life goes on slowly

或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「宇宙の戦士」(著:ロバート・A・ハインライン/訳:矢野 徹)

2012-09-04 22:57:50 | 【書物】1点集中型
 ハインラインといえば「夏の扉」が気になっていて、(例によって)まだ読んでないんだけど、先にこっちに手をつけてしまった。というのも、何を読んでたときだったか忘れたけど、確か巻末の広告を見て興味を持ったような……

 しかし、いざ読んでみると「あれ?」って感じ。確かにSFだし、序盤の戦闘シーンはあれはあれでSFらしいとは思うんだけど、読み進めていくにしたがって、どうもこの作品にとってSFという手法は必然のものではない気がしてきたのである。なので、私の好きなSFとはちょっと違った。
 だから実は、本文より「訳者後記」以降の方が印象に残った。石川喬司氏の解説(……とはどこにも書いてないけど、内容的には解説という認識でいる)に出てきた、ある読者の意見にあった分類から引かせてもらうと、本作がSFのタイプB「SFの形を借りて、人間のあり方を追求し、文明論などを展開しようとするもの」だというのはわかる。で、私が好きなSFもタイプBに多いと思ってるんだけど、なのになぜ本作に違和感を覚えたかというと、同じタイプBでも私が好きなのは「SFでしか成立しない」タイプBだからなんだろう。

 というのも、この作品を読み終えての印象が、SFよりも「軍隊もの」としての方が強かったから。軍隊における上下関係のあり方だったり、仲間意識の描写だったり、あるいは軍隊を媒介にした父と子のちょっとしたドラマだったり、「そういうものなのかも」とちょっと共感(……というのも語弊があるかもしれないけど。軍隊経験者でもないわけだし)するところはなくはない。でも、これを語るならSFじゃなくてもいいんじゃないかなーとは感じたのである。
 ただもしかすると、現実にあった時代に即していない「架空の世界」で、ファンタジーとして描くことによって、パトリオティズムもそれほど押しつけがましくならないのかもしれない。実際、そんなにくどくどしい感じではなかったので(笑)。そういう点で、SFであることの意味はあるのかもしれない。

 とは言え、戦争を知らない世代である自分にとっては、前時代的に感じる部分はもちろんあるわけだけど……それも日本が、「国を愛する」ということを、国民自身が大きな声で表現する国ではなくなっている(大声で言えばいいってもんでもないとは思うけども)から、余計なのかな。だから、アメリカ人らしい作品だなぁという印象も受けた。
 ここに出てくる軍人たちの姿のすべてを肯定はしないけど、すべて否定するものでもない。近代の(作中の時代設定がどうあれ)軍隊という組織について、国内ものは多少読んで知るところはあれど、よく考えると外国のことって全然知らなかったなーと思ったので、そこをちょっと見せてもらったような気もする。そんな感じ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿