蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

デボラ、眠っているのか?

2019年09月15日 | 本の感想
デボラ、眠っているのか?(森博嗣 講談社文庫タイガ)

Wシリーズ第4作。舞台はフランス。古い修道院で子供を産める一族とその修道院を支配?するコンピュータ(ベルベット)が発見され、ハギリとヴォッシュたちが調査に向かうが、デボラと名乗るトランスファ(電子生命体?)が出現し、ハギリと接触する・・・という話。

ハードSFっぽい展開になってきたけど、あまり小難し説明はなくて(というかなさすぎて)読者のイマジネーションに委ねられている感じ。

本作(というかシリーズの?)キモとなる(と私が感じた)部分を引用すると(174ページ)・・・

「僕がぞっとしてしまったのは、つまりは、生きるものの恐さ、死の恐さ、そして自分たちが本当に生きているのかどうか、という疑問がもたらす恐怖だった。
もしかして、既に反転しているのではないか、と気づいた。
デボラからバーチャルの世界について話を聞いたときにも感じたものだ。
そう、同じだ。
電子空間の中で、生きているものたちがいる。トランスファは、そこで勢力争いをしている。この穏やかな城の中心に据えられたコンピュータのベルベットも、そしてチベットのアミラも、そんな仮想世界を支えている装置であって、彼ら彼女らにとっては、そこがまさにアースなのだ。
むこうから見れば、僕たちの社会が夢の中なのかもしれない。
ここが反転している。
また、生命についても、ウォーカロンはいずれは人類に成り代わるだろう。それを止めることはできないように、僕には思える。
人工知能が、人類の知能をとっくに追い越しているのだから、既にあちら側が本流であって、僕たちは支流となり、先細りする種族といえる。人類が絶滅しても、あちらの社会は滅びない。人工知能とウォーカロンが支え合って、文明を持続し、発展していくだろう。もしかしたら、人間よりも上手くこの地球を守ることができるのではないか」

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風は青海を渡るのか?

2019年09月15日 | 本の感想
風は青海を渡るのか?(森博嗣 講談社文庫タイガ)

Wシリーズ第3作。チベット出張第2弾。

ハギリたちはナクチュの(この世界では珍しい人間の)子供たちのデータを収集するうち、ナクチュの近くに、昔ウォーカロン製造会社から脱走したウォーカロンたちが暮らす村があると知る・・・という話。

ハギリが人間とウォーカロンに差が生じる原因に気づくところが本作のクライマックスなのだが、研究者の発想をなぞるような感覚があって面白かった。斬新なアイディアを思いついて興奮するさまの描写は、本当にそういう体験をしている人でないと描けないようなリアリティがあった。
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