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蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

星の子(小説・映画)

2021年08月01日 | 本の感想
星の子(小説・映画)(今村夏子 朝日新聞出版)

林ちひろ(芦田愛菜)の両親は新興宗教の熱心な信者。ちひろの姉はそんな両親に反発し家出して帰ってこない。親戚の家族はちひろだを両親から離れさせようとするが、ちひろは多少の疑問を抱きつつも、両親とともにくらしている・・・という話。

原作を読むと、「これを映画化するのはかなり難しいのでは?」と思わせる内容だったが、原作の雰囲気をうまく再現していて感心した。

ちひろはメンクイで、二枚目の数学教師(岡田将生)に惚れている。ある時、その教師に車で送ってもらったことが構内でウワサになってしまい、この教師がホームルームでちひろを叱りつける場面がクライマックス。この後、ちひろを静かに慰めるなべちゃん(新音)となべちゃんの彼氏:新村(田村飛呂人)がとてもよかった。
このシーンに象徴されるように、本作は包摂をテーマにしている。机上にいつも新興宗教特製?の水のペットボトルを置いて信者であることを隠さないような人、あるいは、修学旅行費すら捻出できない両親から助け出そうとする親戚を拒絶するような人がいたら、いじめられたり排除されたりしそうだが、本作では周囲の人たちは、ちひろを否定したり遠ざけたりせず、さりげなくそばに居続けてくれる。

親が(世間的に公認されているとは言い難い)宗教にのめりこんでいる時に、何の疑問も抱かずに信者となる子も家出するほど反発する子も、実際にはあまりいないような気がする。ちひろのように、つかず離れずでつきあってやり過ごしていける子が大半で、それはそれで、まっとうな生き方のような気がする。


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