T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

1205話 [ 謹賀新年 ] 1/1・金曜(曇・晴)

2015-12-30 15:36:21 | 日記・エッセイ・コラム

                

                                                                                                                

 今年も、元気で、皆さんに新年のご挨拶ができることを喜んでいます。

                                                

 今年は、毎日、多くの事柄を 「メモル」 ことを目標に生活することにしました。

 普通の日記、健康関係日記、家計メモ日記、新聞見出し日記を記述し、

 そして、このブログも1500話ぐらいまでUPしたいと思っています。

 [高齢者の脳力]をアップするために頑張ってみようと思っています。

                                                                                          

      初ブログ 年賀に決意 したためて

 

 

 

   

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1204話 [ 最近、購入した本 ] 12/29・火曜(晴)

2015-12-29 09:28:45 | 本と雑誌

                                                           

                                       

 最近、またまた、2冊の本を買いました。

                                           

 1冊は、池波正太郎の「鬼平犯科帳 1 」。

 先日、逢坂剛の長谷川平蔵シリーズ2冊を買いました。

 長谷川平蔵といえば、池波正太郎の「鬼平犯科帳」が非常に有名で、

多くの人から読まれ、24冊ものシリーズ物として出版されている。

 (時代小説好きの私だが、読んでいなかった)

 そんな状況の中で、

逢坂剛氏は、長谷川平蔵の捕物帳を、よく書く気持になったものだし、

しかも、シリーズ2冊目の「平蔵狩り」が2015年の吉川英治文学賞を貰っている。

 そんなことから、

文体も違うだろうし、火盗改方の頭取としての平蔵のとらえ方も違うだろう、

どんなふうに違うのか、ぜひ、読み比べてみようと思った。

(後日、その違いを纏めて、ブログにUPしたいと思っている)

                                                                                                    

 2冊目は、半藤一利の「幕末史」。

 NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」が、先日、終わった。

 テレビを見ながら、幕末の長州藩の藩政の歴史を、復習してみたいと思っていた。

 店頭で、「幕末史」の「はじめの章」を立ち読みしたら、

著者が「反薩長史観」になるだろうと述べていた。

 私が昔習った歴史は、

"勝てば官軍、負ければ賊軍"の思想で書かれていないだろうが、

 (長州藩史よりも日本史になるだが)

 これだと思った。

 

                                               

 

 

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1203話 [ 「下町ロケット2」を読み終えて -12/12- ] 12/28・月曜(曇・晴)

2015-12-28 09:03:22 | 書籍概要

[ 第十一章 夢と挫折 ]

(1) 「コアハート」の再スタート

 貴船を前に、久坂が、

「椎名はダメです。遠からず告発されるでしょう。弊社にも当然入ります」と言いながら、

「こんなことで、コアハートの開発が滞ることがあっては断じてならないと思います。貴船先生は被害者です」と、依然として、従来の主張を繰り返す。

 そして、久坂は、

「我々は、サヤマ製作所の代わりに、パーツを作る会社を早急に当たります。世界中に、先生の人工心臓を待っている患者がいるんです」と、傷心の貴船を励ます。

 その同じ頃、佃は、神谷顧問弁護士と何度目かのガウディの特許申請の打ち合わせをして、もう一つの相談(日本クラインが作ろうとしている山崎が設計した「コアハート」バルブの特許侵害)をお願いしていた。

(2) 「コアハート」バルブ開発の再依頼

 佃が神谷と打ち合わせした翌日、サヤマ製作所、日本クラインとアジア医科大学に警察の家宅捜査が入った。そして、椎名と月島は任意同行を求められた。

 その翌々週、久坂と藤堂が佃製作所を訪ねた。佃製作所側は神谷も同席した。

 久坂が本題を切り出し、

「サヤマ製作所に製造を依頼していたバルブを、ぜひ、御社でお願いしたいと思っています」と言って、バルブの設計図を広げた。

 山崎が、それを覗き込み、隣の神谷にも見えるようズラして、

「この設計図は、私どもが以前、御社に試作品を納品したときに設計が変更になったといって見せてもらったもののようですが、どなたが描かれたんですか」と問うた。

 藤堂が、「社内に決まっているでしょう。何がおっしゃりたいんですか」と、硬い口調で聞いた。

 佃が、設計図を差し出して、

「これは、昨年、試作品の納品時、ウチの山崎が、設計に問題があるといって、新たに設計し直したものです。御社のと見比べてください。同じようですね」と言った。

 久坂が、「何を馬鹿なことをおっしゃるのですか。そんなに、いちゃもんを付けるようだったら、他の会社を当たります」と言う。

 神谷が、書類を見せなら、

「いま、佃社長がお見せした設計図は、二年前に特許申請し、その書類にあるように許可されたものです。御社の製造されているこのバルブの構造に対して、佃製作所は、特許の実施を認めていません。従って、いま御社が試作している事実に対して、特許侵害として、別途、製造中止を申し入れます。もちろん、他社にお願いしても、提示された設計図によるものは製造できません」と言う。

 そして、佃も、「御社と取引するつもりも、特許の使用許可を与えるつもりもありません」と言った。

(3) サヤマ製作所に留まる中里

 梅雨明け宣言を聞いた7月下旬、中里は佃製作所の駐車場から社屋を眺めていた。

 外から帰ってきた佃は、中里を社長室に招き入れた。

 中里は、山崎が作成した設計図を椎名に渡したことを詫びた。

 佃は、「その件はについては、日本クラインがウチに来たとき決着がついた。それより、お前、今後どうするのか」と訊ねた。

「正直、これから会社がどうなるか分かりませんが、私も秘密データを人目に晒したままにしていた責任がありますので、会社に残ります」と、中里は返事した。

 中里の話では、椎名は逮捕され、専務だった人が社長になり、営業は継続しているが、社員はどんどん辞めていて、正直、苦しいとのことだった。

 二人はしばらく話して、佃は、「会社は修羅場だろうが、そこしか経験できないこともあるはずだ」と言って、見送った。

                                                          

[ 最終章 挑戦の終わり 夢の始まり]

(1) コアハートの空中分解・ガウディの成功

 3月下旬、学部長室から外を眺めている貴船のところに、久坂が訪ねてきた。

 貴船が、「何かいいことでもあったか」と聞いた。

 久坂は、「残念ながら、なにもありません」と、返事するほかなかった。

 椎名が業務上過失致死の疑いで逮捕されてから、すでに半年以上が経ち、「コアハート」はすべて空中分解したまま放り出されている。

 臨床実験は中止され、「コアハート」の開発は暗礁に乗り上げていた。貴船は学会のトップの座を辞すると同時に、アジア医科大学の学部長からも更迭され、千葉の病院長に赴任することになっていた。

 ガウディの最後の臨床試験となる手術を見学するため、佃たちは、福井を訪ねた。それは、日本クラインの再依頼を断ったときから3年経った10月のことだった。

「中島聖人君。7歳。体重15kg。心臓弁膜症による僧帽弁の人工弁置換手術で、ガウディの最終臨床試験となります」と一村が読み上げる。

 肋骨が切開され、開胸器が入れられた。

 佃は、モニタにのめり込み、一村の一挙手一投足を見届けようとしている。

 切開が終了した。

「ガウディ」、一村の声に、

 看護師がトレイにのせたガウディが一村に差し出される。

 立花の喉がごくりと動き、手に取るような緊張が佃にまで伝わってくる。

 ………。

 最後の糸を縫い上げて、一村は赤く染まったゴム手袋の右手を挙げた。

 財前、そして、佃と握手した佃は、泣いている立花と加納の2人を両手で抱き、何度も揺すって喜びを分かち合う。

 桜田は、一人静かに涙を流していた。

(3) 次の夢

 ガウディの医療機器製造の承認が下りたのは、臨床試験が終えて約半年後のことであった。

 佃の製造承認の発表に、ワークデスクで額を突き合わすようにして、一心不乱に何かの図面を覗き込んでいた立花と加納は、思わず立ち上がったものの、立花は呆(ホウ)けたような顔で、加納は弾けた笑顔で佃を見た。 

 立花と加納に、社員たちが次々に握手しての祝祭が始まった。

 祝祭が終わり、社員たちが仕事に戻った後、佃は、立花と加納を労らうためにワークデスクに近づいた。

 すると、立花と加納が、先ほど見ていたデッサンを見せて、

「一村先生から、例の血栓シュレッダーに関する初見を貰ったので、イメージをスケッチしてみたんです。感じとしては、心臓バイパス手術に使うステント(血管などを広げる網目の筒状のもの)のようなものですかね」と話す。

 思わず、佃は苦笑する。もう次のことを始めてやがると。

(4) ガウディを仏壇に供える桜田

 ガウディの医療機器製造承認の一報をもらった桜田は、真っ先に娘の遺影の前に向かった。

 遺影に報告する桜田の頬に幾すじもの涙が伝い始めた。報告し終わった後、桜田は、ガウディを仏壇に供えて、静かに合掌した。

                                              

「 雑感 」

 久し振りに、非常に面白く、また感動した作品だった。

 そのため、ついつい、作品の文章を多く抜粋して、この「あらすじ」の行数も長くなってしまった。

 また、並行してドラマ化もされた。ドラマも、本とは、時系列に違いはあったが、山あり谷ありで、面白く見ながら、さすが脚本もプロだと思ったし、私の「あらすじ」の纏めの参考にもなった。

                                                                                                    

                                                                   終  

  

 

 

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1202話 [ 「下町ロケット2」を読み終えて -11/?- ] 12/26・土曜(晴)

2015-12-26 09:02:16 | 読書

[ 第十一章 スキャンダル ]

(1) 「週刊誌ポルト」に疑惑暴露

 新宿本社に戻った椎名を待っていたのは、「週刊誌ポルト」の見本誌。

 月島が開いたページには、でかでかと見出しが躍っていた。

                                                

[ ―ー最新鋭人工心臓「コアハート」に重大疑惑!! ]

「コアハート」の移植手術を一ヶ月前に受けた小西悟さんは、前日まで、いたって元気だったという。

そんな悟さんの容態がなぜ急変したのか。 ………。

キーパーツのバルブを作ったサヤマ製作所に、実験データ偽装の重大疑惑が浮上してきたのである。

サヤマ製作所の関係者のAさんは、こう語る。

『人の命に関わる医療機器で、データ偽装の事実を隠蔽して、臨床試験が継続される。こんなことを許していたら、何人の人の命が奪われるか分かりません』

と、内部告発を決意。………。

                                         

 椎名は、週刊誌の編集長に、「事実無根だ。すぐに撤回しろ」と、電話した。編集長からは、「きちんと取材したうえで検証しています。記事の撤回は致しません」と、返答される。

 椎名は月島に、

「錯誤だ。偽装の意図はなかった。たんに取り間違えたと発表しろ」と、怒りをぶちまけ、

「責任をとれ、月島。全てぶち壊しにしたんだぞ、お前が」と、怒鳴り散らした。

「なんで、私なんです。全て社長の指示で……」と、刃向かう口調で月島が言う。

(2) 佃たちの目に週刊誌のデータ偽装記事

 殿村から、「週刊誌ポルト」のデータ偽装記事を見せられた山崎は、

「確かに、あの実験データは出来過ぎていると思った。社長もでしょう」と言う。

 殿村は、「どうなるんですかね、サヤマ」と呟く。それに答えて、佃は、

「どうなるのか、というより、どうするか、だ。過ちに気づいたところで、ウソをついたり、スジを通さない奴は、絶対に生き残れない。姑息な了見が通るほど、世の中ってのは甘くない」と言う。

(3) 詰問される貴船・怒声で叱責する貴船

 貴船は、理事会で詰問の雨に晒され必死の釈明に追われていた。

「椎名社長は否定しているそうでとは、なんですか。確認されていないんですか」

「先生がデータ偽装を指示したとか、そういう事実はないんですか」

「この告発で、本学が大変な問題を抱えてしまったことについて、認識されておられますか」

「いまでも、あの事故が事件ではないと言いきれますか」

「いま先生は、水準に達していない部品が使用されていたとすれば、機械の誤動作が原因という可能性は否定できないと言われたが、巻田先生の責任とも言えないことになりますが、事故だと断じたのは早計だったのではありませんか」

 理事会の後、自室に戻った貴船は、日本クラインの鈴木社長や久坂に怒声を発した。

「すべての責任を日本クラインに背負ってもらうからな」

「久坂(呼び捨て)。君は、本当に知らなかったんだろうな。知っていたなら、今ここで正直に言え」

 鈴木社長は謝罪した。

「申し訳ございません。すべて我々の責任です。何とかしますから、しばらくお時間を頂戴できませんか」

 貴船の真っ赤な目が、つと上がった。

「術(スベ)もないのに、何とかすると安請け合いをする。そんなのが通用するのは、あなた達みたいな、なあなあの世界で生きる連中だけなんだ。我々医者は失敗したら人が死ぬんだ。時間を貰えれば、死んだ人を生き返らせられるのか」と、髪が乱れるのも構わず言い放った。

(4) 久坂たちの責任

 謝罪で疲れ果てて自社に戻った久坂は、自分らに降りかかる責任を念頭に、藤堂に聞く。

「お前、何も知らなかったよな。ウチとしての問題はどこにあるんだ」

「もちろん、知りませんでした。ウチとしての論点は、このデータを一下請け企業の個別の犯罪と言い切れるかどうかです」

 その返事に、久坂は力尽きたように、首をがくりと折って、

「万が一、ウチの体制の瑕疵を指摘されたとなれば、我々も無傷ではいられない。藤堂、その時は覚悟しておけ、もしそうなればオレ達は終わりだ」と言った。

(5) 財前から継続供給可否の問合わせ

 データ偽装事件は、ニュース番組でも取り上げられる騒ぎになっている。それだけでなく、容疑を否認している椎名の態度に、今度はバラエティ番組が飛びついた。

 そんな中、帝国重工の様子伺いに行っていた江原が急ぎ帰社した。そして佃に、

「いま宇宙航空部は、てんやわんやの大騒ぎです。サヤマ製作所のバルブをどうするか至急協議することになりました。コンプライアンス上の問題が出てくるようです。それで、財前部長から、ウチのバルブ、今まで通り継続供給できるか、社長に聞いてくれと言われました」と報告する。

 佃は、すぐに財前に電話した。

「必ず対応させていただきます。結果をお待ちしています」

 通話を終えた佃は、「仕切り直しだ」と大声で皆に伝えた。

(6) 帝国重工のデータ偽装対応会議

 航空宇宙部の緊急部長会議が開かれた。

 水原本部長の始めようの合図で、財前が私からお話をさせていただきますと、立ち上がった。

「ーーーサヤマ製作所では、データ偽装疑惑について事実無根と否定する見解を出していますが、証明はできていません。とはいえ、週刊誌の記事は、内部告発者の証言がベースになっており、信憑性は高いと言わざるを得ません。仮に、それが事実だとすれと、我が社のコンプライアンス規範に抵触するため、先日採用を決定したサヤマ製作所製のバルブについて、共同開発を含めて見直しを迫られることになり、プロジェクトの進行に重大な支障をきたす事態となっております。開発グループとしては、前回の決定を白紙に戻し、佃製作所製のバルブの搭載を目指したいと考えます」

 財前の発言が終わるやいなや、石坂が反論した。

「週刊誌の記事ですよ、これは。こんなものを信じるのですか。椎名さんは、NASA出身の技術者ですよ。仕事なんかいくらでもあるんだ。人工心臓のバルブひとつに、そんな偽装をするとは思わない」

 その後も相互に反論した。

「では、石坂さん、仮に、プロジェクトの途中で、不正が明らかになった場合、後戻りできません。そうはならないと断言できますか」

「佃のバルブに変えた場合、もし何もなかったら、ウチの技術の遅れに責任はとれるのか」

「これは、単純にどちらを信じるかという比較の問題でなく、リスクテイク(危険を承知で行うかどうか)の問題です。椎名社長が否定したから、それを鵜呑みにして実行したと言うことが、藤間社長やロケットのクライアントに通用しますか」

 水原本部長が頷いて、

「財前君の言うとおりで、議論の余地がないように思えるが」という水原の言葉で議論は終わり、続いて、「サヤマ製作所の白黒がはっきりするまで、共同開発をはじめ同社とのすべての取引を即刻凍結する。財前君、佃さんに、今回の件は申し訳なかったと伝えてください」と結論が出された。

(7) コンペの勝利

 財前からの連絡の電話に、室内は静まりかえり、静謐の中、佃のやり取りの声だけが響いている。

「精一杯やらせていただきます。ご連絡有難うございました」

 佃が通話を終えると同時に、「ウォーッ」と社員の間から声が上がり、歓喜が爆発した。

『立花さん、まだ遣るんですか。みんな、二次会に行くって言っていますよ』

 ワークデスクに戻っていた立花を、加納が誘いに来た。

『PMDAとの面談、明後日だろ。時間がある限り向き合っていようと思っているんだ』

 立花らしい姿勢である。

『私も付き合います。でも、ここで完璧なものを作っても、また、中小企業だからって言われちゃうと、正直、厳しいですよね』

 加納は、いつも抱えている不安を口にする。

『中小企業には違いないから、そこはどうしょうもないな。結局、僕たちが出来ることは、より完璧に近いものを作るだけだから』

『変えられることと、変えられないことがありますもんね。でも、無駄にならなきゃいいですね』

『結果を考えるなよ。僕たちがなんで、これをやっているのかが大事じゃん』

 加納は納得し、壁の子供たちの写真を見た。

(8) PMDAとの第2回面談

 PMDA側は同じメンバーである。

 進行役の滝川の司会で面談がスタートした。

 佃製作所と一村から、格段に進化した新たな人工弁の特徴とその実験内容と結果について説明がなされた。

 案の定、説明がすんだ後、滝川から、

「いまの話には肝心なものが欠落している。このガウディで医療事故が起こったとき、あんた達で責任がとれないでしょう。違いますか」と喧嘩腰の発言がなされた。続けて、

「医療面からみて、皆さんが人工弁に参入する意味はあまりなく、代わりにリスクが目についてしまうんだなあ」と審査する側の上から目線で、言いたい放題の言葉が飛び出した。

『しかしですねーーー』と何らかの説得を試みようと佃が立ち上がった。

 その時、うしろから、

『いまは、人工弁の手術は殆どの子供には無理なのです。人工弁のサイズが合わないからなんです。そのことから手術ができず、病気が悪化したり、友達と遊ぶこともできない子供たちが、いま日本にいるんです。

ウチのグループは小さい会社ばかりかもしれません。ですが、このガウディは、大勢の子供たちが臨床で使われる日を待っているのです。

命の尊さを会社の大小で測ることができるでしょうか。どんな会社であろうと、人の命を守るために、ひたむきに誠実に、そして、強い意志をもって作られた物であれば、会社の規模などという尺度でなく、その製品が本当に優れているのかどうかという、少なくとも本質な議論で測られるべきです』

 と、滝川を睨みつけて発言した立花は、8人の審査担当者にお手元の「ガウディ」をしっかり見てくださいとお願いした。

 その時、すぐさま、「お掛け下さい、立花さん。よく分かりました。いくつかの技術的なことを質問します」と、リーダーを務める山野辺審査役が、滝川の司会を引き取った。

 素材などについて質問があった後、山野辺から、待ち望んだ評価の言葉が発せられた。

「いいものを開発されていると思います。いままで、これだけの小動物の実験データを蓄積されているなら、大型の動物への実験を一歩進められてみてはいかがですか」

 立花の顔が輝き、加納は今にも泣きだしそうな顔になった。

 会議が終わって、エレベータホールに出たとき、先ほど着信したのだと言って、佃は、財前からのメールを読み上げた。

『PMDAとの面談に間に合わなくて申し訳ない。ガウディ計画への出資、先ほど、役員決裁されました。まずはご報告まで』

 顔を上げた桜田は放心したような表情で、ただ佃を見ていた。

                                                

                               次章に続く

     

 

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1201話 [ 「下町ロケット2」を読み終えて -10/?- ] 12/24・木曜(曇・晴)

2015-12-24 13:02:39 | 読書

[ 第九章 完璧なデータ ]

(1) 石坂と椎名の密かな会合

 帝国重工の来客用応接フロアで、椎名は石坂に、燃焼試験前の性能診断で高評価を受けたことに、お力添えの賜物だと礼を言う。

 石坂は椎名に、共同開発したバルブの特許がらみは我々に譲ってもらってもいいねと念を押す。そして、佃の燃焼試験は成功したので、来週のおタクの燃焼試験は軽くパスしてくれと言う。

(2) 貴船の軍門に下ろうとする一村

 東京行きを決めるまで、一村は何度も迷った。

 帝国重工の出資が難しくなっているとの連絡を、佃から受けたのは二日前のことだ。それ以前に桜田の憔悴しきった告白があった。

 そのような状態の中で、貴船による論文掲載の妨害、PMDAの滝川を抱き込んでの開発潰しと、貴船の関係だけで、「ガウディ計画」の進捗が硬直しているのは承服できないが、一日も早く実現化するためには、しかたない。

 熟慮の末、一村が出した結論は貴船との和解である。

 貴船の研究室に出向いて、一村は頭を下げて、

「先日の非礼は謝罪いたします。何とかご支援いただきます」と申し出た。

 しかし、「いったい何しに来たのか」と門前払いの扱いを受ける。

 一村は、福井に帰る前に、このことを佃に報告するため佃製作所に寄った。

(3) 落ち込んでいる一村を励ます佃組

 貴船との話を告げた後、一村は神妙な顔で切り出した。

「今度の薬事戦略相談、キャンセルしてはどうかと思うんです。いまのまま面談に臨んでも、PMDAの態度が激変するとも思えませんし、カネもかかります」

 佃は厳しい表情になって、

「今回の面談料はウチが全面負担しますからご心配なく。それに、貴船先生は、我々の開発には関係がないんじゃないですか」と指摘し、続けて、

「私は一村先生のアイデアとこの開発の将来性、素晴らしさに共感して協力することに決めました。我々中小企業が何かを決めて行動を起こすというのは生半可なことじゃないんです」と言う。

 そして、一村に、人工弁の試作品と動作評価テストのデータを見せた。

 素晴らしいと感嘆する一村に、ウチの連中は、これで満足せずに、いまも3階で、性能を追求しています。よろしかったらどうぞと、技術開発部の立花たちの一隅に案内した。

 一村は、プラモデルの箱や本(立花たちが持っていったお土産)を抱えた自分の患者の子供たちの写真が多くが張られている壁に近づいた。

 これは? という一村に、立花は答えて、

「この子たちが、オレ達の先生です。もう駄目だと思ったら、この写真を見るのです。そうすると、負けるなと励ましてくれるのです」と言う。

 続けて佃が、「我々の挑戦は、まだ始まったばかりですよ」と自分にも言い聞かせるように発言した。

(4) サヤマ製作所の燃焼試験

 財前から佃に電話がかかってきた。

「サヤマ製作所の燃焼試験が行なわれました。成功でしたが、御社のバルブのほうが高評価でした。来週の部内会議で、発注先が決定されますので、その時は、この成績どおり、私は御社を推薦します」

 佃は運転している江原に、電話の内容を告げて、このことで、直ぐに受注に結び付かない、帝国重工には、独特の企業倫理がある。それが大企業というものだと言って、外の光景に目を凝らした。

(5) 「コアハート」開発情報、サヤマ製作所から漏洩

 燃焼試験が成功裏に終わった翌日、椎名のところに藤堂が訪れ、真剣な眼差しを椎名に向けた。

「咲間倫子という医療ジャーナリストが、アジア医科大学の事故、あれが、「コアハート」の不良が原因だったと言いたいらしく、関係先を取材しているのだが、ウチのある取引先に来たとき、この資料を見せられたようで、そのコピーです」

 資料を見て、申し訳ないと椎名は詫びた。

 データ漏洩について、出所などを調査して報告してくださいと、藤堂は厳しく言いつけた。

 椎名は藤堂が帰った後、直ぐに、月島に指示したが、足もとから恐怖と焦燥が這いあがってきた。

(6) 巻田の切り捨て提言

 六本木の和食の店の個室。

 久坂は貴船に、設計図の出所は分かりましたかと訊ねる。さあな、と顔をしかめる貴船。

 久坂は、「巻田先生以外に考えられない。ウチの藤堂にも「コアハート」に不具合があったんじゃないかと詰問したようですし。責任を負わされた側の逃げ道として、高知に新しい病院ができるとのことですが、そちらに異動させられたらどうですか」と言う。

(7) データ偽装の内部告発

「中里、このバルブの実験データ、見覚えがあるだろう。あの時、外部メモリーにダウンロードしたよね。記録が残っているんだぞ」

 思いがけない事実を月島は口にした。

 中里は、画面を出したまま、その場を離れて休憩したので、誰かが、そうした可能性はありますと答えた。

 月島は、中里のスマホを強制的に取り上げ、発着信履歴を見た。

 咲間の痕跡を見つけることはできなかったが、開発情報は極秘データだから人目につく状態にしていたことは責任ものだと言う。

 中里には、誰が犯人かは、もうわかっていた。

 周りに人がいないことを確かめて、中里は横田に質問した。

「ウチの開発データをジャーナリストに渡したのはお前だろ。なぜ、そんなことをしたのか」

「その前に、あのデータ、お前、どう思った」、少し間をおいて、「あのデータは確かに完璧だ。逆に完璧すぎたと思わなかったか」

「まさかーーーデータ偽装か」

 驚愕に刮目(カツモク)した中里に、

「いまのウチが供給しているバルブの精度は、千個に一個ぐらいの割合で不良が出ているはずだ。それなのに近く、「コアハート」の臨床試験が再開されるらしいんだ。このままだと、また事故が起こるのだぞ。黙っておれるか」と怒りの言葉を発した。

(8) バルブのコンペ結果

 帝国重工宇宙航空部の部長会議で、財前の「バルブ選定」の発表が回ってきた。

「二度の燃焼試験を実施、性能評価を実施しました。改善を加えた次期エンジンの性能は、所期の目的通りの成績をあげており、問題なく成功しました。バルブについてですが、佃製作所製バルブの成績が比較対象のサヤマ製作所製のそれを上回っていたので、佃製を採用したいと思います」と発言した。

 それについて、私から一言と、案の丞、石坂部長が発言を求めた。

「いま財前さんから佃製作所の方が上だという報告がありましたが、セッティングによる誤差の範囲と言ってもいいと思います。それに、将来のことを考えた場合、共同開発を前提に意見交換して製造したサヤマ性を採用した方が社益に適うはずです。いってみれば自社開発のようなものですし、キーデバイスは内製化するという社長方針にも合致します。また、今後の共同開発によってアッという間に差は埋まり、すぐに技術的優位に立つでしょう」

 財前は反論する。

「ですが、打上げは一度の失敗で相当のダメージを受けます。たとえ僅かでも、ベストと思われるパーツを採用するのが当然ではないでしょうか」

 だが、社長方針という一言で、サヤマ製作所製に傾いた場の雰囲気をひっくり返すだけの説得力はない。

 水原本部長の、「今度はサヤマ製作所のバルブでいこう」と決裁が下った。

 財前との通話を終えた佃は、自分を見つめている社員たちに向かって言った。

『今回はダメだった。しかし、性能では勝ったんだ。オレ達のほうが、良いバルブを作っているんだからさ。みんな頑張って、次、頑張ろう』

 誰かが言った。

『勝負に勝って、試合に負ける、そんな感じの結果でしたね』

 しかし、佃は、帝国重工に対する営業戦略について考えが足りなかった、バルブの単独開発以外の発想がなかったと反省し、お前らの技術を生かすだけの知恵がオレに無かったと、詫びた。

(9) 乾杯の席にデータ偽装の凶報

 石坂、富山と椎名が乾杯している席に、椎名のスマホが、また、振動し始めた。

 椎名は何度もの着信に内心不機嫌になりながら席を外す。スマホを耳にすると、

「社長ーーー至急、会社に戻れませんか」と、月島の悲鳴のような声が飛び込んできた。

                                                         

                            次章に続く 

 

 

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