蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ぼくは猟師になった

2013年05月03日 | 本の感想
ぼくは猟師になった(千松信也 新潮文庫)

昔、有名なコメディアンが離婚したとき、会見した奥さんが離婚の理由として、到来物が多くて気が重かった、生きたカニとか処理が大変なものが多くて負担だった、みたいなコメントをしていて(ジョークとも思えない顔つきだった)少々驚いた覚えがある。
ちょっと前に、わが家にも贈り物としてヒラメが来たことがあって、なんとまだ生きていた。送ってくれた人は元漁師なので、魚を捌くなんて朝飯前で、新鮮な魚を送って食べてもらおうという好意だったのだろうけど、こちらは釣りをしたこともないし、そもそも絶命の仕方がわからず、箱から取り出したら大暴れして往生した。同じような経験をして件の奥さんの気持ちが少しだけわかったような気がした(それでも、離婚の理由としてはどうよ、とは今でも思うが)。

本書は、ワナ猟を中心にした(兼業)猟師の生活を紹介したエッセイ。
ワナにかかった獲物をなぐり殺すとか解体する記述や写真が多く掲載されている。魚もうまく処理できない私にはとてもできそうにない作業ばかりで、我ながら軟弱だよなーと恥ずかしくなった。
ただ、魚はまだしも、ケモノを解体する作業なんて、今の日本では日常生活と完全に隔離されてしまっているから、猟師の仕事内容に違和感があるのは私ばかりではないだろう。
一方で、だからこそ食べ物から燃料までほぼ自給自足という生活には、ほのかな憧れを感じるし、野生のイノシシの肉はとてもおいしそうに思えたので、一度ご相伴にあずかりたいものだとも思った。

本書によると、オオカミなどの天敵や猟師の減少で、日本ではシカやイノシシの数が大幅に増えているらしい。野生動物が人里に出現、というニュースが増えている原因でもあるらしい。
限界集落が増えたり林業が衰えて(一般的なイメージとは逆に)、日本の森林やいわゆる「自然」はどんどん増加しているとも聞いたことがある。著者も言っているようにケモノも森林も取りすぎもよくないが、放置して自然のままというでも(人間にとっては)よくない結果を招く。ほどほどに干渉するのがよいのだろうが、なにごとも、ほどほどというのが一番難しい。
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