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蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

16世紀「世界史」のはじまり

2022年04月15日 | 本の感想
16世紀「世界史」のはじまり(玉木俊明 文春新書)

筆者は、もともと16〜18世紀のバルト海貿易を専攻しているうち、近世ヨーロッパ最大の特徴は海運業が発展し、非ヨーロッパ世界に船で進出したことだと考えるようになったという。海上貿易ネットワークによるグローバル化が、当時最も貧しい文明世界であったヨーロッパを覇権国家群へと押し上げる要因になったと説く。

プロテスタントの台頭が、旧教側をしてキリスト教の海外布教に進出させた、というのは昔の歴史の教科書にも書かれていたが、

イエズス会のスポンサーがポルトガル王で、国王の指導のもとアジア貿易を推進したポルトガル商人たちの先兵役を果たした、

とか、イエズス会は武器製造や調達にも関わる死の商人的側面があった、

とか、相対的には貧困地域であったヨーロッパからアジア(特に中国)へ輸出できるモノはあまりなく、かわりに科学(地図、天文学や暦法)を「輸出」した、

などといった説は耳新しいものだった。

本書で盛んに強調されるのは、16世紀ころまで、中国やイスラム圏の方が経済的にも文化的にも豊かであってヨーロッパは貧困であった、ということ。
この点は、ヨーロッパ中心の「世界史」教育を受けていた私としては、感覚的にどうしても受け入れられない。
ギリシャやローマ以来、欧州=先進地域という図式が刷り込まれてしまっているせいだが、考えてみると古代や中世においても世界文明の中心地は中国やトルコだった期間が実際には長くて、欧州国家が覇権を握ったのは精々17世紀以降の200年くらいのものということになるのだろうか。