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蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

エンド・オブ・ライフ

2021年04月17日 | 本の感想
エンド・オブ・ライフ(佐々涼子 集英社インターナショナル)

京都にある在宅医療の病院のスタッフとその患者の終末期におけるエピソードを記録したノンフィクション。
末期がんに冒された(京都の病院に勤務する)看護師の話がメインになっているが、むしろ印象深かったのは、著者自身の母親と、その母親を献身的に介護する父親の話。

健康マニアだった母親は皮肉にも1万人に一人クラスの難病にかかり、体が動かせなくなってしまう。母の料理を期待していつもまっすぐ帰宅するほど仲がよかった父親は、介護従事者が見学にくるほどの手際で完璧に母親の面倒を見続ける。

母親の熱が下がらず入院した時、その病院の看護師の手際が悪く、いつものように介護しようとすると「素人が手を出すな」と怒られる。
このエピソードのように、本書で強調されるのは、良質な医者、看護師との出会いが重要であること。著者が取材した病院のようなところにかかりたいものだと思うが、普通の人にとって医療の選別は困難だ。著者の母親が節制していても難病にかかってしまったりするように、そこも運でしかないのだろう。

自分が死ぬなんてこれっぽっちも思っていなかった若い頃に読んだとしたら、どうということもなかったかもしれないが、高齢者と呼ばれる時期が近づいてきた今、本書はとても感銘深かった。



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