蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ブリッジオブスパイ

2016年08月13日 | 映画の感想
ブリッジオブスパイ

冷戦期のアメリカで、ソ連のスパイをしていたアベル(マーク・ライランス)は、米当局に拘束され裁判にかけられる。
民主的な国であることをアピールしたい当局は、腕利きの弁護士ドノヴァン(トム・ハンクス)を弁護人に指定する。
ドノヴァンは、アベルと接触するうち、その人格を尊敬するようになり、弁護に全力を尽くして死刑を回避する。
やがてソ連との間に捕虜交換の合意が成立し、アベルをソ連側に引き渡すことになるが、公的な交渉を避けたい当局は、またもやドノヴァンを手続きの交渉人にする・・・という話。

スピルバーグ監督、コーエン兄弟脚本という、豪勢な組み合わせの作品。
コーエン兄弟脚本というと、アクの強そうなストーリーになりそうなのだが、割合とノーマル?な展開で、誰でも安心して見られるような仕上がりになっている。
そうかといってエンタメ的要素が多いわけでもなく、シンドラーやリンカーンの方の流れをくむシリアスな内容であった。(どっちつかずの中途半端ともいえるかもしれないが)

本作で出色なのは、マーク・ライランス演じるアベルで、見かけは何ともさえないおじさんだし、演技らしい演技もしないのだが、剛毅で真摯な人柄(というか、敵までも魅了してしまうほどのスパイとしての実力?)がオーラのように滲み出ていて、何ともよかった。
ドノヴァンは、死刑になりそうな状況になっても全く動揺しないアベルに「不安じゃないのか?」と尋ねる。
これに対してアベルは「役に立つかね?」(Is it help?と言ったのかな?)と応える。
同じようなやりとりが前半と終盤に2回あるのだが、この場面が特に気に入った。

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鯨分限

2016年08月13日 | 本の感想
鯨分限(伊東潤 光文社)

江戸時代に捕鯨で巨万の富を蓄えた紀州の太地家で、最後の捕鯨の棟梁となった太地覚悟の生涯を描く。

同じ著者の「巨鯨の海」は、同じく太地での捕鯨にまつわる短編集だが、これがとても良かった。それで本書にも期待したのだが、「巨鯨の海」に比べるとだいぶんと落ちる感じだった。

覚悟の青年時代のエピソード(江戸末期)と明治初期の海難事件「大脊見流れ」を描いた部分が互い違いに語られる。
後者の部分は魅力的なのだが、前者の部分がいただけない。
物語上必要性が薄いと思われる高杉や竜馬を登場させるのもあざとい感じがした。
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