かわからないことがあったら気軽に聞いてくださいね。よろしく」

 と、私が声をかけると、白羽さんが薄く笑った。

「はあ、分からないこと? コンビニのバイトで、ですか?」

 私は、白羽さんをパック飲料のところへ連れて行き、話しかけた。

「じゃあ、まずはフェイスアップ[商品が売れた後、引っ込んだ状態の商品を最前列まで引っ張り出すこと]お願いしますっ! パックの飲み物は、朝、特に売れるので、売り場を綺麗にしてあげてください。フェイスアップしながら、プライスカードがちゃんとついていることも確認してくださいね! それが終わったら掃除を教えるんで、声をかけてください!」

「はい、はい」と白羽さんはだるそうに返事をして、フェイスアップを始める。

 私がしばらくレジを打って、白羽さんの様子を見に行くと、パック飲料の並べ方がいつもと違っていて、オレンジジュースがあるべきところに牛乳が並んでいた。

 そして、白羽さんは、そこに居ないで、バックルームでマニュアルを読んでいた。

「何かわからないことがありましたか?」と、問うと、

「このマニュアルは、的を射てないっていうか、よくできていないですね。僕、こういうのをチャントすることが得意で、商品の陳列は、男の本能に向いている仕事じゃないですよね。縄文時代からそうなんですが、こういう作業って、脳の仕組み的に女が向いている仕事ですよね」

「白羽さん! 今は現代ですよ! コンビニ店員はみんな男でも女でもなく店員です! それに、バックルームでの在庫を並べる作業を覚えちゃいましょう」

 と言って、在庫品があるウォークイン[収納室]へ向かった。

◆ 白羽さんは、店員として失格者だとして、

  店長が辞めさせる。

 今日も夜勤だからと、昼勤と交代する店長に、バイトリーダーの泉さんが、

「白羽さん、あの人はサボり癖があって、今日も9時からなのにまだ来てないし、今度、注意してもらえませんか。私が言っても駄目なんですよ!」とお願いする。

あいつ、ほんと駄目だな!。コンビニのバイトなんてーって、馬鹿にした感じで喋るんだよね。35歳だから、人生終りだな。社会のお荷物だよ。あいつさあ、レジの中で携帯いじってる時があるんだよね」

「そうそれ、店長、私も見ました」

 二人の会話に私は驚いた。

 そのとき、白羽さんが遅刻して、事務所のドアを開き、小さな声で挨拶した。

 早速、店長が、遅刻やレジ内での携帯使用について注意した。

 店長と泉さんがバックルームから出ていくと、白羽さんが小さく舌打ちして、吐き捨てるように言った。

「け、コンビニの店長ふぜいが、えっらそうに」

 自分が働いているのに、その職業を差別している人もちらほらいるが、私はつい、白羽さんの顔を見てしまった。

 私の視線を感じつつ、白羽さんは続けた。

「威張り散らしているけど、こんな小さな店の雇われ店長って、それ、負け組ですよね。底辺が威張ってんじゃねぇよ、糞野郎……」

「白羽さんは、どうしてここで働き始めたんですか?」

 素朴な質問が浮かんだので聞いてみると、白羽さんは、

「婚活ですよ」とこともなげに答えた。

「へぇー!」と、私は驚いて声をあげた。

「でも失敗だったな。ろくな相手がいない。若いのは遊んでそうな奴らばかりだし、あとは年増だ。この辺りは大きい会社ばかりだから、高飛車な女が多く、そういうところで働いている女は威張り散らしていて駄目だ」

「……」

あいつらは、自分と同じ会社の男にばかり色目を使って、僕とは目を合わせようともしない。大体、縄文時代から女はそうなんだ。若くて可愛い村の一番の娘は、力が強くて狩りが上手い男のものになっていく。強い遺伝子が残っていって、残り物は残り物同士で慰め合う道しか残されていない。現代社会なんてものは幻想で、僕たちは縄文時代と大して変わらない世界に生きているんだ。大体、男女平等だなんだと言いながら……」

「白羽さん、そろそろ制服に着替えないと朝礼に間に合いませんよ」と言うと、リュックを持ってロッカーへ行った。

(中略)

 月曜日の朝、お店に行くと、店長が泉さんに「白羽さん、もうシフトに入れないことになった」と、こともなげに言った。

「サボり、廃棄のこっそり食いまではまあ、見逃していたんだが、お客にストーカーまがいのことをしたので、辞めてもらった」とのこと、馬鹿だなぁと、私は思った。

「それだけでなく、夕勤の女の子にも、店の連絡網を勝手に見て電話をかけたり、既婚者の泉さんにまで声かけてさー。その根性で仕事しろっつーんだ」

 との店長の話に泉さんが顔をしかめた。

「あの年齢でコンビニバイトを首になるって、終わってますよね」と、皆が笑い声をあげた。

 私も、「そうですね!」と頷きながら、私が異物になったときは、こうして排除されるんだとな、と思った。

「また、新しい人探さないとなー。募集かけるか」

 店長の声が聞こえる。こうして、また一つ、店の細胞が入れ替わっていく。

◆ 私が奇妙なのか、白羽さんに騙されて、

  愛もないのにずるずると、白羽さんと同棲することになる。

  しかも、食費をもらう予定が反対に食べさすことになった。

 私がコンビニの店の外に出たとき、白羽さんの姿に気が付いた。

 おどおどした様子の白羽さんが、ビルの陰に身を隠しているのが分かった。白羽さんは、住所を知ろうとしていた女性客が、コンビニを出てくるのを待っているようだった。

「待ち伏せですか? お客さまに対する迷惑行為は、店員の禁忌中の禁忌ですよ」と、注意すると、

「僕はもうコンビニ店員ではない。たしかに女性を待っているが、いずれ、僕にはビジョンがあるので、起業すれば、すぐに女たちが僕に群がるようになる」と言う。

「それであれば、先にちゃんと白羽さんがそういう風になって、実際に群がってきた女性の中から選ぶのが筋なのではないですか?」と反論すると、

 白羽さんは、意味不明のことをいろいろと言って、手で顔を押さえて泣き出したように見えた。

 こんなところを店から出てきた客に見られたら大変だと、私は、近くのファミレスへ誘った。

(中略)

 私が差し出したジャスミンティーを飲みながら、白羽さんは、話し出した。

「この世界は異物を認めない。何で30代半ばなのにバイトなのか。何で一回も恋愛をしたことがないのか。あいつらは、笑いながら言うんだ。[僕は]誰にも迷惑をかけていないのに、ただ、少数派だというだけで、皆が僕の人生を簡単に強姦する」

 私は、自分の苦しみの比喩として気軽に強姦という言葉を使う白羽さんを、被害者意識は強いのに、自分が加害者かもしれないとは考えない思考回路なんだなあ、と思って眺め、「それは大変ですね」と適当に相槌を打った。

 自分の人生に干渉してくる人たちを嫌っているのに、白羽さんは続けて、

「僕はネット企業のアイデアがあり、できれば金がある相手と結婚して成功させる。そうしたら、誰も僕に文句をけられない」と言う。

 私は、「自分の人生に干渉してくる人たちに文句を言われないために生き方を選択するんですか?」と、訊ねながら、それは結局、世界を全面的に受容することなのでは、と不思議に思った。

(中略)

 考えが一貫してない白羽の話を長々と聞いているうちに、遅くなったので、「それじゃ」と帰ろうとすると、白羽さんは、弟の家族が実家に来て、弟の嫁が、我が物顔で家の中をうろうろしやがってと、泊る所がないのだと言わんばかりの話をしだした。

 私は、しかたなく、「食費を出してくれれば泊めますよ」というと、確かな返答はなかったが、仕方なく家に連れ帰った。

(中略)

 白羽さんが浮浪者のような臭いがするので、とりあえず風呂に入ってもらった。

 その間に、妹も、母のように私の人生に変化を求めているのだろうか、実験の気持ちで、電話で妹に打ち明けた。

「実はね、今、家に男性がいるんだ」

「えっ、本当、うそでしょう!? お姉ちゃん、どんな人!?」

「……」

お姉ちゃん、嬉しいよ! 結婚とかもう考えてるの……!?」

「……」

「ほんとによかったね。ずっといろいろ苦労してきたけど、いい人見つけたんだね」

 妹はなんだか勝手に話を作り上げて、私が『治った』と言わんばかりに感動していた。

(中略)

「布団もあるので、行き場所がないなら白羽さんを泊めることは一応できます。狭いですが」

「泊まる……、いや、でも僕は、潔癖症なので……」

「潔癖症なら、しばらく使ってない布団はつらいかもね」

「いや、ルームシェアの部屋も別に綺麗じゃなかったし、……」

「あの悪いんですけど、もう夜なんで、寝不足で店に行くわけにはいけないので、寝てもいいですか? 後は勝手にしてください」

 翌日、目が覚めると、白羽さんは押入れに下半身を突っ込むような状態で眠っており、私が風呂に入っても目を覚まさなかったので、「出ていくなら鍵はポストにお願い」と書置きして、いつもの通り、8時に店につくよう出勤した。

(中略)

 私の家にいるのは本意でない、というような口ぶりだったので、もういないだろうと思ったが、帰ると、白羽さんはまだ部屋にいた。

「まだ、いたんですね」

 声をかけると、びくりと身体を揺らした。

「僕は婚活していて、あなたは僕の理想には程遠い。でもまあ、僕と古倉さんは利害が一致していますしね。ここにいてやってもいい」

「はあ、それで、白羽さんには何のメリットが?」

「僕を世界から隠してほしいんだ。もう、赤の他人に干渉されるのはうんざりなんだ」

 私は、白羽さんの存在が自分にとって有益かどう考えていた。

 母も妹も、そして私も、治らない私に疲れはじめていた。変化が訪れるなら、悪くても良くても今よりましなような気がした。

「私は、今のままだとコンビニで働きづらいのも事実です。新しい店長に、何でバイトしかしたことがないのか聞かれるので、ちょうど、いい言い訳を探していたところではあったのです」

「僕さえ、ここにいれば世間は納得しますよ。あなたにとってメリットしかない取引だ。取引といっても、報酬は必要ありませんよ。僕をここにおいて、食事さえ出してくれればそれでいい」

 白羽さんは、自信ありげだ。私から提案したものの、それほど強く言われると胡散臭かったが、妹のリアクションや恋愛をしたことがないのかと言ったときの友達の表情を思い浮かべ、本当に試してみるのもそんなに悪くないか、と思えた。

「白羽さんに収入がない限り、請求してもしょうがありませんよね。私も貧乏なので現金は無理ですが、餌を与えるんで、それを食べてもらえば」

「餌……?」

「あ、ごめんなさい。家に動物がいるのって初めてなので」

  「白羽さんに翻弄されてコンビニを止めることに」の項に続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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1237話 [ 小説「コンビニ人間」の粗筋 3/? ] 9/17・土曜(晴・曇)

2016-09-17 12:46:39 | 読書

◆ コンビニへ、ダメ人間と思える新入りのバイト男性・白羽さんが現れる。

 8人目の30歳の店長は声が大きく、バックルームでは、いつも彼の声が反響している。

「おはよう古倉さん、今日も早いねー! 今日、新人の白羽さんとだから! 夕方に研修していたから昼勤は初めてなんだ。よろしくしてあげてねー!」

 私は、「はい!」と元気よく返事する。

 そのとき、ドアの向こうから、「あのう…」と、か細い声がした。

「あ、白羽さん? 入って入って! 俺、30分前に出勤するように言わなかった? 遅刻だよー!」

 店長の声に、静かにドアが開き、180cmはゆうに超えるだろう、ひょろりと背の高い、針金のハンガーみたいな男性が俯きながら入ってきた。

「初めまして! 昼勤の古倉です。よろしくお願いします!」

「はあ…」と、あいまいな返事をしたので、店長が注意する。

 それでも、「はあ…おはようございます…」と、白羽は、ごもごもと小さな声を出した。

「何かわからないことがあったら気軽に聞いてくださいね。よろしく」

 私が声をかけると、白羽さんが薄く笑った。

はあ、わからないこと? コンビニのバイトで、ですか?」

 私は白羽さんをパック飲料のところへ連れて行き、話しかけた。

じゃあ、まずはフェイスアップ[商品が売れた後、引っ込んだ状態の商品を最前列まで引っ張り出すこと]お願いしますっ! パックの飲み物は、朝、特に売れるんで、売り場をきれいにしてあげてください。フェイスアップしながら、プライスカードがちゃんとついていることを確認してください! それが終わったら掃除を教えるので、声をかけてくださいね!」

「はい、はい」と、白羽さんは、だるそうに返事をして、フェイスアップを始める。

 私がしばらくレジを打って、白羽さんの様子を見に行くと、パック飲料の並びが、いつもと違っていてオレンジジュースがあるべきところに牛乳が並んでいた

 白羽さんは、そこに居ないで、バックルームでマニュアルを読んでいた。

「何かわからないことがありましたか?」と問うと、

このマニュアルは、的を射てないっていうか、よくできてないですね。僕、こういうのをちゃんとすることが得意で、商品の陳列は男の本能に向いている仕事じゃないですよね。縄文時代からそうなんですが、こういう作業って、脳の仕組み的に女が向いている仕事ですよね」

「白羽さん! 今は現代ですよ! コンビニ店員は、みんな男でも女でもなく店員です! それに、バックルームでの在庫を並べる作業も覚えちゃいましょう」

 といって、在庫品があるウォークイン[収納室]へ向かった。

◆ 白羽さんは店員として失格者だとして店長が辞めさせる。

 今日も夜勤だからと、昼勤と交代する店長に、バイトリーダーの泉さんが、「白羽さん、あの人はサボり癖があって、今日も9時からなのに、まだ来てないし、今度注意してもらえませんか。私が言っても駄目なんですよ!」とお願いする。

「あいつ、ほんと駄目だな!。コンビニのバイトなんてーって、馬鹿にした感じで喋るんだよね。35歳だから人生終了だな。社会の荷物だよ。あいつさあ、レジの中で携帯いじっている時があるんだよね」

「そうそれ、私も見ました!」

 二人の会話に私は驚いた。

 そのとき、白羽さんが遅刻して、事務所のドアを開き、小さな声で挨拶した。

 早速に店長が白羽さんに、「遅刻」と「挨拶」、それに「携帯使用」について注意した。

 店長と泉さんがバックルームから出ていくと、白羽さんが小さく舌打ちした。ふとそちらを見ると、吐き捨てるように白羽さんが言った。

「け、コンビニの店長ふぜいが、偉そうに」

 自分が働いているのに、その職業を差別している人もちらほらいるが、私はつい、白羽さんの顔を見てしまった。

 私の視線を感じたのか、白羽さんが口を開いた。

「威張り散らしてるけど、こんな小さな店の雇われ店長って、それ、負け組ですよね。底辺が威張ってんじゃねえよ、糞野郎……。この店ってほんと底辺のやつらばっかですよね」

「白羽さんは、どうしてここで働き始めたんですか?」

 素朴な質問が浮かんだので聞いてみると、白羽さんは、

婚活ですよ」と、こともなげに答えた。

「へぇー!」と、私は驚いて声をあげた。

「でも失敗だったな。ろくな相手がいない。若いのは遊んでそうな奴らばっかりだし、あとは年増だ。この辺りは大きい会社ばかりだから、高飛車な女が多く、あいつらは、自分と同じ会社の男ばかり色目を使って、僕とは目を合わせようともしない」

「……」

「大体、縄文時代から女はそうなんだ。若くて可愛い村の一番の娘は、力強くて狩りが上手い男のものになっていく。強い遺伝子が残っていって、残り物同士で慰め合う道しか残されない。現代社会なんてものは幻想で、僕たちは縄文時代と大して変わらない世界に生きているんだ。大体、男女平等だなんだと言いながら……」

「白羽さん、そろそろ制服に着替えないと朝礼に間に合いませんよ」と言うと、リュックをもってロッカーへ行った。

 月曜日の朝、お店に行くと、店長が泉さんに「白羽さん、もうシフトに入れないことになった」とこともなげに言った。

「サボり、廃棄のこっそり食いまではまあ、見逃していたんだが、お客にストーカーまがいのことをしたので、辞めてもらった」とのこと、馬鹿だなぁと私は思った。

「それだけでなく、夕勤の女の子にも、店の連絡網を勝手に見て電話をかけたり、既婚者の泉さんにまで声かけてさー。その根性で仕事しろっつーんだ」

 店長の話に泉さんが顔をしかめる。

「あの年齢でコンビニバイトを首になるって、終わってますよね」と、皆が笑い声をあげた。

 私も「そうですね!」と頷きながら、私が異物になったときは、こうして排除されんだなと思った。

「また新しい人探さないとなー。募集かけるか」

 店長の声が聞こえる。こうして、また一つ、店の細胞が入れ替わっていく。

   「私が白羽さんと同棲する」の項に続く

 

 

 

 

 

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