蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

連城三紀彦レジェンド

2015年04月05日 | 本の感想
連城三紀彦レジェンド(連城三紀彦 講談社文庫)

綾辻、伊坂、小野不由美、米澤という錚々たるメンバーが選んだ傑作集。

誰が選んだのかも明示されていて、それぞれの嗜好が反映された選択になっているような気がするのも趣きがあった。特に伊坂さんが「眼の中の現場」を選んでいるのがいかにも、という感じがした。

私としては「花衣の客」が一番よかった。普通な恋愛小説だとおもっていたら、あっさりとだまされた。もっともミステリ仕立てとかどんでん返しがなくても異形の恋愛を描いた傑作といえる。

ミステリとしては「桔梗の宿」が一番だったかな。

だまされまい、と思って読んでいても、両足ともすくわれるようにひっくり返されるテクニックは、筋立て、筆力ともすごいの一言。晩年、介護のため(と聞いた)作品数が少なくなってしまったのがとにかく悔やまれる。
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毎月新聞

2015年04月05日 | 本の感想
毎月新聞(佐藤雅彦 中公文庫)

毎日新聞に連載されたエッセイ集。
新聞連載は2003年頃なので多少古びた感じの話題もあるが、平凡な話題を新しい着眼点で語る内容で、面白い。

「新しい心配」→コンサートで(自分のではなくて)観客の誰かの携帯が鳴ったりしないかという心配が新たに加わったという話。(さすがに今では“新しい”とは言えないが)うん、うん、そうだようねとうなずいてしまった。

「モードが違う」→人はモード(立場)が違えば行動も全く変わる、という話。この主旨自体はどうということもないのだが、アートディレクターがプライベートで家族写真を撮ろうとすると、日頃の仕事モードが表にでてしまった構図などが気になってしかたなくなる、という例え話がいい。

「文字が出す騒音」→グリーン車に乗ると妙に落ち着くのはなぜか?それは広告がないからだ、うるささというのは音だけに限らない、という話。なるほど、と思ってしまった。

「文化の芋粥状態」→自分が好きなものも大量に与えられ義務まで付いてくるといやになってしまう、という話。学校に行きたくない、というのは義務感の影響というのに、うなずけた。

「真夏の葬儀」→郷里の年上の幼なじみは網元の長男だった。その人が若くして他界し、海辺の町の葬儀に出る。霊柩車が出発しようとする時に港で一斉に汽笛が鳴るシーンがなんとも印象的。美しい短編小説のようだった。

「6月37日」→壊れている、ということから生まれるデザイン、という課題に対して学生がだした作品。他の例も面白い。
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清須会議

2015年04月05日 | 映画の感想
清須会議

超豪華キャスティングと三谷監督ということで期待値が高すぎたのか、世間の評判はイマイチのようです。
そういう先入観を持って見始めたのですが、私にとっては、とても面白く良くできた映画だと思いました。

テレビの歴史モノにありがちな、ナレーターが筋の説明をしたり人物名をテロップで紹介したりということがなく、合戦やアクションシーンも皆無なので、歴史に興味がない人には退屈に感じられたのかもしれないのですが、

柴田勝家の天然ぶり、
丹羽長秀の苦悩、
お市の方の執念、
もしかしてやっぱりこんな人だったのかもの織田信雄、
ハマリまくりの秀吉&官兵衛、

いずれもあまり背景を知らなくても十分楽しめるのではないかと思えました。
(池田恒興だけは、イマイチでしたが・・・)

役所さん(勝家)の演技がうまいのは、まあいつものこととして(こんなトボけた役でもホントにうまいよなあ)、大泉さん(秀吉)もすごくよかったです。
表ヅラや行動は明朗活発なのに頭の中は陰謀でドロドロ、という難しい役回りを上手にこなしていたように見えました。(10~20年くらい前までは、秀吉こそ日本史上最高に人気のあるヒーローだったのに、最近はどうもこんな感じで悪役系に描かれることが多いですね)

一方で、自分勝手な妄想ですが、勝家→大泉さん、秀吉→役所さんという(見た目・イメージと真逆の)キャスティングでも面白かったのではないかと思えました。
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