津々堂のたわごと日録

わたしの正論は果たして世の中で通用するのか?

■肥後国新守護職の情報ー1

2024-03-28 06:56:25 | 書籍・読書

    江戸史料叢書「落穂草」を読んでいたら、「肥後国守護職」という記事があった。
この落穂草の著者は、大道寺重祐友山なる人物で、「徳川家康の誕生から大坂夏の陣が終る迄の家康及びその周辺諸家の動静を記述したもの。」と
ある。
当時の関係者に聞き取りをするなど、信ぴょう性は高いものと思われる。少々、長い文章だが労を惜しまず、御紹介してみたい。
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           肥後国守護職

 一、問て云、いつの頃の義にて候哉。公方様の御機嫌大きに損し、其日にかきり御城にて御用多く候て、頓て七ッ前迄御詰候て退出あられたる御
  老中方を、急に被為召何れも早乗物にて俄に登城在之候を以、末々とては大きに肝をつふし候義の在之たると申候をは、いかゝ被聞及候哉。
  答て云、其義を我等の承り及び候は、大猷院様(秀忠)御代の義に在之候由、子細は其節加藤肥後守(忠廣)殿身上果候以後、肥後之国主の被
  仰付も無御座候を以、誰人か拝領か被致と在之、江戸人の諸人聞耳をたて是のみを取沙汰仕候折節、御城に於て御用之義在之、其御席に而右肥
  後の国主の御撰ひの御沙汰なと御座候由、左様の後陽ゆへの義にも在之候哉。いつとても御老中方には八ッの時をさへ打候へと其まゝ御下りの
  処に、其日は七ッ頃に至り何れも御下り候処に、御側衆より御用の義在之候間、只今登城可有之旨申来候付、土井大炊頭殿(利勝)には帰宅あ
  られ上下を御取、留守中の用事なと聞之御入候所へ被為召候との義に付、早々支度を調へ屋敷(大手町)の門外迄出給ふ所へ御小人衆走り来り、
  急き御上り候様にとの事ゆへ、夫より早乗物にて登城在之、外の御老中さま御上り候へ共、井伊掃部頭殿(直孝)少し恙く候を、何れも御待合
  せ候内にもいまた揃ひ不申候哉の旨御尋なと在之、其後御老中方各御前へ御出候所に公方様(家光)にも殊の外なる御不興らしき御様躰に御見
  へ被遊、何れもへ御向ひ被遊其方共を呼寄候義、別事に非らず、もはや我等天下の仕置はならす候、此段を何れもへ可申聞為なりと迄の上意に
  付、各驚き入とかくの御請も無御座所に、夫はいか成思召を以の上意にて御座候哉と大炊頭殿被申上候へは、其時上意被遊候は、今日各中へ申
  談したる肥後の国主の義は、近き内に可申渡義成を先達て其者の方へ告知するには不及義也。左様に内談の事か、もれ安く候ては我等天下の仕
  置は成へき事かと上意有けれは、大炊頭殿被承、其儀に於ては恐悦の至り目出度御事に御座候と被申上候へは、弥々御機嫌悪敷被成大炊頭殿へ
  御向ひ被遊、其方は内談の外へもれ安きと有を目出度と申候か 夫は聞所也、其子細を申せと有上意にて大炊頭殿被居所へ御座を御詰寄被遊候
  を以、掃部頭殿を初め御老中方何れも胸を被冷候処に、大炊殿被申上候は、是に罷在候同役共いつれも存候通、何そ是は急に相触不申しては叶
  ひ不申と有之如くなる御用むきなと有之節、諸番頭諸役人共へ申渡し、随分急に相触させ候ても、其日の中なとには末々迄触届け候如くには成
  兼申義に御座候。肥後国守護の義は、誰にか可被仰付と有之義を、下々に於ては、諸人聞耳をたて罷在候処に、私共はいつとても八ッの太鼓さ
  へ鳴候へば罷下り候を、今日の義は彼是御用も多く、頓て七ッ比迄御城に罷在候に付、扨は肥後の国主相極り候かと推量仕り、然るに於ては、
  細川越中守より外には無御座と江戸中の取沙汰には及び候と存候。然は上御一人の思召と下方人の存寄と一同仕り候と有之義は、恐悦至極の御
  事に候を以目出度御義とは申上候。惣而私儀は毎日両人宛内々似て江戸中へ物聞を指出し申候処に、私義いまた御城に罷在帰宅不仕内に右両人
  の者共罷帰り、壱人は芝札の辻辺、一人は牛込辺 におゐて細川越中守へ肥後の国拝領被仰付哉と有之義を承り候由書付仕り、用人共方迄差出
  し置候と在之、右両通の書付を指上候へは、則御上覧被遊御機嫌も御やわらぎ被遊候刻、掃部頭殿にも大炊申上候通に私躰も奉存候と御挨拶被
  申上候へは、御笑ひ被遊なから何れも呼寄る事にてはなかりつるぞ、早々罷帰休息仕候様にとの上意につき、右帰宅あられ事済候となり。

               (つづく)

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