蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

敗者たちの季節

2022年01月24日 | 本の感想
敗者たちの季節(あさのあつこ 角川文庫)

海藤高校のエース小城は、夏の地方予選の決勝で、宿敵の東祥学園高校のエース美濃原にサヨナラホーマーをあびて敗れる。しかし、東祥学園高の部員が不祥事を起こし甲子園出場を辞退。代わりに小城たちが出場することになる。両チームの関係者たちの思いを描く。

今はライオンズの球団幹部のナベQこと渡辺久信さん(元投手)は、高校野球の全国大会の県予選決勝で押出四球で敗れた。数日間放心状態だったが、気を取直して運転免許を取りに行き夏休み中に取れたそうだ。
そんな話を記者にできるのは、その後プロ野球で指折りの大投手になれたからだろう。思い起こしたくもない暗黒の記憶を払拭する多分唯一の方法はそれを笑い飛ばせるくらいの栄光の記録しかないが、並みの人間にはなかなかできないことだ。

高校野球は基本的にトーナメントばかりなので、全国優勝した1チーム以外、必ず敗者となるわけで、「敗者の季節」というタイトルは高校野球を一言で言い表わすのにピッタリの言葉の一つだろう。
いや、その他のスポーツやサラリーマン生活、あるいは人生そのものにおいても、多くの人は「敗者」となるわけで、負けた時にどう振る舞うのか、は誰にとっても重いテーマになるのだろう。

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