蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

爆撃聖徳太子

2017年02月13日 | 本の感想
爆撃聖徳太子(町井登志夫 PHP文芸文庫)

隋が中国を統一し、近隣の大帝国の出現に脅威を感じた聖徳太子は、臣下の小野妹子を琉球や高句麗に派遣し、自らも暗躍して倭国への攻撃を予防しようとする・・・という話。

1万円・5千円の肖像画はかつて聖徳太子だった、といっても最近の若者にはピンとこないと思うものの、私たちの世代にとって太子の肖像は「ありがたいもの」として意識下に完璧に刷り込まれてしまっていて、おそらく死ぬまで消えないだろう(たとえ認知症になってもあの肖像だけは記憶に残存するように思える)。

そうした太子のイメージを崩壊させかけたのが山岸涼子さんの「日出処の天子」で、太子がエスパーだというのは昔からありがちな設定としても、宿敵であるはずの太子と蝦夷が相思相愛?というのがなんともぶっ飛んでいた。

「日出処の天子」は、遣隋使を派遣するところで終わったが、本書の主要部分はその後日談的な内容。ただし、太子が熱気球に乗って隋軍を爆撃する、などという類のエピソードが頻出するので、歴史ものというよりはSFというのがふさわしく、それもかなりハチャメチャ系という中身になっている。

また、小野妹子が活躍するシーンが圧倒的に多く、太子は添え物みたいな扱いで、太子の能力などのタネも明かされないのがイマイチだったし、蘇我一族がほとんど話にからまないのも残念かな、と思った。

そんな本書ではあるけれど、当時の先進地域である中国・朝鮮の国々と日本のかかわりが濃密(隋に追いやられて北九州に難民?が殺到したとか、倭国の支配層の多くが帰化人系だとか・・・どこまでホントかは??だとしてもありそうな話だと思った)だったんだろうな、と気づかされた点は読んでよかったところだった。
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