蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

鳩の撃退法

2015年04月13日 | 本の感想
鳩の撃退法(佐藤正午 小学館)

直木賞受賞歴もあるが出版社とのトラブルなどで今はデリヘル嬢の送迎車の運転手をしながらヒモ的生活をしている主人公が偽札騒動に巻き込まれる話と、妻が郵便局員と浮気して妊娠したことを知った夫の話が並行して進む。

二つの話にあまりつながりがなく、現実なのか主人公が書いている小説の話なのかも判然としないメタ的構成もあって、正直言って少々読みにくい。

じっくりメモでもとりながら腰を据えて付き合えば、一読では読み取れない著者のたくらみがたくさん仕込まれているのだろうけど、上下巻で1000ページ近いボリュームがあるので、なかなかそこまで熟読しようという気になれなかった。それにこれだけの大部にしては、最後のオチはかなり拍子抜けだった。下巻の真ん中あたりで、女性の欠端さんが登場したところで、おおっ、ここからどんでん返しか?と期待したのになあ・・・

著者の作品の主人公は、ハードボイルド的な几帳面さで生活しているのに、世間での行動は常軌を逸している、という人が多いと思う。本書でいうと妻に浮気されるバーの経営者なんかがそれに当たる。しかし本書の主人公は作家で、この人は日常からそうでない時まで一貫して常軌を逸していて、物語上のキャラとして厚みがないかな、と思えた。

余談だが、本書の大筋は「ダンスホール」に良く似ている。というか「ダンスホール」が本書の習作になっているような気もした。
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チョコレート・ドーナツ

2015年04月13日 | 映画の感想
チョコレート・ドーナツ

ゲイバーでショーダンサーをしているルディ(男性)は、歌手を夢見ている。ルディの隣室にはダウン症の子供(マルコ)とその母親が暮らしていたが、母親はマルコの面倒を見ようとしない。
見かねたルディは恋人(男性)のポールと協力して、マルコを保護しようとする。しかし、同性愛に対する無理解から(時代は70年代末の設定)、行政は保護を認めようとしない。ポールは弁護士資格を生かして訴訟に持ち込もうとするが・・・という話。

ルディ役のアラン・カミングは舞台俳優としても有名な人らしく、歌も踊りも普通の演技(やや大げさな感じはあるが・・・)も申し分ない。

実話に基づいたストーリーだそうで、それだけに筋としてはベタなお涙ちょうだいなのだけど、決して破られそうにない偏見の厚いカベに挑むルディが、何ともカッコいい。
残念ながらバットエンディングなのだけど(むしろそれ故に)ラストでルディが歌うシーンは素直に感動できる。
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