一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

春のとまどい

2010-04-18 14:57:25 | 季節
   

 
    「ウインド・イン・マーチ」
    「レイン・イン・エイプリル」
    つまり「風の3月」「雨の4月」というのだそうだ。
    また桜の季節の雨を「桜雨」ということも、新聞で
    知った。(朝日新聞「天声人語」)

    ところが今年の4月は桜雨どころか異常な冷え込みで、
    41年ぶりの「最もおそい雪」となった。
    自然の気まぐれというか、お天気博士の倉嶋厚さんの
    本によると、ドイツの童謡にこんな詩があるという。
    
    「4月よ、4月はいったい自分でどうしたらよいのか
    分からないでいるのだ」
 
    まるで、思春期の少年少女のような……。
    大人の扉ならぬ「季節の扉」をなかなか開けられない、
    といったような。

    それでハタと思った。
    ン十年前に思春期を卒(お)えたはずだが、いまだに
    私はこの季節が苦手なのである。
    花が咲き、若芽が出て、ものみな萌え出ずる季節なの
    に……みんなが自然を謳歌しているように見えて、
    声高にいえないものがあった。

    多分にアレルギー性にもよるのだろうけれど、不安定
    の原因の核は、この「とまどい」にあるのだ。
    人も季節もどんどん移ろいゆくとまどい。
    それに充分対応しきれないとまどい。
    
    世の中はすっかり春の装いなのに、まだ綿入れの
    ちゃんちゃんこ(?)を脱ぎすてられないような、
    そんなとまどい。
    だから、庭の雑草を取っていても、雑草とは?
    と考えて一向にはかどらず、日常生活全般にキレが
    ない感じなのである。
    要するに、すべてに決断できないのが春なのだ。
    
    この間、ふと気づいた。
    子供のころ、花と葉が同時に出るヤマザクラが
    嫌いで、どうして大人はあんな桜を愛でるのだろう
    と不思議でならなかった。
    ところがいつの間にか、あの潔さが好きになって
    いて、今ではむしろ、ソメイヨシノよりヤマザクラ
    に軍配をあげる。

    いかにも「見てみて!」といったソメイヨシノの
    華やかさ、可憐さがうっとうしくさえ思えてきた
    のだから、この変化は何?
    人に媚を売っているような、といったら言い
    過ぎだろうか。
    加齢は桜の好みも変えるらしい。
    
    自然の営みはよくしたもので、いずれ暖かくなり、
    やがて新緑の季節をむかえるだろう。
    問題は「私の春」をいつ脱却するか、である。
    (写真は雪をかぶったヤマザクラ)