蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

俺たちは神じゃない

2023年06月02日 | 本の感想

俺たちは神じゃない(中山祐次郎 新潮文庫)

剣崎は都心の大病院に勤務する消化器系の外科医。手術の腕を買われて難手術に助っ人を頼まれたりする。腕利きの剣崎も一目置くのが同僚の松島で、2人は病院の近くのバーで夜ごと酒を飲み交わす仲だった・・・という話。

「泣くな研修医」シリーズは、主人公の素朴な感情(多分、それは著者自身の過去の心情に近いものではないかと思われる)の吐露が良かったのだが、本作の主人公は自分の能力に自信がありすぎて、やや傲慢な感じ。同僚や上司の医師の手術能力をこき下ろしているような場面が多い。

「泣くな研修医」シリーズと共通するのは、「ホントにこうだったら怖い」という場面がいくつもあること。

手術中に大出血を起こしてしまって飲み屋にいる同僚を呼び寄せて助けてもらう、とか、

(特に身寄りがない人の場合)手術を含む本格的な治療を行うか否かは、患者の年齢や経済状況を考慮して医師が一方的に決める(このエピソードがタイトルの由来)とか、

ロボット手術中にロボットの設定のちょっとしたミスで致命的な事故が起きる、とか・・・

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彼らが本気で編むときは、

2023年06月02日 | 本の感想

彼らが本気で編むときは、

リンコ(生田斗真)は、ゲイで、書店員のマキオ(桐谷健太)と同棲している。マキオの姉(ヒロミ:ミムラ)は育児放棄気味で、家出?しているときは姪のトモ(柿原りんか)を自宅で世話していた。トモには、やはりゲイ気味?のカイというゲーム友達がいたが、カイの母(小池栄子)は、トモがリンコと暮らしていることを知って、引き離そうとする・・・とい話。

タイトルから、編み物の超絶技巧を持つゲイの人がものすごい作品を作る話かと想像したが、全く違っていて、リンコたちの編物技術は十人並で、編むのは、もっとシンボリックなものだった。

「川っぺりムコリッタ」が良かったので、荻上監督の他作品も見てみようということで、本作と「めがね」を見てみた。「かもめ食堂」や「めがね」は、本当に何も起こらない環境ビデオみたいな内容で、それでも何だか見続けてしまうという魅力があった。本作や「川っぺり」はテーマがしっかりあってドラマ性も十分。

どちらかと言えば、私の好みは後者で、特に本作においてフォーカスされる親子間、パートナー間、友人間の人間関係のありがたさやもどかしさの描写は、優れたものだと思った。

リンコを全肯定する母親役の田中美佐子が特に良かった。

本作が公開されたのは、5年くらい前だが、現時点で見るとゲイの人に対する世間の姿勢にやや違和感(厳しすぎる)がある。逆にいうと、日本でもここ数年で理解がかなり進んだということなのかも?

というか、宗教の違いのせいか、日本って割合とこの分野では相対的には寛容な社会のような気もする。

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