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蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

旅猫リポート(小説・映画)

2024年01月21日 | 競艇
旅猫リポート(小説(有川浩 講談社文庫)・映画)

何年も前に録画した映画を忘れていて、今頃になって見てみた。数年程度なんだけど、出演者が皆とても若く見えたし、竹内結子さんが主人公のおば役で登場したときは、はっとさせられた。

主人公のサトルはわけあって飼い猫のナナの新しい飼い主を探していた。ナナといっしょに昔の友人や知り合いを車で尋ねる旅を描いたロードノベル(ムービー)。

ナナが人語を解して一人語りする、と言う設定は「吾輩は〜」以来、使い古されたものだし、サトルがナナを手放そうとしている理由は、まあ、月並みだ。
それでも本作が魅力的なのは、猫が好きな人達の描き方がうまいから(だろうか??)。あるいは猫を飼ったことがない人でも、飼ってみたい、と思わせてくれそう、だからか。

いい人過ぎるサトルが最後の最後に、友人にある秘密を(ここでそれを言うか〜的なセリフなのだが)打ち明ける場面がよかった。いい人過ぎる人でもやはり、最後に本音を吐いてみたかったんだろうか・・・的な。(特に映画でのこのシーンがよかった。あ、あと映画ではナナの吹替(高畑充希)もよかった。映画を見てから原作を読んだので、小説を読んで
いると映画でのナナの声がそのままリピートされるようで心地よかった)

臨床の砦

2024年01月21日 | 本の感想
臨床の砦(夏川草介 小学館文庫)

内科医の敷島が勤務する長野県の信濃山病院はコロナ患者を受け入れていた。第3波の頃、大量の感染者が殺到する。周辺の病院はほとんど対応しておらず、しようともしない。信濃山病院は、無理矢理感染者用病床を拡大して対応しようとするが・・・という話。

著者の実体験に基づく小説で、概ね実話のようだ。このためストーリーの起伏はあまりないのだけれど、当時、感染の矢面に立たされた医療従事者の緊迫感や慨嘆がひしひしと伝わってくる。

主人公は勤務医で、いわばサラリーマンである。生命の危機に直面し、過労死レベルの勤務が続いても報酬が増えるわけでも、世間からの称賛を受けるわけでもない。それでもその仕事を続ける理由は何だろうか?
職業的使命感?
医学者としての興味?
同僚たちとの連帯感?
世間体?

それもあるけど、やはり、人間は慣れ親しんだ環境から自らの意思だけで離脱しようとはなかなか思わないからだろう。一言でいうと「それが仕事だから」ということじゃないかと思う。
(逆に「それが仕事だから」という理由で、恐ろしい行為に及んでしまう場合(例えば、ナチスの強制収容所の勤務者)もあるのだが・・・)