蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

いねむり先生

2013年05月08日 | 本の感想
いねむり先生(伊集院静 集英社)

著者の自伝的小説。
主人公のサブローは、二人目の妻を亡くして、酒浸りからアル中にまでなり、子供の頃からの持病(統合失調症?)が再発する。
人生を投げてしまったような状態からサブローを救ったのは、小説家の先生(色川武大がモデル)との(競輪の)旅打ちだった・・・という話。

サブローも先生も持病や文学作品を書くことに苦しみながらも、実に楽しそうに競輪の旅打ちに出かける。
旅先での思いがけない出会い(特に松山で漁師の民宿に泊まる場面)、勝っても負けても淡々とした姿勢、などが生き生きと描かれる。

当時の著者は、まさに無職無収入のプータローのアル中なのだが、色川武大、井上陽水を初めてとしてきらびやかな面々が著者の人柄や生き方に惚れ込んで、いろいろな形でなんとか著者を(どん底の環境から)救いだそうとする。
魅力がある人物、生まれつきのオーラがある人物(本作とは関係ないが、二人目の奥さんが夏目雅子さんで、三人目が篠ひろ子さんというのも、下世話ながらその証左ですよね)というのは、本当に世の中にいるものなのですなあ。比べるのも愚かなことながら、羨ましい限りです。
コメント
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