蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

アメリカン・スナイパー

2015年03月04日 | 映画の感想
アメリカン・スナイパー

クリス・カイルはイラクでの戦闘に志願し、狙撃兵になります。
4度の派遣で、のべ1000日間イラクに滞在して、最前線で戦闘し、軍が確認しただけで160人を狙撃することに成功します。実話に基づくストーリー。

アメリカの人がこの映画をみたら、たいていは「オレもクリス・カイルのようになりたい」と考えるだろうなあ、と思えました。

決して戦争を一方的に賛美しているわけでもない(クリスが最初に射殺するのは自爆攻撃をしようとした女性と子供だったりする)し、クリスのようなタフガイでさえ精神的な後遺症や戦場中毒(戦地にいた方が落ち着く)的症状に悩まされる場面が何度も登場します。

しかし、本作中のクリスはとにかくカッコいい。仲間を救うために進んで危険を引受け、PTSD気味であってもお酒やクスリに溺れたりしません(少なくともそういう場面は出てきません)。
そして米本土で帰還兵のためのボランティア活動?の最終に殺されてしまいます。
その悲劇的な最期まで含めて(というのは語弊がありますが)、まさにヒーローと呼ばれるにふさわしい姿に描写されていると思いました。

クリスや戦争自体の明暗両面を描きながらも、それらに対して微妙にアファーマティブな傾きを感じさせることで、見た人の多くが「彼こそ英雄」と感じられるようにし、それによって反対派も含めて世論を刺激し、多くの動員を実現する、凄腕でプラグマティックな監督のそういう計算が透けているなあ、というのはうがった見方というものでしょうか。

この映画が、実話に基づくものでなく、アメリカとかイラクとか実在の国も登場しない純粋なフィクションとかファンタジーであったとしたら、もっと素直に感動できたでしょうし、アメリカで賛否両論が沸き起こることもなかったでしょう。
しかし、ここまでの興行成績をあげることも、またなかったでしょう。

・・・でも、面白い映画でした。久しぶりにエンディングまで前のめり気味に集中して見続けることができました。
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