蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

福島第一原発事故 7つの謎

2015年03月12日 | 本の感想
福島第一原発事故 7つの謎(NHKスペシャル取材班 講談社現代新書)

その日私は会社にいて、勤務する会社の業務に地震で支障が生じたので、ずっと会社にいた。
福島原発に対する懸念はその日の夕方から一般にも報じられていた。大学時代にゼミでスリーマイル島の事故賠償関係の勉強をしたので、原子炉について生噛りのわずかな知識があった私は、緊急停止に成功した以上たいしたことはあるまいとタカをくくっていた。

翌日の午後、会社の会議室で打ち合わせ中もテレビはつけっぱなしで、その画面に1号機の水素爆発の場面が(ほぼリアルタイムで)映し出された時、テレビの解説者が明らかにうろたえたことと、会議室の誰かが「これ、まずいんじゃない?」と言ったきり会議室がシーンとなったことを、今もおぼえている。

当時の報道では、3・4号機のプールの冷却がクローズアップされていたように思う。自衛隊のヘリや消防車両による放水が派手に報じられていたイメージがある(本書によるとそれらの行為はほとんど意味がなく、むしろそれによって電源の普及工事が遅れて事態を悪化させたらしい)。

1・3・4号機は水素爆発をして建屋がメチャクチャの見かけになっていしまったので、上記のように注目を集めていたのだが、本書によると、当時現場で最も懸念されていたのは2号機だったらしい。
2号機は(外部電源がなくても動く)冷却装置で最も長く冷却されていたにもかかわらず、その冷却装置が不調となった後、消防車等からの注水のために容器内の圧力を下げるためのSR弁が開かず、破滅的な影響がでる格納容器の破壊が懸念されたらしい。
そして試行錯誤の末にやっと弁が開いたと思われたのに(後からわかったことだが)その時点では消防車が燃料切れになってしまっていたらしい(確か吉田所長は、この燃料切れを非常に悔やんでいたと、他の本で読んだような気がする)。
このあたりの本書の描写は迫力満点で、小説を読んでいるような気分で、結果がわかっていてもハラハラしながら読み進んだ。

福島原発の事故の原因等を論じた本をいくつか読んだが、(出版時期が直近ということもあって)本書が最もわかりやすく(いまだ不明な点の推測もふくめて)妥当性の高い内容であったと思う。

コメント
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