蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

最高のコーチは、教えない

2023年06月10日 | 本の感想

最高のコーチは、教えない(吉井理人 ディスカヴァー携書)

日本のいくつかの球団で先発とリリーフの両方で活躍し、メジャーにも行った著者は、引退後、日本ハム、ソフトバンク、ロッテで投手コーチを担当。ダルビッシュ、佐々木(朗)など著名な選手の育成で評価を得ている。

大学でコーチ業を修めたこともあり、本書は野球のコーチに限定せず、普通の会社の管理職なども意識した内容になっている。

 

吉井さんというと、私のような年寄りには、とにかく荒っぽい性格で自己中心の投手、というイメージが強かった(それなのに雷がマジ苦手というのが笑わせるのだが)ので、まさかこんな名コーチになるとは思わなかった。

一昨年までコーチをしていたロッテの投手の多くが、「こんなに話を聞いてくれるコーチはいなかった」などとコミュニケーションの質と量に感心しているのを記事などで読んで、現役の時との差(現役の時はコーチや監督が意に染まないようなことをすれば、その場で暴れ出したりした)には驚くばかり。現役時代のイメージだと、時代錯誤の鉄拳指導・・・なんて感じなのだが。

私は、ロッテの試合をよく見ているが、吉井さんがコーチ時代の投手起用にはよく驚かされた。「こんな所(勝負の分かれ目のような場面)でこんな投手(経験が少ない投手や前回登板がイマイチだった投手)を投入するか?!度胸ありすぎ」というシーンがよくあったからだ。

そんな時、吉井さんが記者などに起用の理由を聞かれて答えていたのが、「使わんと良くならんでしょ」といった感じのセリフ。

本書でもバレンタイン(元ロッテ監督)の言葉として「プレッシャーのかかった場面、勝敗に直結するような厳しい場面を経験してしないと、選手は成長しない」という言葉を紹介している。

素人目から見ると(実績がなくて)危なっかしそうな選手であっても、コーチとして起用するからには、確固たる見通しがあるのだろう。しかし、それ以上に、選手への信頼や成長への期待が込められた起用だったのかもしれない。

 

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