蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

抵抗都市

2020年07月23日 | 本の感想
抵抗都市(佐々木譲 集英社)

日露戦争に敗北し、ロシアに外交権と軍事権を握られた日本の東京で起きた殺人事件を捜査する警視庁の刑事の新堂と所轄のベテラン巡査:多和田を描く。

日露戦争に敗れた日本という設定が独創的。東京の皇居の近くにはロシアの統監府が置かれ、ロシアの公安組織が日本の警察並みの捜査活動をする。皇居の上空にはロシアの爆撃機が威嚇的に飛行して、東京の主な通りの通称名は「クロパトキン通り」「ロジェストヴェンスキー通り」となっている。
日本海海戦でほぼ全滅した海軍は事実上消滅。日本陸軍は日露戦争当時の14師団から7師団に軍縮させられ、さらに2個師団が第一次世界大戦の欧州戦線に派兵されている。

名目上は「二帝同盟」として同盟国扱いだが、事実上属国である状態に不満が膨らみ、欧州への追加派兵をめぐって大規模な抗議活動が予定されている。新堂たちが捜査する事件の被害者はロシアのスパイで反ロシア活動グループの重要な情報を把握していた、という筋立てなのだが、魅力的な設定のわりには、ストーリー展開が冗長でちょっと退屈。
その割に新堂たちが真相を見抜くプロセスが省かれていて、唐突に終わってしまった感があった(私の読み方が悪いだけでちゃんと伏線があったのかもしれないが・・・)。

ただ、本作はロシア支配下の日本を舞台にしたシリーズのプロローグのような感じもした。
設定自体がとてもよく出来ているし、新堂と多和田のキャラも立っているので、次がでれば読んでみたい
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする