今年も明日から12月早いものだ。
数日前から、スパーの入口には鏡餅が並んでいた。
買い物の帰りに郵便局により年賀状を買った。
今年は私の米寿とダイヤモンド婚と良い年で、元気に過ごすことができた。
孫も大学に入学した。
幸せの年であった。
今年も明日から12月早いものだ。
数日前から、スパーの入口には鏡餅が並んでいた。
買い物の帰りに郵便局により年賀状を買った。
今年は私の米寿とダイヤモンド婚と良い年で、元気に過ごすことができた。
孫も大学に入学した。
幸せの年であった。
[ 第一話 「ばかやろう」が言えなかった娘の話]
<詳細なあらすじ>
4.
<美由紀がユカリに誘導され、未来に来て、弥生と抱き合う>
気がつくと、昼から夜になっていて、窓の向こうに小さな漁火の明かりが見えた。
目の前に、もう美由紀たちはいない。代わりに、心配そうに覗き込む幸の姿と、遠巻きに見守る数たちが見えた。
ボー……ンと柱時計が午後8時30分を知らせる鐘を打った。
気づくと、トイレから戻って来た黒服の老紳士が弥生の目の前に立っていた。
弥生はあわてて席を立ち、老紳士に席を譲った。老紳士は頭を下げて、体を椅子に滑らせた。
数の「いかがでしたか」に応えて、弥生は、手に持った写真を掲げて「一人じゃなかったみたいです」と、すがすがしい表情で答えた。そして、軽快な足取りでレジの前に進み出て、いくらですかと伝票を差し出す。
だが、数は動かないで、「まだ、終わっていませんよ」と、弥生に声をかけて、例の席に座っている老紳士を見た。
その瞬間……。
老紳士の体が突然湯気となり、天井に吸い込まれれるように上昇した。見ると、湯気の下から薄汚れたダッフルコートを着た女が現われた。一瞬で人が入れ替わった様子はまるで手品でも見ているかのようだ。
レジの前にいる弥生は、はじめて見る現象なので呆然としている。
女は青白い顔で店内を見回している。しかも、やせ細り、唇青く、目には生気がない。ほっておけば、死んでしまうのではないかと思えるほどの健康状態にあった。着ている服も、何度か転んだのではないかと思えるほど、埃にまみれている。
そんな女の体は小刻みに震えている。
不意に、「お母さん」と、弥生が呟いた。
しかし、呟いた本人がその事実を信じられないでいた。
例の席に現れたのは、弥生の母、美由紀である。
ただし、目の前の美由紀は、ついさっき、弥生自身が過去に戻って見てきた美由紀とはまるで別人だった。
今にも消えてしまいそうなほど存在感がない。
ただ、数は冷静に、「どうかされましたか」と、美由紀に声をかけた。
美由紀は、「わかりません」と答えた。自分でも何が起きたのかよく分かっていない様子である。
「このお店の方に声をかけられて、この席に座ってコーヒーを出してもらったんです。そしたら、なんだか目まいがして、気がついたら……」ここにいた、と。
自分が一体どこにいるのかも理解していない。目の前にいた人が消え、見知らぬ人がいたら驚くのは当然である。
数は、「そのお店の方からは何か説明を受けませんでしたか」と問う。ルールのことだ。
美由紀はすぐには答えず、「ゆっくり目を閉じて、あなたが見たい未来を想像するよう、と……」
「見たい未来」と、流が口を挟む。未来に人を行かせるには、あまりにも曖昧過ぎる。この喫茶店の店主である、流の母親、ユカリの説明が相変わらず雑だなと心の中で思った。
他にはと数に問われて、美由紀は、
「コーヒーは冷めないうちに飲み干すように、と言われました」
流が、「それだけですか」と尋ねたが、美由紀は「はい」と答えただけだ。
数は、この喫茶店が時間を移動できる店であることを説明した後、
「ここは、きっとあなたが見たいと思った数十年先の未来です」と、締めくくった。
美由紀は、レジ越しに自分を見つめる女の視線に気づいていた。だが、その女が自分の娘であることは分からない。わかるはずがない。
しかし、弥生は、美由紀を母親だと認識している。しかも、その容姿から自分を産む前であることも。だが、美由紀のみすぼらしい格好が痛々しすぎて、自分の苦しみなんて、大したことはなかったのではないかと思うと、胸が苦しく、何か声をかけたいがかける言葉が見つからない。
あまりにも弥生の表情が苦しげに見えたのだろう、美由紀は、レジ越しの弥生に、「大丈夫ですか」と、優しく声をかけた。
その言葉を聞いた瞬間、弥生の心は後悔の念で打ちのめされる。
「彼女は」と、沈黙を破ったのは数であった。「あなたの娘さんです」と言って、美由紀から離れた。
「……私の」と言って、美由紀は肩を震わせて鳴き出した。
弥生は思わず、美由紀の座る席の前まで駆け寄った。
「お、お母さん」と、震える声で弥生は呼びかけた。
「何で、死のうと思ったんです」
弥生は、過去でその理由を聞いていたが、思わず声をかけていた。
美由紀は、「私には、もう何の希望もなかったから、冬の函館湾に身を投げるつもりだったの」と答える。
そこへユカリが偶然に通りかかった。
ユカリは一目見て、美由紀の心を察して、喫茶店に誘ったのだろう。そして、この椅子に座らせて、
「見たい未来を想像するように言われた時……、もう、どうせ叶わない夢でもいいなら……」と、
ゆっくり美由紀は顔をあげた。
「自分の子供の幸せな顔を顔を見たいな……って……」
その美由紀の言葉を聞いていた流の目は、じっと弥生の姿を見つめていた。
(成程、だから、彼女がこの喫茶店にいる、今日、このタイミングに現れたのか……)
と、目を細めて低い唸り声を上げた。
弥生は美由紀の前に一歩進み出た。
「これは夢じゃないの。お母さんは、今、2030年8月27日の20時31分に来ているの」
「2030年……?」
「私、今年、20歳になったわ、お母さんに産んでもらったから……」
「私が……?」
「私、すごい幸せよ。見て、こんなおしゃれもして、大阪に住んでいるけど、観光で函館にだって来られちゃうんだから」
「大阪……?」
「それに、私、来年には結婚するんだから」
「結婚……?」
「だから、死んだらだめだからね。お母さんが死んじゃったら、歴史が変わっちゃうでしょ。お母さんが私を産んでくれなかったら、私の幸せ、なかったことになっちゃうんだよ」
実際に、ルールでは現実は変わることはない。
「だから、生きて………」
(私を一人ぼっちにしたお母さんを恨んでいたはずなのに………今は、お母さんにも幸せになってもらいたいって思ってる)
だから美由紀に死んでほしくはないと思った。
「生きて、私のために」
(私も頑張るから) 嘘偽りのない本当の気持だった。
弥生は、とびっきりの笑顔で美由紀に微笑みかけた。
「わかった」と答えて、美由紀の手が弥生の頬に伸びる。
「よく見せて、私の娘の顔を……」
弥生は、一歩、二歩と歩み寄って、美由紀の手の中に頬を埋めた。
(私は、この温もりを一生忘れない)
泣かないと言ったのに、弥生の目から涙が止まることはなかった。
もう二度と巡ってくることのない二人の時間である。
しかし、限りはある。
「コーヒー、冷めちゃうよ」と、幸がそれを知らせる。
弥生は、美由紀がルールのことを理解していないだろうと思い、飲み干すことを説明した。
美由紀は、「ありがとう」と言って、コーヒーを一気に飲み干した。
「そういえば、名前聞いてなかった……」
美由紀のの体がぼんやりとし始めた。
「弥生」
「弥生……素敵な名前……」
「お母さん」
湯気はボワリと上昇して、
「弥生、ありがとう……」
天井に吸い込まれるように消えてしまった。
湯気の下からは、黒服の老紳士が現われた。まるで何ごともなかったように。
カランコロロン
弥生が店に出て行った後、数は、店の玄関口まで歩を進めて、弥生の姿を見ながら、
「写真きれいだったね。本当に心から恨んでいたら、とっくに破り捨てていてもおかしくないのにね」と、流や怜司に向かって言って、ドアを開け放った。
函館の夏の夜風は、ひんやりと涼しかった。
「第二話」へ続く
[第一話 「ばかやろう」が言えなかった娘の話」
<詳細なあらすじ>
3.
<弥生は過去に戻り、母の過去のより苦しい人生を知り、
文句は言えなかった>
眩しさを感じた瞬間、曖昧だった手足の感覚が戻ってきた。
ゆっくりと目を開けると、そこにあるのは、昼間見たものと同じ、雲ひとつない青い空と函館港だった。
(過去に戻ってきた) 弥生は一瞬で理解した。
目の前にいた幸という女の子もいない。代わりにいるのは、見たこともない20代後半ぐらいの男が二人と、女が一人。そして、カウンターの中でニコニコと微笑む、弥生が持っていた写真に写っていた女である。
そのユカリと一瞬、目が合った。
だが、ユカリは小さく頷いただけで、目の前の3人との会話を途切れさせることはなかった。
「それで、コンビ名は決まったの。何て名前」
「ボロンドロンです」
弥生は、その名前を聞いて驚いた。ボロンドロンといえば、ここ数年で一気に有名になったお笑いコンビである。それが確かなら、背の高い男がボケの林田で、銀ぶちの眼鏡がツッコミの轟木ということになる(第二話で登場)。弥生ですら知っている。だが、自分が知るボロンドロンはこんなに若くない。
間違いない。ここは過去の世界である。
「ボロンドロン。いい名前ね」
ユカリはそう言って、「一番。優勝。一等賞。絶対売れる」と続けた。
二人の表情が爆発的に明るくなる。
…………。
そろそろ時間だよと背後に控える女が声をかけた。迫っているのは飛行機の時間である。
「世津子ちゃんもついて行くの」
「はい、もちろん」と、世津子と呼ばれた女は迷いなく答えた。
「頑張ってね」
「頑張るのは、こいつらですけどね」と、世津子はにやりと笑った。
突然、ユカリが弥生のほうに顔を向けて、「未来から来たの」と声をかけた。
何の挨拶もない声かけだったので、弥生も思わず、「あ、はい」と答えてしまった。
それを機に、轟木たちは飛行機の時間があるからと喫茶店を後にした。
カランコロロン
ユカリから名前を聞かれ、「弥生、です」と答える。
「素敵な名前ね」とユカリから言われて、「嫌いなんです、この名前」と言う。
「どうして、かわいいじゃない」
「この名前を付けた両親のことを恨んでいますので……」
恨むという言葉がでた。しかし、ユカリはあわてない。
「じゃ、その名前を付けたご両親に、文句でも言いに来たのかしら」
と、興味深そうに目を輝かせた。
弥生は、「何なのこの人」と、思わず心の声がそのまま口から出た。
しかも、文句を言うべき相手はまだ姿を現さない。
もしかして、戻ってくる日を間違えたのか。といっても、自分から戻りたい日を告げておらず、聞かれてもいない。写真を持っていたから、この写真を撮った日に戻りたいと思っていただけだった。
それに、問題は日だけでない。時間である。コーヒーは15分もあれば冷めきってしまうだろう。
弥生は写真に柱時計が写っていたことを思い出した。午後1時30分となっている。
今の時間はと、弥生は柱時計を見ると、午後1時22分。8分前だ。
弥生は思わずコーヒーの温度を確かめた。熱くはないが、まだ冷めきるには時間があるる。弥生は安堵のため息をついた。
カランコロロン
弥生に緊張が走る。
(やっと会える) そう思うだけで弥生の呼吸は荒くなった。
「いらっしゃい、あら、あら、あら」
ユカリは頓狂な声をあげながら、赤ん坊を抱えた瀬戸美由紀と、夫の敬一を迎え入れた。
「おめでとう、今日だったわね、退院。わざわざ会いに来てくれたの。マー、嬉しい。こんな嬉しいことはないわ。明日世界が終わってもかまわないくらい嬉しい」と、一気にまくしたてた。
「相変わらず、ユカリさんは大げさだなあ」
敬一はそう言って、大きな声で笑った。隣で美由紀も笑顔を見せる。
当然ながら、二人は写真に写っていた格好そのままで、美由紀に抱かれた赤ん坊は薄水色の産着に包まれている。
美由紀は、そんな様子を呆然と見つめる弥生の視線に気づいたらしく、微笑みながら小さく頭を下げた。
弥生が感じたのは怒りだけでなかった。生きている世界に大きな隔たりを感じていた。
一方は幸せで、一方は不幸せ。
(自分だけが、なぜ、こんな嫌なめに合わなければならないの)
もう3人を見ているのも辛い。 そう思ったときである。
「一人で生きなきゃいけないなら、死んだほうがましだと思いました」
そんな女の湿った声が、弥生の耳に飛び込んできた。
美由紀がユカリに向かって深く頭を下げているのが見えた。
声の主は、弥生の母、美由紀である。
美由紀は顔をあげて話を続けた。
「ユカリさんには何とお礼を言えばいいのか」
弥生は、なぜ、美由紀がそんなことを言い出したのか分からなかった。
(なに、どういうこと) 弥生の耳は、美由紀の言葉に釘付けになった。
「4歳のときに両親が失踪してしまい、親戚中をたらい回しにされた私には、どこにも居場所がありませんでした」
弥生は、自分の耳を疑った。まさか、自分の母親が幼少期に捨てられていたなんて知らなかったからである。
「中学を出ると、叔父夫婦にはタダでご飯を食べさせるわけにはいかないと進学は許してもらえず、働きはじめたのに、私は不器用で、職場では失敗ばかり……。職場で苛めにもあい、辛くてやめると、我慢が足りないのだと責められ、挙げ句の果てには家を追い出されてしまいました」
「ひどい話だわ」
「なんで自分だけが、こんなにも苦しい目に合わなければいけないのか。どこへ行っても人並みに立ち回れない自分が悲しくて、私には生きてる価値なんてないんじゃないのかなって、そう思っていました」
美由紀の話を聞いて、ユカリの目にはうっすらと涙が浮かびはじめた。
「5年前の冬、もし、あの日、湾に身を投げようとしている私にユカリさんが声をかけてくれなかったら………」
「あったわね、そんなこと。無理やり連れて来ちゃったのよね。うんうん、覚えてる」
「本当に有難うございました」、そう言って美由紀はもう一度、深く頭を下げた。
初めて聞く話である。
美由紀も自分と同じように幼い頃に両親と別れ、中学を出て働き、虐められ苦しんでいた。そして、まさか、死のうと思ったことがあるなんて………。
(それなのに) 自分と違う。弥生は不平不満の人生を歩み、美由紀はちゃんと幸せを掴んでいる。何があったのか。自分と美由紀は、何が違ったのか。
弥生は、息をするのを忘れてしまうほど、二人の話に集中した。
「頭を上げて」と、ユカリ。ユカリの目が美由紀に優しく微笑みかける。
「よく、あきらめないで頑張ったわね。よく頑張った。魔法じゃないんだから、あの日、私があなたに声をかけたからって、現実が一変したわけじゃないでしょ。苦しい状況は何ひとつ変わらなかったじゃない。でも、未来に向かって頑張ろうって、幸せにならなきゃって頑張ったから、今のあなたがあるんでしょう」
美由紀の目から涙がこぼれる。
「そうだ。この子の、名前は」
「弥生」と、美由紀。
ユカリは、「そう、弥生ちゃんていうの。素敵な名前ね」と、赤ん坊の弥生のほっぺを撫ぜた。
ボー……ンと柱時計が1時30分の鐘を打つ。
敬一がカバンからカメラを取り出し、「記念に一枚、いいですか」と言った。
「そうね、じゃ」とカメラを受け取ると、弥生の前に歩み寄って、「撮ってもえるかしら」と言う。
「お願いします」と、美由紀が笑顔で頭を下げた。
「わかりました」と、弥生はファインダーを覗きこんだ。そこには、ずっと、ずっと眺めていた写真のままの絵が広がっていた。
弥生は、静にシャッターを切った。
美由紀のお礼に弥生は「いえ」と顔を伏せて答えて、カメラをユカリに渡した。
ユカリが、「文句は言わなくていいの」と、意地悪な顔で囁いた。
「もういいんです」と弥生は答えて、コーヒーカップに手をのばした。ずいぶんぬるくなってしまった。
(私も、諦めないで頑張れば、もしかして………)
弥生は、一気にコーヒーを飲みほした。
天井に向かって上昇する弥生の姿を美由紀たちが見上げているのがわかる。もう二度と会う事とは無いだろう。弥生は、薄れていく意識の中で、思わず叫んでいた。
「お母さん。お父さん」
その言葉が届いたかどうか………。
「4.
<美由紀がユカリに誘導され、未来に来て、……>」に続く
[第一話 「ばかやろう」が言えなかった娘の話 ]
<詳細なあらすじ>
2.
<瀬戸弥生は母親に会うため過去に戻る決心をした>
その日の夜。
閉店間際で、「喫茶ドナドナ」に客は誰もいなかった。いるといえば、入口近くのテーブル席に座る黒服の老紳士だけである。
午後7時30分。外は真暗である。怜司は看板を下げるために外に出た。
この店の通常の閉店時間は午後6時。だが、夏休みの間だけ、観光客が来ることもあるので、午後8時となっている。
数が幸に、下に降りて(坂の途中に家があるので、2階が店になっている)お風呂にお湯を張ってくれと用事を頼む。
数が一日の売上げを確認するためにレジ前に立った時だった。
カランコロロン
入って来たのは昼間の女性である。
ラストオーダーは終わっているが、あの写真のこともあり、数は迎い入れた。
女の名は瀬戸弥生。
「過去に戻りたいそうです」
そう言ったのは、看板を下げて戻って来た怜司である。
「ルールはご存知ですか」と、数が聞いた。
「ルール?」と、弥生の反応は知らないようだったので、怜司は数に目配せした。
数の「もちろん」の声に、怜司は、「過去に戻るには大事なルールが四つあるのです」と言って、弥生に説明し出した。
「まず、一つ目のルールは、過去に戻ってどんな努力をしても現実を変えることはできません」
一つ目のルールで、すでに目を丸くする弥生だが、怜司は構わず説明を続ける。
「もし、あなたが今誰かに騙されて、多くの借金があるといった不幸な状態にあるとします。そんな現実が嫌で、過去に戻って人生をやり直そうと思っても、現実を変えることはできません」
数が、「なんでと思われるかも知らないが、ここは、明治の初め頃に作られた喫茶店なんですけど、なぜ、過去に戻れるのか、なぜ、こんなルールがあるのかは誰も知らないのです」と、助け船を出した。
「二つ目のルールは、この喫茶店を訪れた事のない者には会う事ができないのです」
やはり、弥生は「なんで」と、関西訛りのイントネーションが強い口調で尋ねる。
「なぜかと言うと、三つ目に、『過去に戻れるのは、この喫茶店のある席に座った時だけ。そして、過去に戻ってもその席からは離れられない』というルールがあるからです。このルールがあるので、この喫茶店の外に出ることはできません。つまり、会いたい人のところへ行くことはできないのです」
「あとまだあるの」
「四つ目のルールは過去に戻っている時間に制限があることです」
「制限時間まで………」
弥生はそう呟いて、目を閉じて大きなため息をついた。
怜司には、私は何のために遠路はるばる函館まで来たのかと言っているように見えた。
「わかりました」と言って、弥生は怜司に背を向けた。
怜司は、弥生をこのまま返してしまってはいけないような気がしてならなかったが、なんと声をかけていいのか分からない。
その時だった。
「この写真に写っているのは、もしかしてあなたですか」
数が一枚の写真をかざして、弥生に声をかけた。
「あ……」と思わず弥生の声が洩れた。
弥生は駆け寄り、数の手から奪うようにして写真を受け取った。
「ご両親はもしかして………」と数が訊ねた。
「ええ、私が物心つく前に交通事故で………」
(なるほど、この女性は、亡くなった両親に会いに来たのか)
怜司はひとり納得した。
弥生は受け取った写真をしまうと、「失礼しました」と言って、入口へと向かった。
「あの」と、怜司は弥生を呼び止め、
「せっかく来たんです。せめて、お父さん、お母さんに会って行かれてはどうですか。大好きだったんですよね。もしルールがなかったら両親を助けようと思ったんじゃないですか」と言う。
「違います。私はこんな人たち大嫌い」と、弥生が叫んだ。
数も仕事の手を止めた。
「私を産むだけ産んで、勝手に死んで……」
弥生は、溜まっていた鬱憤を吐き出すように語りはじめた。
「身寄りのない私は、親戚中をたらい回しにされました。施設で苛めにもあった。私だけが、私一人だけが、こんなに苦しみながら生きなきゃいけないのは、この人たちが勝手に死んで私を一人ぼっちにしたせいだって、ずっと恨んできたんです(運を身近な人のせいにしている)」
怒りなのか、悲しみなのか……おそらく弥生自身もよく分からなくなっているのかもしれない。そんな押し殺せない感情が、
「会えるものなら文句の一つでも言ってやりたいと思っていました」と言う言葉になって、弥生の口をついて出た。
「そのために過去に行こうとしてたんですか」と、怜司が言うと、
「そうよ。でも、こんなめんどくさいルールがあるなんて知らなかったし、聞けば聞くほどバカバカしいというか、これで過去に戻れますって言われて信じろっていうほうがおかしいでしょう」
だから帰るつもりだった。しかし、怜司の言葉に神経を逆撫でされたのか、堰を切った感情は止まらなくなってしまった。
「現実は変わらないってことは、何言ってもいいってことでしょ。この際だわ。本当に戻せるというなら、過去に戻してもらおうじゃないの。私は、私を一人ぼっちにしたこの人たちに、思いっきり『馬鹿野郎』って言いに行ってやるわ」
弥生は完全に開き直ってしまった。
「さぁ、私をこの日に、この人たちが私の未来の事なんか気もしないで呑気に写真を撮ってるこの日に戻してみなさいよ」
と言って、写真を数に向かって突き出した。
数はあわてない。表情を変えずに、「わかりました」とだけ答えた。
怜司は、「恨み言ですよ、大丈夫ですか」と、数に耳打ちした。
その怜司に、数は、「あの人のことを説明してあげてくれる」と告げた。あの人とは、例の席に座る黒服の老紳士である。
怜司が説明するまえに、弥生が、老紳士を見て、「あの席に坐れたら、過去に戻れるのね」と尋ねる。
「はい」と、怜司は答えて、老紳士は幽霊だから、話しかけても無駄なこと。老紳士は、必ず一日に一回だけトイレに行くので、トイレに立ったその隙にあの席に座るのだと告げた。
「一人で生きなきゃいけないなら、死んだほうがましだった」
昼間、弥生はそう言い捨てたが、両親を失った幼子が誰にも頼らず一人で生きていけるわけはない。恐らくは信頼に足る大人に出合えなかったのだ。
弥生が両親を交通事故で失って、最初に預けられたのは母の弟夫婦だった。タイミングが悪く、弟の妻の出産と時期を同じくしたのだ。はじめての出産で子育てになれないうちに、突然6歳の弥生と新生児の親になってしまったのである。預かった子の存在が疎ましく思うときも出来てきた。そんなことから、今度は父の姉の家に預かってもらうことになった。
父の姉の家には、3人の子供がいた。上の子は小学校高学年で、一番下の子は7歳という環境で、時が経つにしたがって自分たちの親が弥生を平等に扱うことを妬むようになり弥生との仲が悪くなった。
幼い心に刻まれた心の傷は、弥生の人格を大きく歪めていく。「一人で生きていく」という弥生の言葉は、誰からも必要とされていないという自己否定なのだ。つまり、生きていてもしようがない、と。
小学生の時から弥生の心は悲観的に歪みはじめていた。高学年になると、その心の鬱憤から家で暴れるようになった。父の姉の家でも手が付けられなくなり、施設に預けられる。
施設に預けられると、孤独感はさらに強くなった。自分の気持なんて誰にも理解してもらえない、私は結局一人で生きていくしかない、と殻にこもるようになる。
中学に入って学校に行かなくなってしまった。行っても、まわりの友達には親がいて、幸せそうに見える。そんな場所にいるのは苦痛以外のなにものでもなかったのだ。
もちろん、高校には行かなかった。すぐにアルバイトをはじめ、施設にも戻らなくなった。ネットカフェをその日暮らしで泊まり歩く。いわゆる、ネットカフェ難民である。寒くなければ野宿することもあった。
いつからか、両親が残した一枚の写真に写る喫茶店を探すことだけが、唯一の生きがいとなっていた。
半年前。
とあるサイトにアップされた見覚えのある喫茶店の室内写真を見つけた。
函館のふもとのとある喫茶店。その喫茶店には過去に戻れるという都市伝説があった。
(それが本当なら……)
と、函館へ行く飛行機代を貯めるために半年間、必死に働きはじめた。
(もし、過去に戻って両親に会えるのなら……) 写真の中の微笑む両親に向かって、
(あんたたちが死んだせいで、子供はこんなに不幸になった)
と、ぶちまけてやりたいと思った。
(このまま死ぬのだけは絶対に嫌だ) そして、今日、弥生はこの喫茶店を訪ねた。
帰りの飛行機代など持っていなかった。
ふいに、本を閉じる音がした。
弥生が音のしたほうへ顔を向けると、老紳士が立ち上がるところだった。老紳士はそのままトイレのある入口脇の方へ歩き出した。
弥生は数に目配せして、「いいよね」と潜めた声をかけた。
数は仕事の手を止めて、「はい」と答えた。そして、「幸を……」と、怜司に囁くように声をかけた。地下の居住空間にいる幸を呼んでほしいと言っている。
数は、老紳士がいたテーブルの上を片付けて、弥生に席を勧めた。
「これから、私の娘があなたにコーヒーを淹れます。過去に戻れるのは、娘がカップにコーヒーを注いでから、そのコーヒーが冷めるまでの間だけです」
予期せぬ内容に、弥生の理解が追い付けないが、「そういうルールですので」と言われるだろうと、黙っている。
数は続けて、
「最後にもう一つ、大事なルールがあります。過去に戻ったら、コーヒーは冷めきる前に飲み干してください。もし飲み干さなかったときは、今度はあなたが幽霊となってここに座り続けることになります」
と、圧力のある言葉を放った。
それは、飲み干さないということが、死を意味しているからだろう。
弥生は、「わかった」と答えるだだった。
幸が階下から登ってきて、厨房に入りコーヒーの用意をする。
しばらくして、数も手伝って弥生の前にカップやケトルを持参した。流と怜司は、カウンターのほうでうまくやれるかどうか気にしている。
幸は、「コーヒーが冷めないうちに」と告げて、ゆっくりとカップにコーヒーを注ぎはじめた。
カップに満たされたコーヒーから、ゆらりと、一筋の湯気が立ち上がった。みると、まわりの景色がグラグラと揺るぎ始めている。
「あ……」と、弥生は思わず声を洩らした。
揺らいでいると思っていたのは景色でなく、弥生自身であったからだ。弥生の体はコーヒーが立ち上がった湯気と同化して上昇を始めた。同時に見えていた景色が上から下へと流れている。
(時間が遡っいる) 弥生はゆっくりと目を閉じた。怖くはない。覚悟はできている。
大事なことはただ一つ。どうやって自分以上の苦しみを与えるか。いかに両親へ復讐するかだ。
「3.
<弥生は過去に戻り、……> 」に続く
「あらすじ」
※各々の話の粗筋の中の「ポイントと思われた部分」を薄緑色の蛍光ペンで彩色した。
※各々の話の粗筋の中の「心を打った部分」を薄黄色の蛍光ペンで彩色した。
※各々の話の粗筋の中の「私が補足した文章等」を薄青色の蛍光ペンで彩色した。
[第一話 「ばかやろう」が言えなかった娘の話]
<主要人物>
瀬戸弥生、瀬戸美由紀
<概要>
弥生は、両親の写真を頼りに大阪から函館の都市伝説がある「喫茶ドナドナ」に来た。
幼い自分を置いて死んだ両親に「ばかやろう」と言うために、時間移動で過去へ戻る。
写真の通りの様子で、母・美由紀と父・敬一が赤んぼの弥生を抱えて「喫茶ドナドナ」へ現れる。
美由紀は4歳のときに両親が失踪。苦しんだ末に自殺しかけた時、時田ユカリに救われたとのこと。
弥生は、自分よりも以上の苦しみを味わった母のことを知り、自分の気持を恥じて、母のように頑張ろうと現在に戻る。
そのすぐ後で、美由紀はユカリの計らいで、"自分が見たいと思っている未来"の「喫茶ドナドナ」に現れた。
弥生は、親子対面をして、「来年結婚するの」と嘘をついて幸せな顔みせ、美由紀を安心させる。
<詳細なあらすじ>
1.
< 序章 >
函館は坂の町である。
公けに名前が付けられていない坂は、地元の人からは「名無し坂」と呼ばれている。
流が働く「喫茶ドナドナ」は、その名無し坂の中腹にあった。
この喫茶店の中のある座席には、不思議な都市伝説がある。
その席に座ると、その席に座っている間だけ、望んだとおりの時間(過去または未来)に移動ができるという。
ただし、非常にめんどくさい次のようなルールがあった。
1.過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない者には会う事はできない。
2.過去に戻って、どんな努力をしても、現実は変わらない。
3.過去に戻れる席には先客がいる。
その席に座れるのは、その先客が席を立った時だけ。
4.過去に戻っても、席を立って移動する事はできない。
5.過去に戻れるのは、カップに注がれたコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ。
カランコロロン(喫茶店の入口のカウベルの音)
店長代理の流が東京との電話から戻ると、カウンター席に座っていた函館大学に通う学生の松原菜々子が、
「流さんは東京に残らなくてよかったんですか」と、声をかけてきた。
菜々子は、今日、流の亡くなった奥さんが娘に会うために、過去から東京の喫茶店(時間移動ができる都市伝説がある店)に来ることを聞いていた。だが、奥さんと14年振りに会えるチャンスだというのに、東京に行かず電話だけで済ませてしまうことを不思議に思っていたのだ。
流は、「うん、まぁ」と、曖昧に答えて、カウンターの中へと入った。
菜々子の隣には精神科医の村岡沙紀が坐っていた。菜々子と共にこの喫茶店の常連客である。
さらに、菜々子が、「奥さんに会いたくないんですか」と尋ねると、
流は、「俺じゃなくて娘に会いに来てるわけだし、俺には出会ってからの思い出があるんで………」と、言って逃げるように厨房に姿を消した。
(少しでも母と娘の二人きりの時間を大切にしてやりたい)といった気持なんだ。
入れ替わりに厨房から現れたのは時田数である。数はこの喫茶店のウエイトレスだ。
「何問目までいきましたか」
数はカウンターの中から、そう言って話題を変えた。
沙紀が「24問目」と言って、本に書かれている内容を声を出して読んだ。
「『もし、明日世界が終わるとしたら? 100の質問』
第24問。
あなたには今、最愛の男性、または女性がいます。
もし、明日世界が終わるとしたら、あなたはどちらの行動をとりますか。
①とりあえずプロポーズする。
②意味がないのでプロポーズしない」
沙紀は、「さ、どっち」と隣の菜々子に尋ねた。
菜々子は、答えずに、先生はと問い返した。
「後悔して死ぬのは嫌だから、しちゃうかも」と答えた。
菜々子は考え込み、「ちなみに数さんはどっちですか」と問う。
数が、「私は………」と言ったとき、
カランコロロン
数が反射的に、「いらっしゃいませ」と、喫茶店の入口に声をかけた。
「ただいま」と、元気な声がひびいた。女の子だった。
名は時田幸。数の娘で今年7歳になったばかり。父の名は新谷刻で写真家。世界各地の風景写真を撮るのが仕事で、年に数日しか戻って来ない。
「お帰り」と応えたのは、菜々子で、数は幸の後ろに控える青年に目配せした。
「おはようございます」
青年は小野怜司。このアルバイト定員である。
「ちょうど、そこでばったり会って………」
幸と一緒に入ってきた理由を、誰に聞かれたわけでもないのに説明して厨房に消えた。
店員にいる菜々子と沙紀以外の客は、入口近くのテーブル席に座る黒服の老紳士と菜々子と同年配の女性のみである。その女性客は、開店からずっといるのだが、何をするわけでもなく、ただ窓の外を眺めているだけだった。
この喫茶店の開店は、朝市などを訪ねる観光客に合わせて朝7時とずいぶん早い。
幸が抱えていたトートバックをテーブルの上に置く。
朝一番に図書館で本を借りてくるのが幸の休日の習慣になっていて、この日は、小学校は創立記念日で休みであった。
幸は借りてきた本を嬉しそうにテーブルの上に並べた。
「虚数と整数の挑戦状」、「ピカソに学ぶ古典美術の争点」、「……」、「……」
菜々子と沙紀は子供には難しい本だと思い、思わぬ衝撃を受ける。
数は、「意味がわかってなく、文字を見てるのが好きなだけです」とホローした。
幸は菜々子が持っている「もし、明日、…… 100の質問」という本に興味を示した。
「読んでみる?」と幸に本を渡す。
幸は最初のページに戻して読み上げた。
「『もし、明日、世界が終わるとしたら? 100の質問』
第一問。
あなたの眼の前には、今、世界の終わりが来ても一人だけ助かる部屋があります。
もし、明日世界が終わるとしたら、あなたはどちらの行動をとりますか?
①入る。
②入らない。 」
幸に、「さ、どっち?」と菜々子の声がひびいた。
幸は、「うーん」と少し考え、「私は入らない」ときっぱりと言い切った。
菜々子と沙紀は、「入る」とそっと答えていたので、菜々子は「なんで」と聞いた。
「だって、一人で生きていくっていうことは、一人で死ぬことと同じでしょう」
菜々子も沙紀も言葉を失った。
「ごちそうさま」と言って、開店からいた女性客が立って出口に向かった。
怜司から金額を聞いて、ショルダーバッグから財布をとり出した。そのとき、一枚の写真が床に落ちた。だが、女性は気づいていない。
怜司からお釣りを受け取ると、女性は、
「その子の言うとおりだわ。一人で生きなきゃいけないなら、死んだ方がましだった」と、独り言のように呟いて店を出た。
カランコロロン
「ありがとう……、ございました」と、いっも元気な怜司の挨拶がさえない。
「死んだほうがましだった……って」と、首を傾げながら戻ってくる怜司に、数が、そうですねと言って、じっと店の入口を見つめていた。
店の中央の柱時計を見た沙紀が、「おっと、もうこんな時間か……」と、言って立ち上がった。時計は、午前10時半を指している。
出口のほうに行った沙紀は、とつぜん、踵を返し、数に向かってこう告げた。
「麗子さんが来たら、様子を見ててもらえる?」と言う。(第二話に関連)
わかりましたと言って、数は頷いた。
カランコロロン
菜々子が、入口に落ちている写真に気づき、沙紀に声をかけた。しかし、沙紀は気づかずに出て行った。
菜々子はレジ前に駆け寄り、床の写真を拾い上げ、数に差し出した。
写っているのは、沙紀ではない若い女性と、同じ年頃の男性、そして、新生児らしき赤ん坊だった。赤ん坊は若い女性に抱かれている。それと、もう一人、若いときの時田ユカリ。
ユカリは、この喫茶店の店長で、今現在、ここで働いている流の母である。そして、数の母・時田要の実の姉でもあった。
ユカリは即行動の自由人で二月ほど前、この喫茶店を訪れたアメリカ人の少年と一緒に渡米してしまった。行方不明になった少年のお父さんを探すためである。
突然、店主を失ったこの喫茶店には、アルバイトの怜司しか残っておらず、長期休業の予定であった。
その頃、ちょうど東京に行く予定があった怜司は、流が働く喫茶店「フニクリフニクラ」に寄って、店を続けられないか相談した。
事情を知った流は、勝手気ままな母の行動に責任を感じ、流の娘・ミキを一人東京に残して、店長代理として函館にやってきた。
しかし、まだ問題があった。実は函館の喫茶店にも、「フニクリフニクラ」と同様に、過去に戻れるという席が存在する。
流には、この時間移動をさせる能力がない。時間を移動するためのコーヒーを淹れることができるのは、時田家の血を引く、7歳以上の女性のみと決まっているからだ。現在、その能力があるのは、ユカリ、数、流の娘のミキ、数の娘の幸の4人。ただし、女の子を妊娠すると、その能力は、その女の子に引き継がれ消えてしまう。
そのため、能力があるのは、ミキと幸だけとなるのだが、ミキは、時間移動によって過去からやってくる母と会うために東京に残っている必要があり、幸だけとなる。幸はまだ7歳なので、数が付き添いで函館に来て手伝うことになった。
東京の店は、10数年来の常連客に二美子と五郎にミキの手伝いをお願いすることになった。
そんなことから、流、数、幸の3人が来函したのだ。
「これ、朝からずっといた女の人のものじゃないですか」
数も同じ意見で頷いた。
菜々子が写真の裏側に書かれた文字に気づいた。
「 2030、 827、20:31 」
どう見ても今日の日付である。しかも、その数字の後には、「あなたに会えてよかった」と書いてあった。
(朝からいた女性が、ぜひ会いたいと心では思っていたので、それを書いたのだろう)
数は、(今夜、来る……)と思った。
「
<瀬戸弥生は母親に会うために過去に戻る決心をした>」へ続く