蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ヒトラー最期の12日間

2006年10月08日 | 映画の感想
ドイツで作られた映画のせいか、ドイツ軍、親衛隊部隊のユニフォームや手持ちの兵器(パンツァーファウストとか)がとてもよく出来ていてリアリティがありました。
ベルリンの地下要塞内ではヒトラーが生きている間は(絶望的状況にもかかわらず)それなりに統制がとれていましたが、ヒトラーの自殺後は一挙に秩序がなくなり指揮組織は崩壊していきます。
(現実がどうだったのかはわかりませんが)ヒトラーが、最後の最後(この映画のタイトルの「最期」という文字使いはおかしくないでしょうか?私の感覚では「最期」というのは本当に死ぬ間際のことを指すと思いますので、「最期」が12日間もあるのは違和感があります)まで第三帝国を一身で支えていたことが上手に表現されています。

ゲッペルズ(ナチの宣伝相)は、この映画でヒトラーに次ぐ主要人物として登場します。私が持っているイメージとは違ってヒトラーに極めて忠実でナチスに心酔していた人として描かれていて意外でした。

エンディングで主要登場人物の戦後の生涯が極く簡単に紹介されます。皆けっこう長生きしていて、最近まで生きていた人も何人かいます。戦後生まれにとっては、ヒトラーって全く時代が違う人、あるいは伝説上の人物といった感じがするのですが、ヒトラーと直接接触した人々が21世紀まで生きていたと知ると、実は、広い意味で同世代といってもいい人だったんだなあと、認識を改めました。

この映画では、ヒトラーやその周囲の人物にかなり同情的です。「こんな一面もあったんだよ」といいたいんだろうなあ、と感じさせます。ドイツでそういう映画が作られ、さほど批判も浴びていないというのは、「ヒトラー、ナチスは絶対的な悪」という見方が薄れてきているとも思えます。さきほど書いたこととウラハラに、その時代に生きていた人がほとんどいなくなった今、戦慄の記憶も忘れ去られようとしているのでしょうか。

考えてみればヒトラーがやったこととナポレオンがやったことは実によく似ています(ロシア人に致命傷を負わされたことも)。ナポレオンだって各地で多くの民間人を殺しています。それなのに、ナポレオンは今ではなんとなく英雄扱いです(日本だけかもしれませんが)。それはやはり時の隔たりによるものなのでしょうか。あと100年もしたらヒトラーの評価も、もしかしたら今とは随分違ったものになっているかもしれません。

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